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2011.02.21

「まぼろし恋奇譚」 再び踊る娘心の奇譚集

 密かに幕府転覆を目論む白鳥城主。彼に仕える白鳥衆のくノ一・栞は、その計画を馬鹿馬鹿しいと思いつつ日々を送っていた。そんな彼女の前に現れたドジな薬売り・流。互いに一目で惹かれあった二人だが…(「白鳥忍法外伝」)

 非常にユニークな時代幻想漫画集であったかまたきみこの「妖かし恋奇譚」の続編ともいうべき「まぼろし恋奇譚」が刊行されました。

 「妖かし恋奇譚」は、収録作のモチーフとなっているのが、何と全てバレエの演目という趣向で、大いに驚きつつ楽しませていただいたのですが、本書も収録作の半分以上がやはりバレエの演目。

 「白鳥の湖」「カルメン」「くるみ割り人形」…どれも有名な作品ばかりですが(まあ「カルメン」はオペラの印象がやはり強いですが)、原典にとらわれず、自由な視点から時にコミカルに、時に切なく描かれていく物語は健在です。
 実は今回の収録作のうち、江戸時代を舞台とした作品は「白鳥忍法外伝」と「お江戸恋舞踊」の二編のみ、それも後者は普通の(?)時代ものなので、間違ったファン的にはちょっと残念なのですが、しかしこの「白鳥忍法外伝」はなかなか楽しい作品なのです。

 おそらくは江戸時代の中頃以降、幕府転覆を目論む藩主の下で働くくノ一・栞と、藩を訪れた旅の薬売り・流の姿を描く本作。

 掟に縛られ、恋する男に名乗ることも許されない(でもやることはやるんですが)くノ一と、軟弱ながら彼女を愛することには誰にも負けない薬売りの愛は、ただでさえややこしいことになりそうなのですが…
 ここで二人の関係を知った栞の上司が、その想いを確かめるために仕掛けたお節介が思わぬ方向に転がり、城内に移った舞台は、とんだクライマックスの乱闘に繋がっていきます。

 この辺り、一歩間違えるといかにも忍者ものらしい(?)悲劇に終わりそうなのですが、しかしドタバタコメディの果てに最後はハッピーに終わるのは、これはもう作者の持ち味と言うべきでしょう。
(ちなみに人物関係とか展開とか、味わい的にはバレエというより歌舞伎的かもしれません)

 あとがきで作者自身が連呼しているように、確かにぬるいといえばそうなのですが、しかし一歩間違えると途端に色々な意味で重くなってしまいかねない物語をカラッと描いてくれるのは、このいい塩梅の温度があるからこそ。
(その一方で、ヨーロッパを舞台にしたグッとシリアスな「DOLL」「レースの約束」の二編も、これはこれで良いのですが…)


 そしてそれがあるからこそ――これは「妖かし恋奇譚」から変わりませんが――時代も境遇も様々ながら、自分の想いにひたむきに生きることでは共通するヒロインたちの姿が印象に残るのでしょう。


 そう思いつつも、次回はやっぱりもう少しホラー色を強くして欲しいなあというのは、これは特殊ファンのわがままですが…

「まぼろし恋奇譚」(かまたきみこ ぶんか社コミックス) Amazon
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