« 「杖術師夢幻帳」 | トップページ | 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱」 »

2011.05.07

「Dr.モードリッド」

 西部開拓に湧く19世紀末アメリカ。しかしその陰では、常識では測れない奇怪な事件が相次いでいた。全米でも一、二を争う知識を持ちながらも、異端の主張により学会を追われた考古学者モルダート・モードリッドは、その知識と機械製の義手を武器に怪事件に挑む。

 壮大な伝奇SF「犬神」、一種の(?)ラブコメ「ガールフレンド」の原作、そして最近では「幕末狂想曲RYOMA」、そして鞍馬天狗の正体は○○○だった! という最新作「鞍馬天狗」まで、多種多様な作品を発表している外薗昌也がかつて発表した、アメリカ西武を舞台とした異色の伝奇アクションであります。

 近代文明を携えて英国人が入植し、新天地を切り開いた西部開拓時代。その、新しき時代と古き時代の境にある19世紀末に次々起きる怪事件に、異端の考古学者、Dr.モードリッドが挑む連作短編集であります。

 異端の学説で学会を追われた考古学者
が、奇怪な事件に挑む――しかもビジュアル的には肩まである黒髪――と来ると、これはどうしても稗田礼二郎先生を想像してしまいますが、しかしモードリッドはむしろかなりの肉体派。
 文字通り奥の手である第三の手、様々な武器が仕込まれた機械製の義手で、超自然の(もしくは人間による)脅威を粉砕していく姿は、舞台背景もあって、むしろ「ミキストリ」に近いものを感じる…などという人間は私ぐらいかと思いますが。

 それはさておき、そんなモードリッドの活躍を描いた本作は全6話8回構成。

 人間が純金へと変化する地の謎に挑む「ゴールド」
 狂信的な牧師が支配する町に出現した天使の正体を描く「天使病」
 地の底に封じられていた吸血美女との対決「リリス」
 毎夜鉄道の線路に出現する怪物の意外な正体「疾走する屍」
 自殺志願の男を救ったために思わぬ敵と対峙する「夢使い」
 ゴーストタウンと化した町での怪物との攻防戦「見えない」

 と、いずれも好きな人間にはたまらない題材・物語となっています。

 殊に、天使を見た町の子供たちが本能的に感じた恐怖が、意外な敵の正体に繋がり、派手なモンスターホラーに昇華される「天使病」と、物語的にはちょっと強引ながら、冒頭に描かれる鉄道と併走するティラノザウルスのイメージが強烈な「疾走する屍」などは、題材とビジュアルのパワーが相まって、ユニークかつ魅力的な伝奇活劇として成立しています。


 …しかしながら、全体を通してみれば、中途半端な印象が否めないのが事実。
 上で近いジャンルの作品を上げましたが、それらに比して考古学・民俗学に切り込んだわけでもなく、アクション活劇に徹したわけでもなく――

 厳しいことを言えば、読んでいるこちらの胸に迫るものがさしてなく、一部の好事家向けの作品で終わっているというのが正直なところでしょう。

 日本の漫画ではまず間違いなく希有な開拓時代のアメリカを舞台とした伝奇ものだけに、実に勿体ないという印象を強く持つとともに、今の作者の手になればどのように描かれるか、気になりもするのですが…

「Dr.モードリッド」(外薗昌也 幻冬舎バーズコミックススペシャル) Amazon
Dr.モードリッド (バーズコミックススペシャル)

|

« 「杖術師夢幻帳」 | トップページ | 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/51608648

この記事へのトラックバック一覧です: 「Dr.モードリッド」:

« 「杖術師夢幻帳」 | トップページ | 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱」 »