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2011.06.20

「唐傘小風の幽霊事件帖」 お江戸にツンツン幽霊あらわる!?

 深川で流行らない寺子屋を開くへたれな青年・伸吉の前に、赤い唐傘を差し、肩に小さなカラスを乗せた無愛想な美少女・小風が現れた。実は彼女、かつてこの場所に住んでいた幽霊だという。小風とおかしな共同生活を送ることになった伸吉だが、周囲には幽霊や悪霊が出没し、大いに振り回されることに…

 「オサキ」「雷獣びりびり」と、デビュー以来、江戸を舞台とした人間と妖怪たちのコミカルな活劇を発表してきた高橋由太の新作は、何と幽霊とのラブコメ!?
 ということで、発売を心待ちにしていた本作「唐傘小風の幽霊事件帖」であります。

 本作の主人公は、亡くなった祖母から深川の寺子屋を受け継いだばかりの青年・伸吉。
 かろうじて師匠を務めてはいるものの、取り得といえば人が良いことくらいで、あとはへたれで根性無し…と、何とも冴えない伸吉は、人の借金を背負って、高利貸しの取り立て人に追われる毎日であります。

 そんな彼の前に現れたのは、何故か赤い唐傘を手にした巫女さん姿の美少女・小風。
 冴えない男の子のところに美少女が転がり込んで同居するというのは、落ちものの定番パターンではありますが、しかし小風は超ツン、はいいとして、実は幽霊――というわけで、それなりに平穏(?)であった伸吉の生活は、その日を境にてんやわんやの大騒ぎになってしまうのでありました。

 何しろ、現れる幽霊が小風のみであれば良いのですが、それ以来、伸吉の寺子屋に押しかけるのは、幽霊に妖怪がてんこ盛り。
 文字通り金の亡者の幼女幽霊・しぐれに、隙あらば伸吉を喰らおうという猫幽霊(でもかわいい)、虎和尚に狼和尚、そして何故か焼き討ちと鉄砲で有名な上総介さんまで…

 夜毎わらわらとこんなのが現れるのですから、へたれの伸吉にとってはたまったものではありません。
 が――実は、幽霊連中が寺子屋にたむろっている、本作ならではの理由が実に面白い。
 詳しくは読んでのお楽しみですが、確かに、幽霊ってある意味世間知らずだなあ…と、感心しつつも、この面子が一体どんな面をして来ているのかと、微笑ましくもちょっぴり切ない気分になりました。
(というか、上総介さんまで何で来てるの。この辺りも含めて、上総介さんは本作である意味一番おいしいキャラクターかもしれません)


 そんなわけで、恐ろしくもちょっとおかしい幽霊・妖怪が跋扈するキャラクターものとしては、上々の滑り出しの本作なのですが、しかし、個人的にはいささか食い足りなく感じる部分がありました。
 確かに個々のキャラクターは魅力的ですし、設定も面白い。しかし、それを動かす(それが動かす)ストーリーが今ひとつ…なのであります。

 確かに、読み進めていくとそれなりに一本の線に集約されていくのですが、どうにも個性的なキャラクターを動かしていくにはドライブ感が薄い。
 ストーリーでなくても良いのかもしれません。キャラクターの力に負けない、一本の強い筋が入っていれば…

 作品を楽しみつつもアレコレ言ってしまうというのもイヤな読者ではありますが、しかし本作にこれが備われば鬼に金棒、小風に唐傘――ということで請うご寛恕。

「唐傘小風の幽霊事件帖」(高橋由太 幻冬舎時代小説文庫) Amazon
唐傘小風の幽霊事件帖 (幻冬舎時代小説文庫)


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