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2011.03.02

「快傑ライオン丸」第18話 「怪人ムイオドロ 恵山の叫び!」

 魔物のために魚が獲れなくなった漁村で、獅子丸は少年が村人にリンチされる場に出くわす。その少年・糸市は、両親を失い、恵山の魔物・ムイオドロに育てられたという。ムイオドロに挑むも、毒煙に倒れる獅子丸。一方、村から逃げた糸市を追う小助は、孤児同士心を通わせるが、糸市の心は変わらない。小助が糸市からもらった薬草で復活した獅子丸は二度目の対決でムイオドロを破るが、糸市は何処かへ姿を消すのだった。

 なかなか良エピソードが続く北海道ロケ編も三回目、今回も、いかにもピープロらしいひねりの利いた佳作であります。

 今回中心となるのは、何と恵山の魔物・ムイオドロに育てられた少年・糸市。
 戦乱で父を失い、母は疫病となったため恵山に追い出され――天涯孤独となった彼を育てたのが、ムイオドロだったという設定であります。

 敵方の怪人と、サブキャラクターが心を通わせるというのは、特撮ものにはしばしば見られるシチュエーションであり、悲劇に終わることも多いのですが、しかし本作のそれは重さが段違い。

 周囲の人々から見捨てられ、優しくしてくれたのは魔物のみであった糸市。生きるために盗みを覚え、それがために――そして魔物に育てられたために――村人から差別され、殺されかける糸市…
 彼の姿は、戦国時代を舞台とした本作だからこそ描けるものでしょう。
(掛け値無しで糸市を殺すためにリンチする村人の洒落にならない描写が恐ろしい)

 そしてその糸市を育てたムイオドロも、一風変わったゴースン怪人です。

 デボノバからライオン丸抹殺の命令を受けるも、ゴースンからに与えられた役目はムイ(後述)を増やして漁師たちを海から追い払うことだときっぱり無視。
 獅子丸の方から襲いかかって来たのを撃退した時も、デボノバに対し、後はお好きにどうぞと止めを刺さずに去っていくのですから…


 さて、獅子丸は、こうした糸市の事情はほとんど知らず、ただリンチされている彼を、そして不漁に苦しむ村人たちを救うためにムイオドロに挑むこととなります。
 彼の行動はヒーローとしてはもちろん正しいのですが、しかし糸市(とムイオドロ)の側から見れば、彼らの生活を破壊する者であることもまた真実でしょう。

 そして糸市は、孤児という点では自分と同じ境遇の小助に心を開くのですが…おそらくは彼の精一杯の好意であろう、ムイオドロの毒煙の特効薬となる薬草が、結局はそのムイオドロを討つ獅子丸を救うことになるのがまた切ない。
(そして糸市の薬草の効果を疑おうとしない小助がまた泣かせます)

 今回は、相対主義に陥らない程度に、こうした割り切れない、やりきれない状況を描いてみせた回であり、この辺りの物語設計とバランス感覚には大いに感心いたしました。

 そしてついにゴースンからの命が下り、ライオン丸を討つために現れるムイオドロ。
 糸市が見つめる中で繰り広げられた戦いは、糸市が割って入る(ここでライオン丸に斬り飛ばされたムイオドロの義手を、糸市が拾って襲いかかるというシチュエーションもまた見事)も、ライオン丸の勝利に終わるのですが――

 糸市、糸市と何度も叫んだ末に爆発するムイオドロ。そして糸市は、小助たちに背を向け、何処かへ走り去ってしまいます。
 せめて、彼が自分の槍を置いていったことが、救いと信じたいのですが…


 ちなみにムイオドロ、シチュエーションがよくわからなかったのですが、調べてみたらムイとはオオバンヒザラガイ(コチョウガイ)のことのようですね。
 舞台となった恵山には、ムイ岬という地名もあるそうですから間違いないでしょう。

 ということはムイオドロはオオバンヒザラガイの怪人? たぶん、これまでもこれからも唯一無二のモチーフだな、これは…


今回のゴースン怪人
ムイオドロ

 恵山に棲み、糸市少年を育てた怪人。三つ叉に分かれた槍と、左手の二つに分かれた義手が武器。義手は取り外し可能で、下から毒煙の発射口が出てくる。
 ムイを増やして漁師を海から追い払おうとしていたが、ゴースンの命でライオン丸と対決。一度は毒煙で勝つも、二度目は効かずに敗れた。


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コメント

恐らく、快傑で一、二位を争う欝な回。糸市は、あの後どうなってしまったんでしょう... なぜかゴースン怪人て、人間的なヤツが時々出てくる。沙織がいつもと違い、
ムイオドロの毒にやられた獅子丸を助ける大活躍なのに、重いストーリーにかくれてしまったのが、沙織ファンとしては、少し残念。...もっともムイオドロが後はお好きにどうぞと、ひきあげデボノバもなぜか姿を消すラッキーもありましたが(笑)

投稿: エージェント・スイス | 2011.03.04 23:22

エージェント・スイス様:
いやー風雲ライオン丸並みに鬱い話でしたね。
ゴースン怪人は、妖怪じみた連中も多いのに、妙に人間的なところが魅力でしょう。
というか獅子丸を助けたのは小助のような(笑)

投稿: 三田主水 | 2011.03.07 00:44

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