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2011.05.27

「柴錬立川文庫 真田幸村」(その二)

 文春文庫の柴錬立川文庫は猿飛佐助もの第二弾「真田幸村」収録作品紹介、その二は「木村重成」「真田十勇士」「風魔鬼太郎」の三作品を紹介いたします。

「木村重成」

 秀頼の御前で徳川の剣士・夢想只四郎と試合うこととなった木村重成。試合をお膳立てした幸村の真意は、そして只四郎の正体は?

 真田幸村、岩見重太郎、後藤又兵衛と、大坂の陣で名を挙げた大坂方の武将がこれまで登場してきましたが、次に登場したのは木村重成であります。
 幼い頃から側近として秀頼に仕え、長じて後の大坂の陣では、数に勝る徳川方に対して善戦。夏の陣で討たれたものの、首実検の際、頭髪に香が薫き込めてあったことで、家康を感嘆させたことは有名なエピソードであり、いかにも柴錬好みの人物であります。

 …が、本作ではむしろ重成は脇役。幸村の計らいで、大坂城中で夢想只四郎なる剣士と決闘することとなったものの、重成に剣術の心得はなく、本人を含めた周囲もこの決闘の意味を掴みかねることとなります。

 実は幸村の狙いは、重成の相手となる夢想只四郎。ある重要な秘密(これが佐助と皮肉な関係を持つのが面白いのですが)を知る只四郎に対するための、いわば餌として重成は使われることとなります。

 果たして重成が只四郎にいかにして挑むのか、その顛末も肩すかしで(というか、このオチは家康が激怒しても不思議ではありません)、ちょっとシリーズでも残念な部類に入る作品ではないかと思います。


「真田十勇士」

 ついに幸村の下に揃った十勇士。折しも徳川との決戦が迫り、幸村は九度山を脱出して大坂城に入る。果たして大坂夏の陣の行方は。

 幸村、佐助とくれば真田十勇士――というわけでついに本作で真田十勇士が勢揃いするのですが、その面子はちょっと風変わり。
 佐助・才蔵・清海に加え、高野小天狗・筧十蔵・呉羽自然坊・為三・穴山小助・由利鎌之助、そして真田大助…ほとんどが今回初登場な気もしますが、ここに集結した十勇士を率い、幸村はいよいよ大坂の陣に臨むこととなります。

 九度山を脱し、六文銭騎馬隊を率いて颯爽と大坂城入りする幸村。いよいよ彼の頭脳が十全に生かされるべき時!
 …ではあるのですが、そうそううまくいかないのは、残念ながら歴史が示す通り。
 合戦における必勝の献策を退けられ、幸村に残るは十勇士によるゲリラ戦のみ――

 作戦に当たる十勇士の行動が、実にらしくて楽しいのですが、今回は文字通りの緒戦といったところでありましょう。


「風魔鬼太郎」

 石田三成に毒殺された蒲生氏郷の遺児は、忍びに預けられ、長じて風魔鬼太郎を名乗る。鬼太郎は幸村に対しある復讐を告げるが。

 風魔といえば、北条氏に仕えた忍者集団として知られますが、本作においては、相州乱波である点は共通であるものの、その特定の主に仕えない忍びとして描かれます。

 そしてその頭目・風魔鬼太郎が本作の主人公。その才を恐れた石田三成に毒殺された蒲生氏郷の遺児の一人が、風魔の忍び・来太郎に育てられて風魔の名を名乗るに至った彼は、長じて後、意外な復讐を企てます。

 実は、氏郷に直接手を下したのは三成ながら、それを黙認したのは秀吉。秀吉は、氏郷の美しい妻を密かに狙っていたのであります(このシリーズ、秀吉が他所の女性と通じて…というネタも多いのです)。
 それに対して氏郷の妻は、自らが秀吉に抱かれる様を子に見せ、その無念を復讐の原動力とさせようとするのですが…

 そして秀吉亡き後に鬼太郎が企てた復讐は、その体験を裏返しにしたような、奇怪なもの。
 ある意味非常に大衆小説的な内容ではありますが、その結末における幸村の行動が、柴錬作品としての味わいを醸し出していると言えるでしょうか。
(ちなみに私、一時期本作と「淀君」とを混同して覚えておりました…)


 次回に続きます。

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