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2011.08.26

「戦国妖狐」第7巻

 戦国時代、闇(かたわら)になることを目指す人間嫌いの仙道・迅火と、その義姉で人間好きの妖狐・たまの旅を描く…のは第一部までのお話。
 「戦国妖狐」、この巻より開始の第二部は、主人公を交代しての新展開であります。

 霊力改造人間を擁して人ならざる闇を狩る断怪衆との死闘の末、遂にその最高幹部たる野禅を追い詰めた迅火一行。
 しかし九尾の狐の力を持つ野禅との決戦の最中、己の霊力を暴走させた迅火は、恐るべき千本妖狐と化し、周囲の大地の精気を吸い取った末に何処かへ姿を消して――

 というところで第一部完だったわけですが、果たしてこれを受けた第二部や如何に…と思いきや、主人公を、そして物語の趣を変えての新展開であります。

 第二部の主人公となるのは、元・断怪衆の一人にして、体内に千体の闇を融合された「千魔混沌の魔神の卵」と呼ばれる少年・千夜。
 幼い身に巨大すぎる力を背負わされた彼が、新たな旅に踏み出す姿が、この第七巻では描かれることとなります。

 断怪衆と迅火たちの戦いの中で、その師匠にして実の父である断怪衆四獣将最強の男・神雲とともに、山の神に封印された千夜。
 如何なる理由か(おそらくは、いやまず間違いなく対迅火の切り札とするため)封印を解かれた彼は、人間と闇が平和に共存する村で目覚めるのですが…

 偶然か、はたまた何者かの手によるものか、全ての記憶を失った末、かつての戦いの中で因縁を持った真介(頼りなかった彼が、いまや人間として千夜を暖かく見守る存在になるというのがまた心憎い)と共に暮らす千夜。
 自分の力を忌避しない村の人々/闇と平和に暮らす千夜は、しかし、その力を狙う者との戦いで、力を持て余した末に周囲を傷つけた彼は、真介と共に旅に出ることになります。

 強すぎる力を持つ者が、その力故に安住の地をなくし、流離うというのは、ある意味定番の展開ではあります。
 しかし、それをよくある話のままで終わらせないのは、作者の腕というものでしょう。
 確かに、己の力を暴走させた彼の悲しみは、軽いものではありますまい。
 しかし彼の周囲には、それでもなお、彼を受け容れ、共にあろうとする者たちがいる――

 それを受けた彼が、決して単なる逃避ではなく、己の中の千体の闇を抑え、人間になるための旅に出ることを誓う姿は、いかにも少年らしい一途さが、ストレートに好ましく思えます。
 そしてその姿が、かつて、人間というものに絶望し、闇になるための法を求めて旅に出た迅火と、丁度表裏一体となっていることに、ある種の感慨を覚えた次第です。


 もちろん、千夜の決意は、まだまだ世間というものを知らぬ子供の想いに過ぎないかもしれません。
 彼の力を狙う者はおそらく少なくはなく、そして彼の中に眠る千匹の闇もまた、どこまで彼に味方するものかはわかりません。
 そして彼の旅の先に必ずや現れるであろう千本妖狐・迅火は、彼の運命を大きく揺るがせることとなるでしょう。

 そんな中で少年が人間としての生を全うできるか――第一部よりも感情移入しやすい主人公だけに、先が楽しみなのであります。

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