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2011.02.17

「幕末めだか組」第5巻 祭りの後に残ったもの

 幕末のごく短い期間、神戸に存在した海軍操錬所に集った若者たちの青春群像「幕末めだか組」もこの第五巻で惜しくも完結であります。

 水戸脱藩浪士による将軍暗殺の企てを、めだか組の仲間たちとともに辛くも防いだ隼人。
 その功が評価されてか、はたまた勝海舟のいつもの悪戯心か…隼人は、海軍操錬所の学生長に指名されます。

 しかし、隼人の前途は多難などというものではありません。
 ただでさえ問題児だらけの癸組、めだか組と一段低く見られているところに、長州藩士たちは薩摩出身の隼人に反発し、そして同胞であるはずの薩摩藩士たちもまた、隼人に敵意に満ちた目を向けてくるのですから――

 ここでついに語られるのは、これまで幾度となく作中でその名が挙げられてきた「鴨池丸事件」の内容。
 隼人の背負った十字架であるその事件の真相はここでは触れませんが、なるほど、同じ薩摩人から、いや薩摩人であるからこそ、彼が敵視されるのもうなづけないことではありません。

 隼人が物語冒頭から見せていた海への、船への執着にも似た熱意と、過ぎるほどの明るさは、この事件あってのことだったわけですが――
 しかし、隼人が学生長となったのをきっかけに、その重みがこれまで以上に彼を押しつぶそうとしていたのもまた事実。

 そこから彼を救ったのが、友の叱咤激励…というのはパターンではありますが、しかし、夢を失った――いや、そもそも持っていなかった元新選組隊士の慎三郎だった、というのはやはり熱い。

 物語はこの後にまた一山ありますが、しかし、ある意味この場面が、本作の最大最後の山場である…というのは言い過ぎでしょうか?


 そして最終話、時は流れて明治初年――
 とうの昔に海軍操錬所は解体され、そこで夢を追った生徒たちも皆、それぞれの道を歩む中、戊辰戦争の戦場で、隼人と慎三郎は対峙することとなります。

 実は本作の最初の場面こそが、まさにこの場面から、そこから遡る形で物語が語られていったのですが、それでは最初に戻ったその後に何が語られるのか?
 隼人は薩摩、慎三郎は新政府軍――一度は脱走した彼が、土方の下で戦うこととなった、その事情は語られないのですが、何ともドラマを感じさせてくれます――と、敵同士となった彼らの運命の先に待つものは…

 それも詳しくは読んでのお楽しみではありますが、青春時代という祭りが終わった後に残るものの中に、確かに希望があった、という結末は、まことに本作らしい、美しいものであったとだけは言えます。


 残念ながら、終盤の展開はいささか駆け足ではありましたが、しかし、その慌ただしさもまた、幕末という時代を生きた彼らに似つかわしいというのは、甘すぎる見方でしょうか。

 見たい場面はまだまだありましたが――せめて、海軍操錬所解体の瞬間の彼らの姿は見たかった!――しかし、幕末を舞台とした学園青春ものという希有の物語として、本作が心に残る作品となったことは、間違いありません。

「幕末めだか組」(神宮寺一&遠藤明範 講談社KCデラックス) Amazon
幕末めだか組(5) (KCデラックス)


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