「為朝二十八騎」第2巻 本当の物語は…
佐野絵里子が悲劇の英雄・源為朝の若き日の姿を描いた「為朝二十八騎」の第2巻にして、まことに残念ながら最終巻であります。
太宰府に仕え、その武勇を思う存分に振るっていた為朝。
しかし彼に恨みを持つ平元盛とその叔父・武盛の奸計により、為朝は逆賊の汚名を着せられてしまいます。
さらに、為朝が太宰府に釈明のために出向いた隙に屋敷は襲撃を受け、彼の乳兄弟であり無二の親友である須藤家季は行方不明に。
かくて、為朝は、小薙刀の左仲二と三朝礫の喜平次とともに、ただ三人で落ち延び、再起を期するのですが…
史実においては、その武勇にものを言わせ、「鎮西総追捕使」を自称して――ちなみに本作でもこの名は出てくるのですが、一ひねりされた扱いなのが面白い――暴れ回り、九州を掠領したという為朝。
朝廷の権威もものとはせず、父・為義が解官されたことでようやく矛を収めて上洛したその姿は、既にその実力を見せ始めていた地方武士の典型と言えるかもしれませんが、しかし、やはり傍若無人な、暴力の香りがつきまといます。
一方、本作の為朝は、その史実を踏まえつつも、規格外れの五体に宿った力を持てあまし、周囲の悪意に苦しめられつつも、持ち前の明るさとまっすぐさで戦う好漢として描かれているのが特徴。
その人物造形は、作者の絵柄とも相まって、これまでに描かれた為朝像と比べて、素朴で明るく、微笑ましい英雄の姿を描き出していると言えるでしょう。
しかしながら、どうしても不満が残るのは、その為朝の活躍を描く物語と、彼以外のキャラクターに、魅力が乏しい点であります。
為朝が強く魅力的であればあるほど、彼と対立する存在もまた、その光に負けない、彼に互するほどの強さと魅力が必要となります。
しかるに、本作の敵役・平元盛たるや、いかにも御曹司らしい外見は、為朝との対比や、平家のイメージとも重なって悪くないのですが、しかしその性格が本当に単なるゲス野郎で、自分自身の実力に乏しいキャラクターであるのに、むしろ驚かされます。
もちろん、為朝を陽性の人物として描くために、必要なことではあるかもしれません。
しかし、あまりに極端に善悪分かれたキャラクターは物語の構造を単純にするばかり。単純な造形のキャラクターが生み出す物語もまた、善玉が苦労して悪玉をやっつけました、という単純なものでしかなく、残念ながら、食い足りなさばかりが残った…というのが正直なところであります。
物語は、為朝が元盛を倒し、兄たちの求めに応じて上洛を決意する場面で終わります。
タイトルとなっている「為朝二十八騎」が、この上洛の際に彼に付き随った28人の部下のことであることを思えば、本当の物語はこれからのはずなのですが…
実はその前史であった、という趣向も悪くないのですが、しかし、やはりその先を見せて欲しかった。その先が描かれれば、また印象が異なったのでは…と感じた次第であります。
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