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2011.04.26

「妖かし斬り」「百鬼斬り」 帰ってきた四十郎化け物始末

 主家に暇を出され、病身の妻と暮らす月村四十郎。からすにつきまとわれているため「からす四十郎」の異名を持つ彼は、生活のため、用心棒仲間も嫌がる化け物退治を引き受ける。次々持ち込まれる事件に挑む四十郎が見たのは、その背後の人の心の闇だった――

 角川文庫で刊行されてきた「妻は、くノ一」シリーズが残り一巻で完結となった風野真知雄ですが、その完結前に新たなシリーズをスタートさせるという戦略でしょうか、三ヶ月連続で刊行されることとなったのが、この「四十郎化け物始末」シリーズであります。

 剣の腕は立つものの、色々な意味で冴えない中年男の四十郎が、生活のために嫌々化け物退治を引き受けては意外な真相に出会うというこのシリーズは、実は五年ほど前にベスト時代文庫で展開されていたもの。
 「妖かし斬り」「百鬼斬り」の二作が刊行されて止まっていた本シリーズ、このたび復活に合わせて第三作の書き下ろし新作「幻魔斬り」が刊行されるということで、ファンにとっては実に嬉しいお話であります。

 実は先の二作とも既にこのブログで取り上げているのすが――個別の内容についてはこちらこちらをご覧いただければ――今回の角川文庫版は、ベスト時代文庫版に加筆修正が施されているとのことで、ここに改めて取り上げさせていただく次第であります。

 さて、その加筆修正の方ですが、基本的な構成・ストーリー展開に手を加えたというわけではなく、(特に「妖かし斬り」の方での)ディテールの追加・修正といった印象です。
 そのため、以前の版を持っている方が買い直すほどかと言えば、微妙なところではありますが、しかし、その微妙な差違に作者の想いが垣間見られるのもまた事実。
 たとえば、「四十郎は恐怖よりも、奇妙な切なさを覚えた。しかも感動と勘違いでもしたかのように、不思議な涙までともなっていた。」という文章が、「四十郎は恐怖よりも、奇妙な切なさを覚えた。しかもきれいな景色でもみたときのような、不思議な涙までともなっていた。」と修正されている部分など、いかにも今の作者らしい目配りと言えると感じるのです。

 また再読して少々面白く感じたのは、本作の内容・描写が、現在の作者の作品に比べるといささか生々しく感じられることで――
 現在の作者の作品でも、もちろん男女間のことなどは題材となりますが、もう少し書き方は枯れているように感じられるところ、なかなか興味深く感じた次第です。

 その辺りも含めて、それなりの間を置いた続編である第三弾がどのような作品となっているのか――やはり気になるところではありませんか。


 …と、この文章を書いている最中に「幻魔斬り」を手に入れたのですが、そのあとがきの内容を見たら、冒頭に記しましたシリーズ展開に関する私の予想が大ハズレでひっくり返りました。が、これはこれで面白いのでそのまま残しておくことといたします。

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妖かし斬り   四十郎化け物始末1   (角川文庫)百鬼斬り 四十郎化け物始末2 (角川文庫)


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