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2011.04.08

「カミヨミ」第13巻

 風雲急を告げる、という段階を過ぎ、この国の命運を決める戦いがついに始まった「カミヨミ」。
 最新の第13巻では、遂に日月の神剣が激突する一方、太古編後章とも言うべき、壮絶な過去からの因縁の正体が描かれることとなります。

 将門公の怨念は昇華されたものの、将門公の封印は未だ残り、闇に覆われたままの帝都。
 日輪・草薙ノ剣を手にした天馬と、完全に月輪・草薙ノ剣に支配された菊理――かつては愛し合った二人は、この闇の帝都を舞台に、直接刃を交えることとなります。
 そしてそれと期を同じくして帝都近海にまで接近したロシア艦隊が砲撃を開始。さらに、零武隊の中に思わぬ存在が…

 と、テンションの高い展開が続く第13巻。将門の首編のラストからそのまま新章に雪崩れ込んだだけに、最初からトップギアという印象であります。

 しかし圧巻は、この巻の後半で語られる、太古の因縁の物語でありましょう。
 これまでに、天馬の意識が目撃したという形で、日月の神剣の由来と、初代カミヨミの誕生を巡る悲劇は語られました。
 しかしここで、描かれるのは、その後の物語、初代カミヨミの巫女とその夫、そして天目一箇の者を巡る物語――そしてそれを語るのは、これまで天馬を鍛え、見守ってきた鞍馬魔王寺の飛天坊と、あのオカマッポこと警視総監・八俣八雲!

 かの源義経との面識をうかがわせる、あたかも本物の天狗のような飛天坊。物語の冒頭から登場し、オカマ口調で天馬に迫るというコメディリリーフでありながらも、時折意味深な描写のあった八俣…
 この二人が背負ってきたものの意味が、ここでようやく語られることとなります。


 その内容をここで語ってしまっては野暮の極み、読んでのお楽しみですが、しかし強く印象に残ったのは、人間の強い意志の存在であります。

 これまで、様々な怪異や妖魔の存在を描いてきた本作でありますが、一貫してきたのは、どれだけ超自然的現象が描かれようとも、その根底には人間の意志が存在する、ということでしょう。
 これは、簡単に言ってしまえば、どれほど超自然の怪異が猛威を振るおうとも、その背後で糸を引いているのは人間の悪意である、ということにほかならず、その絵解きが、本作の最大の魅力と言っても過言ではありません。

 しかし今回描かれたのは、それとは逆の方向性の意志――たとえ人の身を持てなくとも、あるいは人の身を捨ててまでも、人を愛し、そして己の愛する者を護らんとする善き意志の存在であります。

 人の意志が悪しき怪異を引き起こすことがあるのと同様、人の意志は善き奇蹟を引き起こすこともできる…
 それは、神剣に日月両刀があることと対比すべきことかもしれませんが、それ以上に、いよいよ絶望的な状況となっていく物語において、何よりの希望ではないでしょうか。


 しかし神器は帝都を離れ、まだまだ闇は帝都を覆います。
 果たして希望の光はいつ射すのか。そして今度こそ太古からの因縁を断つことはできるのか――早く結末を見たいような、結末を迎えるのが勿体ないような、そんな気持ちであります。


 にしても昔からおいしいところを一人占めだった八俣ですが、今回は特においしすぎる役どころ。
 少年時代の台詞に爆笑させられたと思えば、突然男前の台詞を吐いたりと、本当に良いキャラであります。

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