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2011.06.19

舞台「魔界転生」 おいしいとこ取りの魔界転生

 島原の乱で討たれた天草四郎は、絶望の果て、この世への復讐のために復活した。四人の武芸者――荒木又右衛門・田宮坊太郎・宝蔵院胤舜・宮本武蔵を魔界転生させ、徳川頼宣を操って世に大乱を起こさんとする四郎。その野望を阻まんと立ち上がる柳生十兵衛。しかしもう一人、恐るべき人物が転生を…

 声優の関智一主催の劇団ヘロヘロQカムパニーの新作「魔界転生」を見て参りました。魔界転生と言えばあの魔界転生、山田風太郎の代表作であるあの魔界転生であります。

 これまで幾度となく映像化、漫画化、そして舞台化されつつも、しかしその度に様々なアレンジが施されている原作を、果たしてどのように料理したのか…それを楽しみにして行ったのですが、なるほど、こういう形か、と感心いたしました。

 登場する転生衆は四郎以外は五人、あらすじに挙げたメンバー+柳生宗矩という顔ぶれで、これは原作に近い、(如雲斎がまたオミットされたのを含めて))ほぼ定番と言って良いメンバー。
 その点ではあまり新味はないのですが、しかし面白いのは、今回の舞台版の展開が、原作を踏まえつつも、ところどころ、深作欣二の映画版のシチュエーションを取り入れつつ描かれる点であります。

 すなわち、転生衆が紀伊頼宣に接近し、その野望を煽ることにより天下を転覆せんとし、それに三人の娘が巻き込まれたことから、柳生十兵衛と柳生七人衆(原作では十人衆)が立ち上がり、丁々発止の駆け引きを繰り広げつつ、転生衆と対決していく点は、原作踏襲。
 一方、不死身の魔物と化した転生衆を討つため、十兵衛が妖刀村正(本作ではその息子の太刀を使い、十兵衛と宗矩の相克にオーバーラップさせるというアレンジはありますが)を手に戦うという点、そしてクライマックスに炎と化した江戸城で死闘が繰り広げられるという点は、これは深作版由来と言って良いでしょう。

 武蔵の暴走など、他のバージョンでは滅多に描かれない原作の展開を踏まえつつも、深作版を取り入れてみせるというのは、アンバランスに見えるかも知れません。
(ちなみに、あの原作の転生シーンを、かなり忠実なイメージで舞台版で描いて見せたのは感心!)
 これはそれだけ深作版の存在が大きいということかと考えさせられましたが、さらに実は数カ所、石川賢版のシチュエーションも含まれている部分もあり、まず原作・深作版・石川版と、この三つの存在がどれだけ大きいか、感心させられた次第です。


 …と、いきなりマニアックな観点で恐縮ですが、長大な原作を適度に刈り込み、深作版の要素を取り込んで舞台映えする派手な展開も用意するというおいしいとろ取りをしたおかげで、おそらくは初めて「魔界転生」に触れる方でも、原作のエッセンスに触れつつ、理屈抜きで楽しめる舞台になったのではないかと思います。

 出演者も、関智一の柳生十兵衛、浪川大輔の天草四郎を初めとする声優たちが、舞台上でも達者な演技を披露。
(又右衛門役の小西克幸も含めると、万次と秋月耀次郎と鬼眼の狂が一つの舞台に…とダメな興奮)

 アクションの方も、かなり頑張っており、舞台上のスクリーンへの投影を活かした空間造りも相まって、なかなかに迫力あるものとなっておりました。


 しかし本作の最ユニークな点は、添え物にされがちな紀州三人娘や柳生七人衆、さらに四郎配下のくノ一・ベアトリスお品らに、かなりスポットを当てた内容となっていたことでしょう。
 超人魔人が入り乱れ、派手な剣戟を繰り広げる本作において、ほとんど常人の彼らは活躍の場も限られ、登場も脇に限定されるのも、ある意味しかない話であります。

 しかしこの舞台版では、その彼らの、弱く儚い人間という存在ならではのドラマが――もちろん、かなり限られた出番ではありますが――用意され、それが良いアクセントとして、働いていたと思います。
 いかにも舞台らしいコミカルなシーンが、後になって泣かせに繋がってくる、その辺りの呼吸にはちょっと感心いたしました。


 尤も――残念ながら評価できる点ばかりではありません。転生するや、途端にド派手な衣装でヒャッハー化する転生衆の描写はギャグ寸前ではありますし、主に深作版の要素を入れたことがマイナスに作用して、場面転換などに無理が生じた部分も目立ちます。
 これはいつも(?)のことですが、四郎や宗矩の存在の前に、原作での最大の敵である武蔵が霞んでしまった点も…
(あとラストシーン、本当に犠牲大きすぎ! と突っ込みました)

 しかし、それでもなお、三時間以上という長丁場を飽きることなく楽しむことができましたし、何よりも原作のアレンジの形など、「魔界転生」ファンであれば、様々な意味で見るべきもののある作品であることは、間違いありません。


 客席は、劇団ファン(声優ファン)の若い層でほとんど占められていましたが、こうした方々が、この舞台をきっかけに、原作をはじめとする他の「魔界転生」にも興味を持ってくれたら最高なのですが…それはさすがに難しいかな。

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コメント

置鮎龍太郎さん、未完のOVAで演じていた天草四郎演じたかっただろうな~。

長沢美樹さんは関智さんと昔本当に付き合っていたそうで・・・リアル感ありました?

投稿: ジャラル | 2011.06.19 14:41

ジャラル様:
そうでした、置鮎さんは天草四郎を演じていたんでした。
役者のプライベートには興味ありませんが、それを舞台上で見せるような方々ではないでしょう

投稿: 三田主水 | 2011.06.20 23:47

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