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2011.07.26

「ICHI」第6巻 そして命の重みを

 先日、突然「イブニング」誌での連載が終了し、少々…いやかなり驚かされた「ICHI」。
 今回刊行された第6巻と、8月に刊行される書き下ろし入りの第7巻で完結とのことですので、何とか胸をなで下ろしたところです。

 その第6巻の前半で描かれるのは、第5巻から引き続いての、藤平十馬と斎藤一の珍道中…というにはあまりに剣呑な旅路であります。

 あの生麦事件の現場にたまたま居合わせたために、下手人と疑われた十馬と斎藤。
 かつて市と十馬に命を救われたヘボンの助けで、ひとまず疑いは晴れ、虎口を脱したように見えた二人ですが…

 どこの国にも執念深い者、己の面子に拘る者はいます。
 罠にはめられた二人は、英国軍から無数の銃口を向けられることとなるのでありました。

 さて、この二人のエピソードを通して描かれるものは、「命の重み」。
 戦国時代の次くらいに命が軽く扱われそうな(?)幕末という時代に、命の重みを語るというのも可笑しな話かもしれませんが、しかし命が簡単に奪われる時代だからこそ、わかる重みというものがある。

 かつて、それなりの理由があったとはいえ、初めて人を斬り、それが思わぬ悲劇を生んだ十馬。
 これもやむを得ない側面があったとはいえ、感情のままに人を斬り、その心の傷を引きずる斎藤。

 奪った命、奪われた命は戻らない。そんな当たり前の事実を受け容れることは、おそらく、我々が想像するよりも、遙かに困難なことなのでしょう。
 その当たり前のことをようやく己の中に受け容れた斎藤の想いは、こちらの目にも、実に心地良いものとして映ります。

 そして後半、ようやく主役は市に戻り…つつも、描かれるのは浪士隊結成前夜の若き浪士たちの姿。
 試衛館の面々が、伊庭が、そして清河が――いよいよ本格化する幕末の動乱に向けてぶつかり合う、その中に、市は立つこととなります。

 次巻最終巻では舞台は京都に移るとのことですが、その中で市が、十馬がどのような役割を果たすこととなるのか。
 物語としての落としどころもだんだん見えてきた感がありますが、さてその先に光の兆しがあることを信じて――


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ICHI(6) (イブニングKC)

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