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2011.07.16

「つばめや仙次 ふしぎ瓦版」 探偵役は瓦版売り?

 深川の薬種問屋の次男坊・仙次は、店で働きもせず、怪しげな事件専門の瓦版を作っては売り歩く毎日。そんなある日、彼の前に死人を蘇らせると評判の拝み屋が現れた。拝み屋のおかげで、幼なじみのお由有の父の医院が閑古鳥と知った仙次は、親友の剣術家・梶之進と真相を探るのだが…

 先月「唐傘小風の幽霊事件帖」が刊行されたばかりの高橋由太の新作が、早くも光文社文庫から刊行されました。それがこの「つばめや仙次 ふしぎ瓦版」であります。

 主人公は、江戸は深川の薬種問屋つばめやの次男坊・仙次。
 この仙次、店を継いだ兄のことも手伝おうともせず、ふらふらと遊び歩いているのですが…そんな彼の本業(?)が、不思議話専門の瓦版売りなのであります。

 そんな彼が出くわした今回の事件は、死人を蘇らせるという拝み屋が現れたというもの。
 それだけであれば、いかにも仙次の興味を引きそうな話ではありますが、その拝み屋が、医者が助けられなかった子供を蘇らせた――しかも、その医者が幼なじみの由有の父親・宋庵で、そのおかげで宋庵の商売があがったりになったとくれば、面白がってばかりはいられません。

 仙次は、同じく幼なじみで硬骨漢の剣術バカ・梶之進と調査に当たるのですが、事件は思わぬ方向に展開していくのでありました。


 本作の表紙イラストは「猫絵十兵衛お伽草紙」の永尾まる。仙次と猫の猫之介(という名前なのです)、そしてたくさんのあやかしたちをあしらったイラストは、どちらのファンデもある私にとってはまことに嬉しいものであります。

 しかし(と言ってよいものかどうか)、内容の方は、これまでの作者の作品とは一風変わった、むしろ時代ミステリ的作品という印象なのです。

 仙次と梶之進の前に現れた、拝み屋・八兵衛本人。しかし当の八兵衛は、拝み屋らしいところの欠片もない呑気な男で、仙次や梶之進とも(一方的に)仲良くなってしまいます。
 ところが、仙次が八兵衛の稼業を瓦版で取り上げようとすると、血相変えて拒否する始末。

 果たして八兵衛は本当に死人を蘇らせる力を持っているのか?
 さらに仙次と梶之進、二人にとってのアイドルであるお由有が八兵衛の家に通い詰めるようになり、二人は是が非でも、この謎を解き明かさねばならない羽目になる、という寸法であります。

 頭が回るようでどこか抜けた仙次に、剣はめっぽう強いが完璧に脳筋の梶之進、どこか呑気でさばけた人柄の宋庵先生に、仙次の師匠に当たる怪老人・鬼一じいさんと、飼い猫の猫之介――
 次々と登場するキャラクターの個性はさすがは…と言うべき面白さで、相変わらずのリーダビリティの高さであります。


 とはいえ、肝腎の謎解きがかなり乱暴であったり、梶之進が脳筋過ぎだったり、何よりも、瓦版売りという仙次のキャラクターの最大の特長が、今回はほとんど活かされてなかったのは、残念なところではあります。
 この辺りの食い足りなさはどうにかしていただきたいところです。

 分量的にも内容的にも、今回は顔見世興行と思って、この辺りはこれからのシリーズ展開次第というところかもしれません。

「つばめや仙次 ふしぎ瓦版」(高橋由太 光文社文庫) Amazon
つばめや仙次 ふしぎ瓦版 (光文社時代小説文庫)

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