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2011.08.13

「鬼の作左」第2巻 鬼の豪傑譚、これにて打ち止め…

 西条真二が本多作左衛門重次と三河武士の暴れっぷりを描いた「鬼の作左」、第2巻にしてまことに残念なことに最終巻であります。
 徳川家康の麾下にその人ありと知られる隻眼の豪傑・本多作左衛門重次――その恐ろしげな風貌と果断な性格から、人呼んで「鬼の作左」。
 家康がまだ人質だった時分から彼に仕え、主のためならば、自分の命も鴻毛より軽し、「ハハハハハ」と笑い声を上げながら死地に飛び込んでいく豪傑であります。

 しかし単なる武力バカではなく、行政官としても有能で…というのが第1巻の終盤からの展開で、続く第2巻では、奉行としても豪腕を振るう作左の前に、少年・大久保彦左衛門が登場するエピソードから始まります。

 大久保彦左衛門といえば、頑固爺の印象が強い…という方がほとんどだと思いますが、本作では、頑固は頑固ですが、爺どころか子供というのが実に面白い。
(更に、武断派というイメージの強い彦左衛門が、ここでは才気走ったキャラクターなのもまた工夫と言うべきでしょうか)
 そして、その彦左の初陣の描写に重ねて、作左が自分たちの戦う理由、戦わなければならない理由を語るシーンは、作左という人物のみならず、本作の世界観を良く示すものとして印象に残ります。

 そしてこの物語も、この辺りから、作左だけではなく、家康に仕える他の武将たちにもスポットが当たるようになります。
 そして、そんな彼らが挑む相手が、第1巻にも登場した織田信長、そして新たに登場する武田信玄なのですが…予想通りと言うべきか何と言うか、この信玄がまた凄まじい。

 立ち上がれば頭が天井に擦れるほどの巨人にして、人の体が壊れる様を見、聴くのが大好きという、一種の殺人狂・戦争マニア。
 その狂いっぷりに、部下たちも恐れおののき、敵となる家康たちに同情するほどなのですから、尋常ではありません。
 そして、この武田信玄と、家康が正面から激突し、そして家康が惨敗した、三方原の戦が、本作のクライマックスとなります。

 と、この前に信長が浅井長政の裏切りに遭い、命からがら生き延びた金ヶ崎の戦でも、徳川軍はむしろ水を得た魚のような暴れっぷりを見せるのが実に楽しいのですが、結構さらりと描かれてしまったのが惜しい。

 閑話休題、歴史ものでは、黙っていれば素通りする武田軍に対し、圧倒的に劣勢だった徳川軍が浜松城から打って出たのを、様々に理由付けしておりますが、本作では、実に「らしい」ものとして描かれているのが面白い。

 もちろん、そうは言っても大苦戦は大苦戦、徳川の猛将たちも傷つき、斃れていくのですが(その中で、生涯無傷のあの人だけは活き活きと暴れているのはちょっと愉快)…
 そこで作左が三河武士としての意地を見せ、文字通り信玄に一矢報いたところで、本作は終了となります。

 これはこれで盛り上がる結末ではありますが(その一撃が信玄に与えた影響も含めて)、もちろん作左の人生はこの後も続きます。
 有名な「お仙泣かすな馬肥やせ」の手紙のエピソードがありますし(というよりむしろ、本作で作左の妻がどのように描かれるはずだったのか気になるのですが)、本作でも冒頭で触れられたババァ焼殺未遂事件など、題材には事欠かない人物であるだけに、ここでの完結は、残念でなりません。

 想像以上に、遙かに作者の作風が戦国ものに似合う(何よりも「ハハハハハ」という哄笑のインパクトたるや)ことがわかったのは収穫ではありますが――
 この収穫がこの先、更なる実を結ぶことを期待しましょう。西条流豪傑譚の再来を…

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コメント

この巻の信玄の描写は・・・・・第一巻の秀吉や三成は敵役でも人間扱いされていただけ、まだマシだったんですね(笑)。
私も本作終了残念です。将来的に書かれただろう「石川数正の(秀吉への)寝がえり)」や「信康の切腹」がどう料理されたのかが読みたいので、どこかでの復活を期待しましょう。

投稿: ジャラル | 2011.08.14 14:02

ジャラル様:
信玄は実は作品によって描かれ方が結構違う人物ではありますが、今回の信玄像はどっから持ってきた!? というようなスゴさでしたね。
個人的には三成が巨大亡霊になって家康に復讐しようとするところが見たかったです(って、それは別の漫画

投稿: 三田主水 | 2011.08.28 22:21

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