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2011.05.02

「胡蝶の失くし物 僕僕先生」

 相変わらずきままな旅を続ける僕僕先生と王弁一行。しかし彼らを、暗殺者集団「胡蝶」の使い手・劉欣が狙う。だが、育ての母の病を僕僕が治したことで劉欣は両親への情と、胡蝶からの命令の板挟みにあうことに。果たして僕僕との出会いは、劉欣に何をもたらすのか!?

 つい先日、シリーズ最新作「先生の隠しごと」が刊行されたばかりの「僕僕先生」シリーズの第三弾、(見かけは)美少女仙人・僕僕と脳天気な青年・王弁の師弟コンビに、今回は思わぬ刺客が迫ることとなります。

 その刺客とは、大唐国の暗部を司るような暗殺者集団「胡蝶」の一員。皇帝をはじめ、国の意向を受けて、唐国のためにならぬ者を人知れず暗殺していく恐るべき集団であります。
 何故そんな連中に二人が狙われることとなったのか、それはまだ想像するしかありませんが、しかし王弁君はともかく、僕僕が標的というのは、如何に人間相手には無敵の暗殺者でも相手が悪い。
 かくて、凄腕で知られた胡蝶の暗殺者・劉欣は、標的である僕僕に、唯一の泣き所である育ての親を人質に取られ(!)、いつしか僕僕一行と行動を共にすることを余儀なくさせられてしまうのですが――


 本作は、前作同様、連作短編集の形式で、僕僕と王弁が各地で出会う事件を描くスタイルではありますが、それと平行して、影の主役として描かれるのが、この劉欣であります。
 常人よりも遙かに長い手足に、ほとんど感情を見せない骸骨のような風貌と、あまりお近づきになりたくないタイプのキャラクターではありますが、しかし、そこで終わらないのが本シリーズの本シリーズたる――そして作者の作者たるゆえん。

 生みの親を知らず、子供の頃から大百足を友に、世間の裏街道をひたすら歩んできた彼にとって、唯一の拠り所である胡蝶からの任務と、彼に唯一愛を注いでくれた育ての親の存在と――
 その二つの板挟みとなった劉欣の姿を、本作ではシリアスにシビアに、しかしどこまでも優しく見つめ、描き出します。

 そう、彼が僕僕たちと出会ったことで何を失い、何を得たのか…本作に収録された物語を通じて描かれるのは、まさにその点でありますが、それが描かれるのは、劉欣だけではありません。
 前作で登場し、僕僕と王弁の旅に同行することとなった――いわば劉欣の先輩である――薄妃もまた、本作の中で失ったもの、得たものが描かれることになります。


 と、キャラクターが増えたことでずいぶん賑やかになり、そして物語に幅が出てきた本作、本シリーズではありますが、しかし個人的には本作には不満があります。

 それは、増えてきたキャラクターたち――特に本作においては劉欣――にスポットが当たることにより、王弁君の存在感が薄れてしまったことであります。

 王弁君が活躍するということは、ニアリーイコール先生とイチャコラすることであって、弁爆発しろ! と言いたくもなってしまうのですが、それが言えないのはやはり寂しい…
 というのは半分冗談、半分本音ではありますが、(半分)人外組を前にすると、凡人たる王弁君が不利であることは否めません。

 しかし大仙人の弟子たる王弁君が、あくまでも凡人である点にこそ意味と価値がある…そう信じている私にとっては、残念に映るのです。


 シリーズ作がキャラクターものの側面を強めていくのは、よくあることであり、ある意味無理もないお話ではありますが、しかし本シリーズがそれで終わってしまうのはあまりにもったいない。
 どうやら第四弾は王弁君が中心の物語のようですので、そちらに期待することといたしましょう。

「胡蝶の失くし物 僕僕先生」(仁木英之 新潮社) Amazon
胡蝶の失くし物―僕僕先生


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