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2011.07.17

「お六一座冥府開帳」 鉄火の姉御と江戸古典の怪異

 両国の見世物小屋で座長を務めるお六さんは、震いつきたくなるような美人で鉄火肌の姉御。しかし、その腕にある七ッ星の黒子は、闇の力に通じる者がもつものだという。それを裏付けるように、お六さんの周囲には、今日もおかしな連中や事件が…

 噂には聞いていたものの、なかなか手にする機会に恵まれなかった作品を、ようやく読むことができました。
 約四半世紀前(!)に「スーパーアクション」誌に連載された「お六一座冥府開帳」であります。

 舞台となる時代はおそらく江戸時代後期、場所は江戸両国――当時の最大の繁華街で見世物小屋の座長を務める主人公・お六さんが出会う事件の数々を描いた、ユニークな連作です。

 ある日、お六さんの小屋の用心棒のセンセーが釣ってきたどくろ。落語の「野ざらし」のような展開を期待してセンセーが酒をかけたら、このどくろ、本当に美女になってしまいます。
 しかしその美女の正体というのが、なんと平将門公の娘・滝夜叉姫。その彼女を狙い、幕府転覆を狙う風魔一族が動き出して、事態はややこしくなるばかり。
 さらに、滝夜叉姫の腕にある、闇の力を操る者の証という七ッ星の黒子がお六さんにもあったものだから、彼女は姫と間違えられて風魔に狙われる羽目に…

 というのが、第一話「忍夜骨曲者(しのぶよるこつはくせもの)」のあらすじ。
 表紙に記された「大江戸伝奇草紙」という謳い文句に違わぬ内容ですが、本書には伝奇ものだけでなく、怪談奇談あり、人情ものありと、実にバラエティに富んだ内容のエピソードが並びます。

 そして、本作の魅力は、このバラエティの豊かさだけではありません。
 第一話を見てもわかるように、本作は、歌舞伎や落語、読本等々、江戸の大衆文化に題材を求め、それを巧みにアレンジして、物語に取り込んでいるのです。
 世之介、四谷怪談、天狗小僧寅吉、木幡小平次…知らなくても楽しめるのはもちろんですが、知っていればなおさら楽しく、ニヤリとできる…そんな作品なのであります。
(お六さんやセンセーが四谷怪談そのままの事件に巻き込まれる「南北くずし 四谷怪談」など、おや? と思わせておいて、ラストでメタフィクショナルな恐怖の存在を暗示するところなど、実に心憎い)

 もちろん、バラエティの豊かさや、題材の存在は、一歩間違えると、話がとっちらかったり、未消化だったり…となりかねませんが、本作ではその心配はご無用。
 江戸の風物・文化を「わかっている」と思しき作者による巧みな題材の活かし方に、それを支える登場人物の存在感(特に、江戸弁の会話が実にいい)、不思議に味のある絵柄…
 これまで本作を読まずにいたことが悔やまれる作品なのであります。


 残念ながら、本作の続編やその系譜に連なる作品が描かれることはその後なく、作者自身も、この作品のみを残して姿を消してしまったような状況にあります。

 しかし、それでも、それだからこそ、同好の士にはぜひ読んでいただきたい…心より、そう感じる次第です。


 特に最終話、芝居小屋を舞台にして、思わぬ――しかし由来を考えれば大いに納得方法で襲いかかる敵に対して、お六さんたちが、これまた歌舞伎好きにはなるほど! という手段で反撃する場面など、実にいいんですけどねえ…

「お六一座冥府開帳」(みやわきようこ 双葉社アクションコミックス) Amazon

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コメント

スーパーアクションでは確か不定期連載だったんですよね。
最初は単発読みきりで、途中からお六さんの謎が中心になっていって。
めちゃ面白くて、単行本になるのを待ちかねて、出たときは速攻で買いました。
みやわきさんは、確かこの作品の後、二作ほど短編を発表されたという記憶があります。
(記憶違いかもしれませんけれど)

あまりに懐かしくて、ついコメントを(*^-^)
失礼仕りました。

投稿: 未来 | 2011.07.19 11:34

未来様:
ご無沙汰しております。連載時のことは全く存じ上げなかったのですが、最近人づてに作品のことを知り、ようやく手に入れてみれば、実に私好みの作品でした。
本当に面白い作品ですね…
この作者の方の単行本は、どうもこの一冊のようなのが残念なところです。

投稿: 三田主水 | 2011.07.23 01:22

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