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2011.07.03

「魔岩伝説」(ラジオドラマ) 荒山作品、他メディアに進出!

 江戸を騒がす、鈴木伝蔵を名乗る怪人、その正体は、朝鮮から来た美少女・春香だった。柳生卍兵衛の手から彼女を救った遠山景元は、彼女が朝鮮通信使を廃絶するために来日したことを知る。朝鮮通信使に秘められた巨大な秘密を知るため、春香とともに朝鮮に渡った景元が、死闘の末見たものは…

 放送終了からだいぶ経った今頃で恐縮ですが、ラジオドラマ「魔岩伝説」をようやく聴き終えることができました。
 NHKーFMの「青春アドベンチャー」枠で、全15回で放送されたものであります。

 言うまでもなく、原作は荒山徹の時代伝奇小説。
 徳川将軍の代替わり毎に朝鮮から派遣される朝鮮通信使――そういえば、ちょうど同じ作者の「朝鮮通信使今始まる」が刊行されたばかりですな――に秘められた謎を追って、若き日の遠山金四郎景元が朝鮮に渡り、冒険を繰り広げる、作者のデビュー第三作目であります。

 前二作が、趣向としては山風忍法帖的な秘術合戦のトーナメントバトル的な趣向が強かったのに対し、本作は、歴史の背後に秘められた秘密に、ヒーローが挑んでいくという、むしろ角田喜久雄的王道時代伝奇の味わいがある作品。
 内容的にも、怪獣が出てきたり、異常なパロディや色々と面倒なネタが出てくるわけでなく、ある意味無難なチョイスであると申せましょう。

 それだとしても、あの荒山作品がラジオドラマに、それもNHK系列で…というのは、ファンとしては非常に感慨深いものがあります。

 そして気になっていたキャストの方もまた面白い。
 何よりも、ナレーターが中村梅雀というのにまず驚き。前進座の元看板俳優であり、大河ドラマの常連俳優、時代劇への出演も多い梅雀さんが、荒山作品の語りを!?…というのは失礼かも知れませんが、やはり驚かざるを得ません。

 そしてその他のキャストも、景元の悩み、迷いながらも成長していく姿を好演した細見大輔、敵役ながら人間味あふれる好漢・卍兵衛を見事に演じた山路和弘など、主役級の健闘が印象に残りますが、個人的に一番驚かされたのは、ヒロイン・春香を加藤忍が演じたことであります。

 加藤忍は、現在NHK BSプレミアムで放送中の韓国時代劇の大作「トンイ」の、ハン・ヒョンジュ演じる主人公に声を宛てている真っ最中。
 つまり韓国時代劇声優(などという言葉はいま作りましたが)が、荒山ヒロインの声を当ているわけで、これに興奮しないわけにはいきません。
 荒山先生も興奮しているに違いない!(と妄想)

 さて、内容の方は、結構な分量のある原作をうまく脚色し、まずは原作の内容を過不足なく再現していると言えます。
 最も異なるのは終盤の展開、特に最終回でありますが――これはこれで、ラジオドラマという媒体で作品を描くに、適した形にアレンジしたということなのでしょう。

 個人的には、原作の余情溢れるエピローグが大好きだっただけに、すべてを明らかにして描いたこのラジオドラマ版のラストはどうかとも思いましたが、個人的に、ナレーターが実は…というのは大好物なので、これはこれで面白い趣向であったと思います。
(何よりも、中村梅雀の父親の当たり役を考えれば、ニヤリとさせられるではありませんか!)


 何はともあれ、ラジオドラマとして問題なく楽しめた本作。
 このラジオドラマをきっかけに荒山作品に触れる読者が増えたり、今後も他メディアへの荒山作品進出が続けば、これは実に愉しくも嬉しいことではないかと思うのですが、その結果に関しては、当方は関知しません。

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