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2011.03.29

「もののけ草紙」第4巻

 「夢幻紳士 逢魔篇」のスピンオフ…とも女芸人「手の目」を主人公とした…とも言えなくなってきた幻想ホラー連作「もののけ草紙」の第四巻であります。

 不思議な力を持つ少女芸人「手の目」の活躍を描くシリーズとしてスタートした本作ですが、手の目は美しい女性に成長し、弟子の少女・小兎が登場。
 そして舞台は終戦直後、焼け野原となった日本に移るのですが…

 掲載元が今回からWebコミックに変わり心機一転ということでしょうか、この巻では手の目は姿を消し、小兎が独り立ちして怪異に相対することになります。

 そして本書における怪異の中心に存在するのが、非存在街(ありえないまち)。

 作中の小兎の言葉を借りれば
「戦争であんまり大砲やら爆弾やらをぼかすかやったから あの世とこの世の境に破れ目が出来ちまって そこからバケモノどもがぞろぞろやって来ちまった そいつらが寄り集まって住んでるのが“非存在街”さ」
ということなのですが――

 本書では、大半のエピソードで、この非存在街とそこに集う住人たちの姿が描かれることとなります。

 その住人の姿は、一言で言えば、クトゥルー神話に登場する怪物たちのような、奇怪な触手まみれの異形の姿。
 なるほど、次元の向こう側からやってきたものというシチュエーションは、確かにクトゥルー神話的なものであり、これまでも様々な作品、様々なアプローチで、かの神話世界を描いてきた作者らしい趣向であると言えるかもしれません。

 しかし、本作における非存在街とその住人は、おぞましくも、しかし一種の救いとして描かれ、機能しているのが興味深い。
 非存在街にいるのは、向こう側の存在のみではありません。そこには、この世に居られなくなった人々もまた暮らしているのです。

 空襲で命を失った子供たち、生きるために異形のものに身を売った女たち、戦場で異形のものたちと出会った男たち――
 そんな人々にとって、唯一の安住の地は非存在街であり、それゆえ、非存在街の住人と出会った小兎もまた、彼らをむしろ見守る立場となるのです。

 本書の巻末に収録されたエピソードは、非存在街を舞台としたものではありませんが、しかし、そんな本書の異界観をよく表したものでしょう。
 「犬神家の一族」+「ダニッチの怪」ともいうべき本作においては、作者自身が述べているように、「ダニッチ」的怪物が登場するものの、しかしその作中での位置づけは、原典のそれとはむしろ逆転した、一種の哀しみすら感じさせられるのですから…


 趣向を変え舞台を変え、主人公すら変わり…次々とその容貌を変えていく本作が、果たしてどこに向かうのか。
 それを知るのが楽しみなような、恐ろしいような気持ちがします。


 ちなみに、これは蛇足中の蛇足ですが、廃墟に跳梁する怪というモチーフは、今この時読むにはいささか刺激的に過ぎるように、個人的には感じられました…

「もののけ草紙」第4巻(高橋葉介 ぶんか社) Amazon
もののけ草紙 4

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