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2011.04.12

「サムライ・ラガッツィ 戦国少年西方見聞録」第2巻

 かの天正遣欧少年使節には、もう一人の日本人少年(と忍び)が同行していた!? という趣向の「サムライ・ラガッツィ 戦国少年西方見聞録」第2巻が発売されました。
 第1巻後半で澳門に到着した一行ですが、この巻で描かれるのは、その澳門で彼らを襲う苦難の連続と新しい出会いであります。

 大名家の跡取りとして生まれながら、戦いよりも学問を好み、この世の全てを見届けるため、雑役として使節団の船に潜り込んだ少年・播磨晴信が本作の主人公。
 彼を暗殺するために雇われながらも、晴信に興味を覚えて彼に雇われることとなった伝説の忍び・朧夜叉の桃十郎をお供に、晴信が様々な冒険を繰り広げていく――というのが本作の基本設定です。

 さて、この第2巻の冒頭に描かれるのは、帆桁に死体が吊され、火を付けられた南蛮船と明船の姿。
 三百人からなる船員全てを皆殺しにした姿なき暗殺者は、次のターゲットを晴信――というより使節団全員に定め、次々と罠を仕掛けて彼らを脅かします。

 しかし、闇働きをする者は、晴信の傍らにもいます。
 かくて、この巻の前半を使って描かれるのは、桃十郎と姿なき暗殺者の死闘に次ぐ死闘なのですが――これが実にいい。

 命を賭けた戦いに、いいというのも失礼な話ですが、師匠譲りの大胆なパースを交えて描かれるアクションシーンは豪快かつ繊細の一言、互いに戦闘マシーンとも言うべき両者が秘術を尽くして戦う姿には、むしろ賞賛の言葉しかないのです。

 そしてその戦いの中で、桃十郎の心にしこりとなって残る、己の眼前で炎に消えた信長への執着が語られていくという構成もまたうまい。
 考えてみれば第1巻の時点では、彼のキャラクターはさまで切り込まれていなかったわけですが、一種同類とも言える相手との戦いの中で、彼の心中が浮き彫りになっていく構造は巧みの一言です。

 そしてドラマはそれだけに終わりません。
「自分の前で死人は出さない」ことを己の行動原理とする晴信もまた、彼なりの能力を生かして、戦いを終わらせようとする姿も印象的ですが、その晴信の言葉から、鈍刀と化していた桃十郎の刀が文字通り火を噴くクライマックスの流れは、感動的ですらあります。

 戦闘マシーンだった男が、他者とのふれ合いの中で少しずつ変わり、人としての心を見せていく…というのは定番中の定番ではありますが、しかし本作の主従、いや相棒の関係の中で桃十郎が見せた変化は、今はごくわずかでも、それだけに心に残るものでした。


 しかしここまでで本書はまだ半分。後半に登場するのは、あのマテオ・リッチ――後に中国大陸に渡り、中国での布教の道を開いたことで知られるイエズス会の聖職者であります。
 史実を当たってみれば、なるほど彼はこの時期に澳門を訪れているわけで、その史実とのリンクの巧みさにまず感心するわけですが、しかし本作の面白い部分はそこに留まりません。

 本作に登場するリッチは、見た目も喋りも軽いながらも、一種天才肌の青年であり――それでいて、冷静かつシビアに現実を分析するところもあるのも面白い――さらに、晴信の「眼」に並ぶ特殊能力を持つという設定。
 さらに晴信に桃十郎があるがごとく、リッチの傍らにも忠実な仮面の護衛者、西洋剣士
エステベスがいるという対比の妙も心憎いのです。

 この、晴信にとってはライバルにも、先輩にも師にもなり得るリッチの本領が発揮されるのはまだ少し先かもしれませんが、しかしその前哨戦とも言うべき中国将棋勝負が、アクションバトルと同じ文法で描かれるのにはただただ感心するばかりです。


 …と、最初からほめっぱなしというのも恐縮ですが、しかしそれだけのものを本作が持っているのは掛け値のないところ。

 第1巻の時点では小さな火だったものが、ここに来て大きく燃え上がった、いや爆発したという印象すらあります。
 まだまだ澳門での冒険は続くようですが(史実でも一行はかなりの長期間澳門に滞在)この先の冒険もまた、大いに期待していきたいところであります。

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