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2011.03.24

「週刊新マンガ日本史」 第19号「斎藤道三」&第21号「服部半蔵」

 昨年10月の刊行開始以来、快調に巻を重ねて折り返し地点も近づいてきた「週刊新マンガ日本史」。
 毎回毎回、漫画好きを驚かせるような作家をチョイスしてくるこのシリーズですが、今回取り上げる二作は、時代漫画ファンであればお馴染みの作家による注目作であります。

 まずは第19号「斎藤道三 下克上の男」、担当するのは伊藤勢。
 最近は夢枕獏原作の漫画の作画が多いですが、時代漫画ファンとしては、「斬魔剣伝」「羅喉伝」で決して忘れられないクリエーターでしょう。

 さて、その伊藤勢描く斎藤道三は、西村勘九郎、長井新九郎、斎藤利政、そして道三と、次々と名前を変え、下克上を体現していったまさに野望の男、といったところ。

 父・西村新左衛門の死を一顧だにせず(ちなみに本書では、油売りをしていたのは新左衛門という近年の定説を採用)、戦場で手柄を挙げ、父の恩人である長井長弘をはじめとする人々を謀殺し、のし上がる…

 冷静に考えれば教育にまことによろしくない、しかしこの時代というものを考える際にまことにふさわしい人物の姿を、ほとんど絵物語ともいうべきタッチで、作者は見事に描きあげています。

 特に、死を間際にした新左衛門が莞爾として勘九郎に国盗りを託す見開きページ、新九郎が長井長弘を謀殺して際の啖呵など、子供向けの学習漫画とは思えぬ迫力で、我々が読んでも十分に楽しめる作品であります。

 ちなみにほんのわずか顔を見せる織田信長がまたもの凄いイケメンで…


 さてもう一冊、第21号「服部半蔵 忍びを束ねた「鬼」」は、「軒猿」の藪口黒子が担当。
 「軒猿」が、単なる上下関係を越えた熱い絆を持つ主君と忍びの姿を描いていたことを考えれば、これはなかなかうまい人選でしょう。

 さて、そんな本作は、しかし、(本人は)忍びではない服部半蔵像を活写。
 主君たる家康の期待に応え、「陰」ばたらきではなく「槍」ばたらきで名を挙げるため、手段は選ばぬ戦いぶりで鬼の名を背負った半蔵の姿が描かれていくのですが――

 しかし、クライマックスに描かれるのが、彼が伊賀の服部として最も活躍したといえる家康の伊賀越えではなく、彼が介錯役を務めた徳川信康の切腹というのが、なかなかにうまい。

 主君の命に応え、いかなる働きも辞さなかった「鬼」が、唯一「鬼」となりきれなかった姿は、多分にウェットではありますが、忍者の総帥というこれまでの一般的イメージに対する人間・半蔵の姿を描いて、印象に残るのです。


 今回のシリーズは、前回漏れた人物から、「好きな日本史人物」に関する読者アンケートに応えた人選のようですが、それだけに――歴史に大きな影響を与えなくとも――魅力的な人物が多く揃っている印象。

 今後も「真田幸村」「柳生宗矩」「天草四郎」と、時代ものファン的に気になる人物がいるだけに、漫画家のチョイス、そしてもちろん本編の内容が楽しみなシリーズです。

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コメント

おばんです!
本当に三田さまが仰るとおりで、
伊藤さんが描く道三のド迫力に圧倒され、
半蔵+藪口さんの組み合わせは拍手ものでした。

そしてこのシリーズ、
「新」になって自分が購入する回数が確実に増えました。
一般的な子供向けの図書と少し違って、
人気がありながら若干マイナーな人物を取り上げている点、
人間の負の部分を誤魔化さずに描いている点など、
個人的には前シリーズよりも読み応えがあるように感じられます。
今後1~2ヶ月の刊行が特に楽しみですね!

投稿: まるひげ | 2011.03.25 23:56

まるひげ様:
こんばんは。前回のシリーズもそうですが、今回も題材と作者の組み合わせがピンポイントでこちらの胸を射抜きますね。

僕は子供のころ、まんが日本史を読んで歴史を好きになりましたが、このシリーズで歴史好きになる子供が出ることに期待しています。…そして僕らのような人間になってもらうと(笑)

投稿: 三田主水 | 2011.03.31 00:38

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