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2011.08.12

「花かんざし捕物帖」第3巻・第4巻 再会の姫君お竜

 自分のアンテナの低さには、何度も恥ずかしくも情けない思いをしてきたのですが、いやはや、今回ばかりは本当に情けない思いをいたしました。
 単行本は2巻までで未完に終わったと思いこんでいた島崎譲の「花かんざし捕物帖」が、電子書籍で全6巻完結していたのですから…

 これまで第2巻までこのブログでも紹介してきたため、ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、本作は山田風太郎の「おんな牢秘抄」を漫画化したものであります。
 冒頭に述べたとおり、書籍としては第2巻まで刊行されたものの、それ以降の刊行はなく、連載されていたwebコミックサイト「Mychao」が終了してしまったこともあり、全く申し訳ないことに、勝手に未完に終わってしまったものと思いこんでいたのですが――

 いやはや、きっちりと完結した上、電子書籍サイト「eBookJapan」で電子書籍化されて販売されていたのですから、自分の無知を恥じるしかありません。

 というわけで、早速電子書籍版を購入して、手持ちのandroidタブレットで読んでみたのですが、思っていた以上に読みやすい。
 画面の大きなタブレット端末ということもあるかもしれませんが、画像の質やページめくりのスピード等、まず書籍で読むのと遜色ないように感じます。
(一冊750円というのはちと高いように感じましたが、オールカラーなのでこれは仕方ありますまい)


 さて、電子書籍の話はこれくらいにして、作品の内容の方に触れましょう。

 将軍の命を狙ったという触れ込みの謎の娘・姫君お竜、その実、大岡越前守の娘・霞が、おんな牢に潜入し、殺人の罪で死罪を待つばかりの不幸な女性たちを救う本作。
 あらすじだけ見れば、何とも荒唐無稽に見えるかもしれませんが、しかし原作はいわずとしてた山田風太郎、そして描くは時代漫画の名手・島田譲…というわけで、華やかな中にも、一本筋の通った快作であります。

 これまで、曲芸師のお玉の嫌疑を晴らし、御家人の妻・お路が陥った罠の真相を追ってきたお竜/霞ですが、この第3巻・第4巻で描かれるのは、お路の事件の解決編と、第3の女・塗師屋の娘・お関と、第4の女・元妾のお半の事件であります。

 丑の刻参りがきっかけで、玄々教なる宗門に魅入られ、奇怪な予言の果てに全てを失った末に玄々教の教祖を殺したお関。
 二十年ぶりに出会ったかつての恋人が、自分と娘を狙っていることを知り、百足あるきなる奇怪な毒で殺したというお半。

 如何に奇怪な事件といえども、彼女たちの罪は疑いない…と見えた事件の中に隠された真実を見出し、彼女たちを罪に陥れた真の下手人の姿を浮かび上がらせる――
 そう、本作の骨格は確固たるミステリであり、そしてそれと同時に、それを絢爛にデコレートして、痛快華麗なヒロインの活劇として肉付けした作品であります。

 そしてその骨格の部分と、肉付けの部分が、見事に噛み合っているのが、この漫画版
「おんな牢秘抄」、「花かんざし捕物帖」であるという印象は、この中盤のエピソードを読んでも変わることはありません。

 もちろん、それぞれの事件の骨格は原作に忠実でありますが、しかし細部の演出は原作と異なるのも本作の魅力。
 ことに、ヒロイン・霞の時に天真爛漫、時に大胆不敵な言動を、より強調する描写が多いのが何とも楽しく――その一方で、本物の姫君お竜との心の交流もきっちり描かれているのが、なかなかに良いのです。
(ただ、原作でお半の登場時に描かれた結構意外なエピソードがオミットされているのはちと惜しい)


 さて、謎は解け、嫌疑は解けても、しかしどこか釈然としないものが残る個々の事件。果たしてその陰に何があるのか――
 残り2巻も早々に楽しませていただくつもりであります。

「花かんざし捕物帖」第3巻・第4巻(島崎譲 eBookJapan) 第3巻 /第4巻


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