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2011.08.31

「快傑ライオン丸」 第44話「くの一の涙 怪人メガンダ」

 メガンダは、抜忍・錠之介を討つために麻里恵らゴースンガールを送り込む。が、麻里恵以外は全て倒され、麻里恵も錠之介に罠を見破られてしまう。しかし錠之介に自害を止められ、生きろと諭された彼女は自らも抜忍となることを決意。襲いかかるドクロ忍者と戦う麻里恵の姿を見た獅子丸たちは彼女に加勢、ライオン丸とタイガージョーは協力してメガンダを倒す。が、乱戦の中で傷を負った麻里恵は、静かに息を引き取るのだった。

 前回、ついにゴースンを裏切り抜忍となった錠之介。その彼を討つべく派遣されたゴースン八人衆との戦いが、今回から始まります。
 一番手は、ゴースンから目の力を与え、ゴースンサンダーの力を持つ(と思われる)眼力光線を操るメガンダですが…その光線の力で無関係の村人の目を片っ端から潰していく辺り、よくわからない奴ではあります。

 このメガンダが錠之介打倒の助っ人に呼んだのは、麻里恵・黒百合・鬼百合・姫百合のゴースンガール。うち、名前に百合のつく三人は錠之介を取り囲みますが、瞬く間に錠之介に斬り捨てられてしまいます(しかしこの場面、錠之介が突然逆立ちすると、くノ一三人も逆立ちし、次に錠之介が地に転がると、ジャンプして襲いかかってきた三人を斬り捨てるというよくわからない展開…)。

 が、次いで襲ってきたメガンダの眼力光線で左腕を傷つけられたタイガージョーは一旦退却しますが、麻里恵の焚く不思議な香りに誘われて、彼女の待つ山小屋を訪れます。
 そこで、麻里恵の正体を見破りながら、彼女の差し出す粥を平然と口にする錠之介ですが――粥の中に入れられていた毒に突然苦しみだした! 一体何やってるの!?

 …とツッコミを入れたくなるところですが、それは錠之介の演技。襲いかかったところをあっさりと組み伏せられる麻里恵は、殺せと吐き捨てますが、錠之介は女を斬る気は毛頭ないと――あれ、さっきの三人…?

 それはさておき、今度は自害しようとする麻里恵を、錠之介は叱りつけます。
 死ぬことはたやすいこと、だがそれは逃げるよりももっと卑怯な振る舞いだと――一見冷たいような、しかし真情の籠もった言葉に、麻里恵は涙を流すのでした。
 これまで一族皆、忍びとして摩利天(摩利支天?)の掟に縛られてきた麻里恵は、その掟を捨てる勇気を錠之介から得るのですが、しかしそれは彼女も抜忍になるということ。

 錠之介はメガンダの襲撃を受け、そして麻里恵はドクロ忍者の群れに追われることとなるのでした。その麻里恵の姿を目撃した獅子丸たちは助っ人に入り、錠之介とどうなったのか、さらにそこにメガンダも現れて(このシーン、谷底で何かを感じたかのように四方に分かれて走り去る獅子丸たちが走り去った後、その中間にメガンダが忽然と現れるという、これまたよくわからない演出…)乱戦が始まります。

 谷底のライオン丸に対し、崖の上から鞭とも杖とも付かぬ武器を取り出したメガンダは、それをライオン丸に投げつけて腕を封じるゴースンメガンダ縛りを喰らわせた上で眼力光線を放ちますが、そこに飛び出した錠之介はマフラーで光線を防御(これまた(略)
 揃い踏みしたライオンとタイガーに対し、今度はメガンダはタイガージョーにロープを投げつけ、絡みつけたそのロープを伝って滑り落ちるというゴースンジェッターなる謎の技で肉迫しますが――その途中、刀に光を反射させて目潰しするというライオン光返しを大きな目に喰らって落下、ライオン丸の、タイガージョーの刃をそれぞれくらい、メガンダは倒れるのでした。

 戦いは終わりましたが、しかし乱戦の中でドクロ忍者に深手を負わされた麻里恵は、死にたくない…折角人の心というものがわかったのに…と涙ながらに訴えます。
 それを看取る獅子丸は、麻里恵の流すその涙こそが、人の心の表れだと慰め、彼女も、自分が涙を流せることに喜びながら息を引き取るのですが――いや、少し前にも悔し泣きして錠之介に怒られていたような。

 あまりこういうのは好きではないのですが、今回は何だか演出と展開がちぐはぐで、突っ込みどころだらけになってしまったのは何とも残念。本来であれば、錠之介と麻里恵の哀しい交流を描くエピソードとして、胸に残ったのでしょうが…
(知らぬこととはいえ、捨てようとしていた仏像を彼女に抱かせてやる獅子丸にもすっきりしないものが残りますが、それはラストに錠之介が怒り任せに壊したのでまあ良し)


今回のゴースン怪人
メガンダ

 ゴースン八人衆の一人で、ゴースンの目の力を授けられ、眼力光線を放つ。また、二本の短刀を武器とするほか、杖を投げつけて相手の腕を封じるゴースンメガンダ縛りを使う。
 ゴースンの命を受けて抜忍・錠之介を追うが、配下の麻里恵に裏切られた上、ライオン丸とタイガージョーの共同戦線に敗れる。


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2011.08.30

「石影妖漫画譚」第4巻 もはや納得のバトル展開

 絵に描いた妖怪を実体化させる筆を持つ妖怪絵師・烏山石影が巻き込まれる奇怪な妖事の数々を描く「石影妖漫画譚」の第4巻であります。
 第2巻から長きにわたって物語を騒がせてきた人斬り・入間亜蔵との戦いもようやく決着。ここで新章に突入であります。

 刀も帯びぬ状態で、犠牲者を――一滴の血も零さずに――両断するという奇怪な凶行を繰り返す入間。
 明らかに人外の力を操ると思しき入間に興味を引かれてた石影は、入間を追う火盗改長官・中山に協力することになるのですが、入間の力は想像以上、さらなる犠牲を出した末に、石影は入間と最後の決闘に臨むこととなります。

 一度に描ける妖怪の数は三体まで、という限界ギリギリで挑む石影。石影や中山に追い詰められた末に、新たなる能力に目覚めたという入間。
 二人の戦いの行方は…ここに来て、なかなか面白い能力バトルとなった感があります。

 能力バトルの醍醐味は、それぞれがどのような能力を繰り出すか、という点はもちろんのこと、その能力にどのような弱点を付与し、それを如何に突き、守るかという攻防の点にあるかと思います。
 その意味では、ここで描かれた入間の最後の能力は、ビジュアル的なインパクト(馬鹿馬鹿しさ)と威力、そしてそれと表裏一体の弱点の存在と、十分に合格点でありますし、それに対する石影の対応も、絵師という彼の能力を活かしたもので納得であります。
(そしてまた、石影が最後に挙げた入間の罪も、意表を突いたようでいて説得力があるのがよろしい)

 入間へのとどめを刺した人物については、やり過ぎ感もあるかもしれませんが、バトルものだと思えばこれも十分許容範囲。というよりむしろ、よくやってくれた、という印象すらあります。


 そして物語は新章へ。
 入間との戦いで受けたあるダメージを回復すべく、石影は毛羽毛現と共に、彼女の妹である毛倡妓に会いに行くのですが…
 石影画の人造妖怪が多い本作には珍しく(?)毛倡妓はベースがある妖怪でありますが、本作での毛倡妓は、何とツンデレツインテール妹キャラ。

 ロリババァの毛羽毛現と並び、またキャッチーなキャラが出てきたものですが、しかし背景となる設定自体は(ある種定番ではありますが)それなりに重く、また彼女につきまとう新キャラの退魔僧のキャラも含めて、なかなか面白い存在ではあると思います。

 長かった入間編を経て、独自のカラーというものがようやく見えてきたやに感じられる本作。
 時代もの、妖怪ものとしての突っ込みどころは山のようにあれど(少なくとも、火盗改の連中の髪型の無茶苦茶ぶりだけは本当にひどい)、バトル人情もの(?)としてどこまでいけるか、ここまで来たら見届けたいと思うのです。

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2011.08.29

「幕府検死官玄庵 血闘」 帰ってきた反骨医!

 南町奉行所付きの検視役を務める逆井玄庵は、馴染みの夜鷹の仇討ちに加勢して、幕府目付の次男を斬る。これをきっかけとするように、以来玄庵の周囲では女性の猟奇殺人が相次ぎ、玄庵は様々な敵に命を狙われることとなる。そんな中、篤姫の依頼を受け、猟奇殺人の犯人を追う玄庵が知った真相とは…

 蘭方医術と無外流抜刀術の達人にして尊皇佐幕の反骨の漢、人の命を救うメスを振るう一方で、女子供を傷つける外道には容赦なく殺人剣を振るう、逆井玄庵が帰ってきました。
 これまで中公文庫で「玄庵検死帖」「倒幕連判状」「皇女暗殺控」と発表されてきた本作ですが、このたび「幕府検死官玄庵 血闘」のタイトルで、文芸社文庫から新作が刊行されたのです。

 作中での時系列では第一作目の前、第三作目の後(第三作目は第一作目の二年前という設定なのです)、おそらくは1861年の江戸を舞台に、女性を逆さ吊りにした上、首筋を切り裂くという猟奇殺人に玄庵が挑むハードボイルド時代劇であります。

 新刀の切れ味を試すための辻斬りに父を斬られ、夜鷹に身を落とした女の助太刀を買って出た玄庵が斬ったのは、目付の不良息子。
 しかしそれがきっかけで、目付配下の黒鍬者、不良息子の兄の師である山田浅右衛門と、次々と強敵に狙われる玄庵は、常回り同心の国光平助、食い詰め浪人の斎藤一というわずかな友を味方に、巨大な敵に挑む羽目になります。

 しかし、捨てる神あれば拾う神ありと言うべきか、猟奇殺人の最初の犠牲者が、篤姫付きの女官であり、玄庵自身、篤姫や和宮との関わりがあったことから、玄庵は篤姫のお墨付きで、事件究明に乗り出す…という展開であります。

 さて、加野作品の最大の魅力は、ひねくれ者でありながら、熱い部分を持つ主人公が、誰が本当に味方で、誰が本当の敵かわからない、複雑怪奇な事件の流れの中で翻弄されながらも自分の信念を貫くという点にあると常々考えております。
 そして、その点は、少しだけ装いを変えた本作でも、健在であることは、言うまでもありません。

 権威権力に牙を剥き、弱い立場にある女性に対しては、どんな危険であろうと飛び込んでいく――
 本作で玄庵が巻き込まれることとなった事件は、元はといえば、玄庵のこの性格がきっかけではあります。

 夜鷹の仇討ちに平然と命を賭け、そして猟奇殺人の犠牲となった女性のために本気で怒り…
 その挙げ句、常人であれば命が幾つあっても足りないような目に遭わされ、更には、出口のない謎の数々に疑心暗鬼となる。

 その姿は何とももどかしくもあるのですが、しかし、それだからこそ玄庵、それだからこそ加野主人公――
 混沌とした幕末の世情の渦に流されず溺れず、平然と逆らいながら立ち向かい、己の検死帖に載せた悪人を討たずにはおかない、そんな玄庵の姿に、旧知の友に会えたような気持ちになれました。


 これまでのシリーズの作品に比べると、史実を背景とする部分は少なく(すなわち伝奇度は低めで)、事件捜査がメインとなっているのは、これは時代の流れというものかもしれません。
 それでもなお――そしてレーベルを変えても――帰ってきた玄庵との再会を、心から喜びたいのです。

「幕府検死官玄庵 血闘」(加野厚志 文芸社文庫) Amazon


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2011.08.28

「諸怪志異 燕見鬼編」

 北宋末期、空飛ぶ剣を自在に操る青年・燕見鬼は、師の五行先生の命を受け、伝説の予言書「推背図」を胸に、江南地方に向かう。怪しげな剣士・道士が行く手に立ち塞がり、喫菜事魔の輩の影が見え隠れする中、江南に辿り着いた燕見鬼は、それを得た者は天子となるという伝説の楼閣・万年楼の謎に迫る…

 よほどのことがない限り、以前紹介した作品を再び紹介はしないのですが、今回はそのよほどのこと、と言ってよろしいかと思います。
 未完のままとなっていた諸星大二郎の中国伝奇漫画「諸怪志異」の燕見鬼編が、このたび、50ページの書き下ろしエピソードを追加して、完結を迎えることとなったのですから。

 「諸怪志異」(及び燕見鬼の物語のあらまし)については、既にこのブログでも取り上げましたので、ここでは簡単に触れることとしますが、「諸怪志異」とは、中国を舞台としたオムニバスの奇譚シリーズ。
 燕見鬼(シリーズの前半では幼名の阿鬼)とその師匠の五行先生は、その中で狂言回し的に登場したキャラクターでしたが、シリーズが進むに連れて、物語は燕見鬼を主人公とした武侠ロマン、伝奇活劇的な色彩を強めていくこととなります。

 時は宋代末期、奢侈享楽に耽る皇帝により国は乱れ、地方では叛乱の兆しが幾つも見られる時代――簡単に言ってしまえば「水滸伝」の時代の江南を舞台に、唐代に記された伝説の予言書「推背図」を巡り、燕見鬼が悪人たちと丁々発止のやりとりを繰り広げるというのが、この「燕見鬼編」の(特に中盤以降の)内容であります。

 これまで描かれていた部分では、遙かな未来までも見通すという「推背図」、そして手に入れた者は次代の天子となることが出来るという伝説の楼閣「万年楼」の謎までが描かれ、先が大いに気になるところで、おあずけとなっていたのですが、その続き、完結編を今回読むことができるようになったのは、正直に言って、望外の喜びです。

 今回描き下ろされた完結編「再び万年楼へ」では、再びの語が示す通り、かつて潜入したものの、奇怪な違和感を感じさせる内部に翻弄された末、忽然と目の前から消え失せた万年楼に、再び燕見鬼が挑むこととなります。
 その中で宿敵たちと繰り広げられる推背図争奪戦の行方は、燕見鬼に味方しながらも謎めいた動きを見せる呂師嚢や方臘の真の狙いは(って水滸伝ファンならばよっくとご存じですが)、そして万年楼の正体とは…

 果たして50ページでどこまで描けるのか、読むまでは色々と不安だったのですが、主人公たる燕見鬼君が状況に振り回されがちだったのが少々残念だったのを除けば、これまでの伏線も解明され、まずは綺麗に結末を――一種オープンエンドではありますが――迎えられたのは、何よりも喜ぶべきことではありませんか。

 定価は約1,800円、分量は約460ページと、色々な意味で重い一冊ではありますが、しかしファンにはそれだけの価値があると、言って良いのではないかなあ…と思った次第です。

「諸怪志異 燕見鬼編」(諸星大二郎 光文社コミック叢書SIGNAL) Amazon
諸怪志異 第三集 燕見鬼編 (コミック叢書SIGNAL)


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2011.08.27

「花かんざし捕物帖」第5巻・第6巻

 山田風太郎の「おんな牢秘抄」の、島崎譲による漫画化「花かんざし捕物帖」も、この第5巻・第6巻でめでたく完結。
 第5の女囚、第6の女囚の事件を解決した先にある、驚天動地のクライマックスとは――

 大岡越前の娘・霞が、女盗賊・姫君お竜の名を借りて、奇怪な事件に巻き込まれて処刑を待つ6人の薄倖の女囚を救う本作も、いよいよ終盤。
 第5巻の冒頭で第4の女囚・お半の事件を解決した後は、第5の女囚・吉原の振袖新造であったおせん、第6の女囚・旗本の下女であったお葉の事件に霞/お竜は挑むこととなります。

 自分の姉女郎である花魁の間夫に抱かれたことから仕置きを受け、その果てに花魁と相手の男を殺したおせん。
 周囲に出没する妖しの切支丹の影に惑乱されたか、乱行が元で座敷牢に閉じ込められた主を刺殺したお葉。

 これまで同様、いずれも不可解な状況下で、しかし一見疑いもなくその手を汚したと思われる女性たちを、神出鬼没、変幻自在の
お竜の推理が救い出すこととなるのですが…

 しかし、6人の女性の濡れ衣を晴らし、真犯人を暴いただけで、本作が終わるわけではありません。
 いやむしろ、ここからが本作の真の驚倒すべき点、最大の魅力。原作を含めて未読の方のために、この先の展開は伏せておきますが、これまで、事件が解決しても何とはなしに気にかかってきた部分が、思いも寄らぬ形でクローズアップされ、それが…!
 という本作のクライマックスは、まずミステリとして超一級のものと呼んで、差し支えありますまい。


 …そして、これまで同様、本作が原作の持つ魅力を、巧みにビジュアライズして見せてくれることは言うまでもありません。
 特にこの第5巻・第6巻で描かれる事件は、かたや吉原における男女の愛欲を背景とし、かたや切支丹の妖術を操る怪人が跳梁し、いずれも絵として見るに相応しいもの。

 毎度お馴染みの霞の七変化も、振袖新造に、切支丹の尼僧に、一見無茶苦茶な変身ぶりですが、しかし絵で見せられては、なるほど…と思わされるもので、単なるミステリに留まらない、本作ならではの楽しさに一役買っていることは、間違いありません。

 そもそも、本作は、冷静に考えてみれば、かなり無理のある設定ではあります。
 いかに怜悧な知恵があるとはいえ、頼もしき味方がいるとはいえ、大岡越前の娘が、女賊に化けておんな牢に潜入し、そればかりか、身の危険も省みず、様々な姿に身をやつして、自ら事件解決に乗り出すのですから…

 上で述べたように、ミステリとしての魅力がどれほどあろうとも、設定として無理があるのでは…
 と感じさせる原作を、それでも立派に読める作品としてみせたのは、これは山風先生の豪腕によるところではありますが、この漫画版においては、先に述べたように、荒唐無稽な設定を、問答無用に(?)絵として描き出し、そこに説得力と魅力を与えているのに、最初から最後まで感心させられてきたところであります。

 もちろん、本作が原作を完璧に再現している、というわけではありません。時に描写を省略し、時にエピソードを追加し、随所に本作はアレンジを加えていますが、しかし、原作の魅力を殺すことなく、いやむしろ増しているのは、これまで述べてきた通りです。

 そんな本作の、原作との最大の相違点は、(いささかネタバレ気味で恐縮ですが)ラストで霞が破邪顕正の太刀を振るう相手とシチュエーションなのですが――
 原作を読んだ時には、さすがにこれは無茶が過ぎるだろう、と思った部分だけに、この改変は大歓迎。
 いやむしろ、物語の展開的に、この相手と戦わない方がおかしい、というアレンジには、なるほど! と膝を打ちました。


 惜しくも紙媒体での刊行は第2巻までとなりましたが、しかし、どのような形であれ、本作を最後まで読むことができて本当に良かった…心から思います。

「花かんざし捕物帖」第5巻・第6巻(島崎譲 eBookJapan) 第5巻 / 第6巻


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2011.08.26

「戦国妖狐」第7巻

 戦国時代、闇(かたわら)になることを目指す人間嫌いの仙道・迅火と、その義姉で人間好きの妖狐・たまの旅を描く…のは第一部までのお話。
 「戦国妖狐」、この巻より開始の第二部は、主人公を交代しての新展開であります。

 霊力改造人間を擁して人ならざる闇を狩る断怪衆との死闘の末、遂にその最高幹部たる野禅を追い詰めた迅火一行。
 しかし九尾の狐の力を持つ野禅との決戦の最中、己の霊力を暴走させた迅火は、恐るべき千本妖狐と化し、周囲の大地の精気を吸い取った末に何処かへ姿を消して――

 というところで第一部完だったわけですが、果たしてこれを受けた第二部や如何に…と思いきや、主人公を、そして物語の趣を変えての新展開であります。

 第二部の主人公となるのは、元・断怪衆の一人にして、体内に千体の闇を融合された「千魔混沌の魔神の卵」と呼ばれる少年・千夜。
 幼い身に巨大すぎる力を背負わされた彼が、新たな旅に踏み出す姿が、この第七巻では描かれることとなります。

 断怪衆と迅火たちの戦いの中で、その師匠にして実の父である断怪衆四獣将最強の男・神雲とともに、山の神に封印された千夜。
 如何なる理由か(おそらくは、いやまず間違いなく対迅火の切り札とするため)封印を解かれた彼は、人間と闇が平和に共存する村で目覚めるのですが…

 偶然か、はたまた何者かの手によるものか、全ての記憶を失った末、かつての戦いの中で因縁を持った真介(頼りなかった彼が、いまや人間として千夜を暖かく見守る存在になるというのがまた心憎い)と共に暮らす千夜。
 自分の力を忌避しない村の人々/闇と平和に暮らす千夜は、しかし、その力を狙う者との戦いで、力を持て余した末に周囲を傷つけた彼は、真介と共に旅に出ることになります。

 強すぎる力を持つ者が、その力故に安住の地をなくし、流離うというのは、ある意味定番の展開ではあります。
 しかし、それをよくある話のままで終わらせないのは、作者の腕というものでしょう。
 確かに、己の力を暴走させた彼の悲しみは、軽いものではありますまい。
 しかし彼の周囲には、それでもなお、彼を受け容れ、共にあろうとする者たちがいる――

 それを受けた彼が、決して単なる逃避ではなく、己の中の千体の闇を抑え、人間になるための旅に出ることを誓う姿は、いかにも少年らしい一途さが、ストレートに好ましく思えます。
 そしてその姿が、かつて、人間というものに絶望し、闇になるための法を求めて旅に出た迅火と、丁度表裏一体となっていることに、ある種の感慨を覚えた次第です。


 もちろん、千夜の決意は、まだまだ世間というものを知らぬ子供の想いに過ぎないかもしれません。
 彼の力を狙う者はおそらく少なくはなく、そして彼の中に眠る千匹の闇もまた、どこまで彼に味方するものかはわかりません。
 そして彼の旅の先に必ずや現れるであろう千本妖狐・迅火は、彼の運命を大きく揺るがせることとなるでしょう。

 そんな中で少年が人間としての生を全うできるか――第一部よりも感情移入しやすい主人公だけに、先が楽しみなのであります。

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2011.08.25

「紅蜘蛛 奥羽草紙 花の章」

 熊鷹と白い子犬を供に、北へ向かう脱藩浪人・楠岡平馬は、風変わりな医師・山本善三と道連れになる。最上川近くの森で男に襲われていた娘・おちかを救った二人だが、おちかは、付近で続発する首なし殺人の関与を疑われていた。そして、平馬たちの前に、人を喰らう巨大な紅蜘蛛が現れる…

 熊鷹のハヤテと白い子犬のおユキを供に、北へ旅する鹿毛色の髪の浪人・楠岡平馬が、旅の途中で出会う人々との触れ合い、そして奇怪な妖との戦いを描く「奥羽草紙」シリーズの第二作が本作「紅蜘蛛」であります。

 ひたすら北へ北へ向かう平馬に、強引に同行してきたおかしな医師・善三。
 ずうずうしい善三に振り回されながらも旅を続ける平馬は、土地の庄屋の息子に襲われていたおちかを救うことになります。
 おちかの美しさに、たちまち骨抜きになった平馬と善三ですが、その直後に彼らが目撃したのは、首から上をなにものかに喰われた男の死体――

 実は、近隣ではこのような無惨な死体が次々と見つかり、それがいずれも、ある理由から村八分にされていたおちかを、ことさらに迫害していた人間。
 そのため、下手人として疑われるおちかを守らんと、俄然張り切る平馬は、豈図らんや、その巨大な紅蜘蛛の怪と死闘を繰り広げる羽目となるのですが…


 と、本作は、前作「乙女虫」同様、自分の目的を持って孤独な北紀行を続けるはずの主人公が、ゲストヒロインとの関わりから奇怪な怪物との死闘に巻き込まれ、その背後に潜む悲劇を暴き出すという構造。
 一連の惨劇の真犯人である巨大な紅蜘蛛の怪の存在は、物語冒頭から明確に描かれているのですが、さて、それでは紅蜘蛛とはなにものなのか、人々を襲うことに理由があるのか――
 事件が進んでいくにつれ、その真実が明かされていく本作は、言うなれば、妖怪(むしろ怪獣?)人情時代小説と言えるかもしれません。

 先に述べたように、この構造はおそらくシリーズ共通のものであり、前作もこれは同様であります。
 しかし前作では平馬の物語とゲストヒロインの物語、そして妖怪の物語、それぞれの結びつきが今一つ弱かったのに対し、本作はそのそれぞれが密接に結びつき、一つの大きな物語をきちんと構成している点で、より完成度が高まっていると言えましょう。
(もっとも、大事な目的がある割りに、ヒロインに目尻を下げて大事に巻き込まれる平馬はどうかと思いますが…特に今回のような物語の場合は、彼の陽性のキャラクターが一種の救いとなっているとは感じます)

 また、ヒロインのほか、登場するキャラクターも、おかしな旅医師・善三が、紀行家・博物学者の菅江真澄の弟子という設定だったり、前作から平馬の追っ手として顔を出している佐川官兵衛が、銭形警部的な味わいを出していたりと、個性的かつ、時代ものとしてのひねりがあって楽しいのです。

 さらに、ある意味本作の最大の特徴である、平馬の頼もしい(?)相棒たち――熊鷹のハヤテと白い子犬のおユキも、それぞれ格好いい担当と可愛い担当という趣があって、物語に華を添えておりますし、そして何より、彼らに向けられる平馬の優しい眼差しが、寒々しく重苦しい物語の中で、何よりのぬくもりとして感じられるのです。


 ややもすれば、人の感情の負の側面が強く出た、陰惨な物語となりかねぬところを、ぎりぎりのところで踏みとどまった感のある物語に対しては、双方向に好みが分かれるかと思います。
 また、内容的にも、単行本書き下ろしでやるにはあまりそぐわないのでは…と個人的には感じます。

 そうした点を踏まえてもなお、私のような人間にはやはり魅力的に見えるのが本作であり、本シリーズなのですが――
 さて、本作の意外な引きを受けて、果たして物語がいかなる結末を迎えるのか、それも近々紹介したいと思う次第です。

「紅蜘蛛 奥羽草紙 花の章」(澤見章 光文社) Amazon
紅蜘蛛


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2011.08.24

「快傑ライオン丸」 第43話「裏切りの峠 怪人ギララ」

 裏日本と表日本を繋ぐ遠見峠制圧をゴースンに命じられたギララは、近隣の人々を苦しめていた。それを知った獅子丸はギララを倒そうとする。ギララから獅子丸打倒への協力を持ちかけられた錠之介は、獅子丸を倒すのは自分とこれを拒否、逆に獅子丸に峠に待つ罠の存在を教える。図らずも協力してギララを倒す二人。抜け忍となってしまった錠之介は、獅子丸にゴースンは刀では倒せないことを教えるのだった。

 果心覚書編を通じて、その立ち位置を徐々に変えてきた錠之介ですが、決定的にその立場を変えることとなる様が、今回描かれます。
 日本征服のための要所ともいうべき遠見峠制圧を命じられたギララ(抽象画の太陽みたいな、モチーフ不明の怪人であります)。
 その命を受けて近隣の村で大虐殺を繰り広げるドクロ忍者から、錠之介は幼い少女を救うのですが、村人たちに用心棒役を頼まれた際には、あっさりこれを断ってしまうのが彼らしい。
(後述しますが、ここで追いかけてくる子供と錠之介の半面を一画面に収めたり、どアップにしたりという画面作りがすごい)。

 と、その後にそこを通りかかったのは獅子丸一行。当然、獅子丸は村人の山賊退治の依頼を受け入れるかと思いきや、他にやることがあるとばっさり拒否!
 結局ドクロ忍者が絡んでいると知り、引き受けるのですが、沙織と小助を足手まといと言わんばかりに村に置いていったり、今回の獅子丸さんちょっとハードです。

 さて、その頃錠之介の前には、ゴースンが出現。錠之介はゴースンに巨大神変化を伝授してくれるよう頼みますが、ゴースンは当然のようにこれを拒否。逆に錠之介に獅子丸を殺せと最後のチャンスを与えます。
(というか、この時まで獅子丸の生存を知らなかったゴースンって…)

 これを受けてか、錠之介の前に現れ、親しげに声を掛けるギララですが、錠之介は、ギララと手を組むことをきっぱり拒絶。
 それどころか、峠に近づく獅子丸の前に現れて、罠の存在を警告するのですが――これまで錠之介に正道に帰れと散々説得しても聞かなかった腹いせか、今回は獅子丸が「所詮生き方が違う男」と錠之介をばっさり断じて、先に行ってしまいます。

 ここですごいのが錠之介のやきもきっぷり。獅子丸のバカ野郎、勝手に死んじまえと言いつつ、でもやっぱり放っておけないし…と辺りをウロウロした挙げ句、ええい、やっぱり追いかけなくちゃ! と獅子丸の後を追う辺りのデレっぷりたるや…

 今回の監督は、以前トドカズラの回などを担当した中西源四郎ですが、氏の特徴であるアップを多用した演出がここでも炸裂。行ったり来たりする錠之介の足元だけを映すカットには、彼の焦燥感がよく感じ取れるのですが…もうラブコメのノリに。

 そして獅子丸を追い越して峠で待っていた錠之介(ここでの表情がかなりマズい)は、無視して進もうとする獅子丸の前で地雷の一つを爆破。
 ここで初めて笑顔を見交わし、二人で地雷原を突っ走っていく姿は、えらく格好良くもちょっと別の意味でドキドキであります。
 そして、地雷原の次は炎に取り巻かれた二人は、ここで獅子と虎の連続変身!
 推参! 見参! と連続で見得を切るシーンのカタルシスは最高としか言いようがありません。

 さて、ここで行きがかり上ギララに挑むタイガージョーですが、ギララの連発銃に苦戦、目に銃撃を喰らって視界は朦朧に。
 代わって挑むライオン丸も、一度は接近しますが再度距離を取られて、絶え間ない銃撃にピンチ! …と思いきや、後ろからタイガージョーにブッスリ突かれて、ギララは倒されるのでした。

 さて、もはや完全にゴースンに逆らった形になった錠之介。獅子丸に助けられた礼代わりに、刀ではゴースンを倒せないと教えて去って行くのでした。

 そして飼い虎に手を噛まれたゴースンは、ゴースン八人衆を招集、彼らに一つずつ、自分の力を与えて、錠之介を狙わせることに――というところで物語もいよいよ終盤であります。


今回のゴースン怪人
ギララ

 組み合わせると三連銃になる二本の刀を武器とする怪人。ゴースンの命で裏日本と表日本を繋ぐ遠見峠を制圧、地雷などを仕掛けて獅子丸を待ち受けた。
 戦闘では銃を乱射して優位に戦うが、ライオン丸と戦っている最中に後ろからタイガージョーに刺され、ライオン丸に爆破された。


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2011.08.23

「コミック乱ツインズ」2011年9月号

 以前にも触れましたが、最近はなかなかに(私的に)面白い作品が多く、一時期の勢いが戻ってきたように感じられる「コミック乱ツインズ」誌。
 今月は會川昇脚本の「仕掛人藤枝梅安」に、岡村賢二画の「新影狩り」の連載開始と、実に嬉しい内容となっています。

「仕掛人藤枝梅安」(さいとう・たかを)
 冒頭に述べたとおり、今回の脚本は會川昇。これまで二回登場した氏による梅安は、いかにも「らしい」内容でにんまりとさせられたのですが…

 今回物語の中心となるのは、前回登板の際に登場した謎の北町吟味方同心・内村。
 まるで梅安の裏稼業を知っているかのような言動を見せる内村を、同心株の売買を巡る殺人の下手人として仕掛けようとする梅安ですが、事件は二転三転していくこととなります。

 正直なところ、途中までは、今回はちょっとおとなしめかな…と思っていたのですが、しかしその印象は、クライマックスの梅安と内村の対話で、ガラッと変わることとなります。
 梅安に対して内村が語る己の信念…それは、仕掛人とは何か、梅安とは何者なのか? という、核心的な問いかけに繋がっていくのです。
 ジャンルというものの魅力に自覚的でありながら、そこを超えた視点を提示する――如何にも會川昇らしい内容に大満足です。


「新影狩り」(岡村賢二)
 さいとう・たかをの名作「影狩り」を、時代・歴史漫画では八面六臂の大活躍の岡村賢二が描くという、意外といえば意外、納得といえば納得の企画であります。

 「影狩り」は、諸藩取り潰しのために暗躍する公儀隠密「影」を殲滅するために雇われる影狩り三人衆――十兵衛・日光・月光の活躍を描いた時代活劇ですが、本作はその続編ではなくリメイク。
 三人衆の基本的な造形はそのままですが、岡村賢二は冒頭から、それを完全に自分のキャラとして描いており、さすがにこの辺りはベテランと言えましょう。

 十兵衛・月光と日光の出会いから、某藩を巡る影の陰謀と草の悲劇を描く第一回は、エピソード的には水準かと思いますが、痛快なだけではなく苦い後味も実にらしいと感じます。

 「影狩り」の名コピーである「やつらが血の臭いに乗ってやって来た!」が「やつらが血の臭いに乗って帰ってきた!」になっているのにはニヤリ。


「鉄舟 無私の魂」(ながいのりあき)
 ながいのりあきといえば、「がんばれ!キッカーズ」の印象が強いのですが、今回本誌初登場となるこの作品で描くのは快男児・山岡鉄舟の活躍。
 慶喜の命を受けて、江戸での開戦を避けるため、益満休之助と共に駿府の西郷の元へ向かった史実を踏まえた作品ですが…これが実に勢いがあって良いのです。

 最初から最後まで、とにかく走りっぱなしの内容と、作者の躍動感に溢れた絵柄(中村半次郎との決闘シーンのスピード感!)がぴったりとマッチして、その中に浮かび上がる鉄舟の爽やかな男ぶり、そして何よりも等身大の人間としての好もしさが、実に気持ちよく映ります。


「鞍馬天狗」(外薗昌也)
 そして、前回から何やら怪しげな連中が登場して、果たしてどこに向かうのか、(良い意味で)ますますわからなくなってきた本作ですが、今回は杉作の存在に何やら曰く因縁が…という展開。
 未来記(とくればアレでしょう)、光の御子などと不穏なキーワードが登場し、単なる復讐劇を超えた展開が予感されます。

 …と、その予感を裏付けるように(?)実は今回のクライマックスでは倉田典膳と近藤勇が共闘。
 杉作ならずとも「これはすごいことだぞ!!」とすっかり嬉しくなってしまう展開で、原作「角兵衛獅子」で男を見せてくれた近藤のキャラが、意外なところで顔を出してくれたようで、実に嬉しいのであります。


 というわけで、個人的に印象に残った四作品を挙げましたが、これからもこのクオリティを是非維持していっていただきたいものであります。

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2011.08.22

「爆撃聖徳太子」

 下級官人の小野妹子は、ある事件で厩戸皇子と出会って以来、皇子に振り回される羽目となる。沖縄、高句麗、隋…隋皇帝・煬帝の倭国侵略を阻むため、奇計の数々を案じる厩戸皇子の命を受け、妹子は異国で命がけの死闘を繰り広げることに…日出ずるところの天子と日没するところの天子の戦いの行方は?

 色々な小説を読んできましたが、そのタイトルのインパクトという点では、本作が屈指でありましょう。それもそのはずと言ってよいものか、作者は「諸葛孔明対卑弥呼」の町井登志夫。
 そして、「諸葛孔明対卑弥呼」がそうであったように、本作もまた、キャッチーなタイトルと裏腹に、当時の日本を取り巻く国際情勢を踏まえた、硬派な内容の作品なのであります。

 本作の主人公となるのは、遣隋使として知られる小野妹子。
 「日出ずるところの天子、日没するところの天子に書を致す」という書き出しで知られる国書を隋国皇帝に呈した史実は、日本史の教科書でお馴染みですが、それがどれだけ無謀な行為であったか――それは本作を読めばよくわかります。

 対外的に積極策を取っていた――と言えば聞こえは良いですが、実質的にはその軍事力を背景に、周辺の国家への侵略を進めてきた隋。
 事実、作中では、その隋の圧倒的な戦力の前に苦しめられる沖縄の、高句麗の姿が描かれるのですが、さて、そんな隋を、日の沈む国として下風に見る国書を送るということは、これは挑発行為以外の何ものでもありません。


 そんな、まさに竜の逆鱗に触れる行為を妹子にやらせたのが、厩戸皇子、言うまでもなく聖徳太子その人であるのですが、さて、本作で描かれる太子像がまたとんでもない。
 焦点の定まらぬ視線に、突然「うるさいうるさぁぁぁぁい!」と叫び出し、自らを事もあろうにイエス・キリストの生まれ変わりと嘯く、どう考えても危ない人物なのですが、しかし、いつの間にか他人の弱みを聞きつけ、それでもって脅して自分の言うことを聞かせる…
 いやはや、「聖人」という既存のイメージとはかけ離れた、というも愚かな太子像であります。

 正直なところ、この太子像に嫌悪感を抱いて、それで本作を投げる方もいるのではないか…とすら思うのですが、しかしそれは早計というものではないでしょうか。
 そんな太子と、どういうわけか彼に見込まれてしまった妹子が隋に対して挑む、時に裏からの、時に表からの戦いは、そのまま、当時の日本の置かれた苦境を浮き彫りにするものであるのですから…

 私たちが日本の歴史を考える時、日本の国内のみの歴史を考え、他国との関係史というのは二の次――それが国内に直接の影響を与えた場合のみ、言い換えればなにがしかの結果を残した場合のみに考慮に入れるという傾向が、どうしてもあるのではないかと感じます。
 それはある意味仕方ない部分もあるとは思いますが、しかしそれが一面的なものであることを、特に国内が統一されていなかった、あるいはまだ混沌としていた古代史を見た場合に気付かされます。

 作者の前作に当たる「諸葛孔明対卑弥呼」は、その日本と他国があらゆる意味で混沌と結びついていた時代を浮き彫りにした物語だったのですが、その視点は、実に本作でも健在であります。
 まだ統一政権が生まれて間もない日本において、決して無視できなかった大陸との、それも多大な危険性を孕んだ関係。
 現代の我々が無視しているその関係を、本作は、太子の無茶苦茶な活躍と、それがもたらす伝奇的帰結というオブラートでくるんだ一流のエンターテイメントとして、見せてくれるのです。

 さらに言えば、雲上人であり一種の天才である太子に振り回される凡人・妹子の姿は、そのまま、隋と倭国の関係に比せられるのかもしれませんが――
(そしてそんな凡人のある決断を描くクライマックスと、その後の姿は、我々にある種の感慨を抱かせてくれるのです)


 異形の太子像を通して、あり得たかもしれない古代史のある側面を描く本作。タイトルだけで敬遠しては実に勿体ない作品なのです。

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爆撃聖徳太子 (ハルキ・ノベルス)


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 諸葛孔明対卑弥呼

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2011.08.21

作品集成更新

 このブログ・サイトで扱った作品のデータを収録した作品集成を更新しました。今年の3月から今年の7月までのデータを収録しています。
 ちなみに今回も更新にあたっては、EKAKIN'S SCRIBBLE PAGE様の私本管理Plusを使用しております。ソフトはVer.アップされているのに、HTML化のプラグインが追いついてなくて泣かされたりしましたが…

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2011.08.20

「神幻暗夜行」(その三)

 鬼に傷つけられた片目で、この世にあらざるものを視る浪人・神子上幻也の出会う怪異の数々を描く連作時代伝奇漫画「神幻暗夜行」の全話紹介、今回でラストであります。

「心中奇譚」
 女性があまり登場しない(登場しても脇役な)本作においては珍しい、女性の魔性を描いた一篇。

 幻也が海で救った、無理心中の生き残りの男。女に迫られ、引きずられるように海に落ちながらも命拾いしたその男の周囲では次々と奇怪な現象が…
 と、幻也は傍観者的立ち位置で、畳みかけるような怪異に男が追い詰められていく様が描かれます。

 「吉備津の釜」を男性視点から解釈しているのはどうかとも思いますが、女性の執念の強さと、結末の凄惨さは共通していると言えるでしょう。
 そこからさらに、ええっ!? と言いたくなるようなラストシーンもまた恐ろしい。


「鬼刻」
 雑誌連載時のラストエピソード。ある村で年に一度、亡霊武者が現れる鬼刻という時間帯に紛れ込んだ幻也が、その中で己のルーツを知ることとなります。

 かつて百姓たちにより狩られた落ち武者の亡霊が…というのは、「八つ墓村」を思い起こしますが、その怨念が一種の時間のループを作り出すというアイディアは面白い。

 さらにそこで、第一話の冒頭で描かれた、幻也の右目を傷つけた片目の鬼の正体が明かされるという構成も巧みで――これまでのエピソードも断片的に引用され、特に第3話「抜鬼」で語られた「鬼が鬼を造る」という言葉が効果的に使われることに――ラストに相応しいエピソードであることは間違いありません。

 ちなみにラストに顔を見せる僧・頭白は、子育て幽霊に育てられた赤子の後身という伝承のある人物。
 ある意味、生死を超えてきた幻也の前に現れるには相応しい人物かもしれません。


「鬼木」
 連載終了後に単発で掲載されたエピソード(「鬼刻」の後に位置することは、作中のある描写からわかります)。

 死神に魅入られたように、そこで首を吊る者が後を絶たない呪われた地というのは、怪談話ではまま登場しますが、作中に登場する「鬼木」も、そんな呪われた存在。
 いや、それどころではなく…というわけで、旅の商人と丁稚と道連れになった幻也が、奇怪な木の怪と対峙することなります。

 内容的には民俗もの色は薄い(というより、シリーズの途中で全般的にそういう傾向にあるのですが)作品ですが、幻惑的な怪異の存在に、幻也のアクション、さらに人情話的側面も入って、綺麗にまとまったエピソードであります。


 以上10話、これまで紹介してきたように、バラエティに富んだエピソードで構成された、時代ゴーストハンターものともいうべき内容で、まことに私好みの作品であります。

 現在では作者の画風・作風が大きく異なってしまっているだけに、続編はさすがに厳しいところだと思いますが、しかしこうして電子書籍の形ででも手軽に読める環境にあるというのは、まずはありがたいお話。
 特に、最近の作者のファンで、未読の方には強くお奨めしたい作品であります。

「神幻暗夜行」(長谷川哲也 eBookJapan


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 「神幻暗夜行」(その一)
 「神幻暗夜行」(その二)

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2011.08.19

「神幻暗夜行」(その二)

 長谷川哲也の連作時代伝奇漫画「神幻暗夜行」の全話紹介の続きであります。

「大師の里」
 弘法大師を崇める村を訪れた幻也が、その村を年に一度訪れるという大師様の生贄にされて…という本作は、最も民俗ネタが濃厚な作品(ということは、最も諸星的作品でもあるのですが…)

 弘法大師が各地を訪れ、そこで自分をもてなした者に福を与えて去る、という伝説は各地にありますが、このエピソードはそこに山の神信仰を絡めることで、如何にも本作らしい奇怪な物語を生み出すことに成功しています。

 何よりも、村に残るという「大師の足跡」を伏線としつつ、クライマックスに一ページぶちぬきで描かれるモノの姿たるや、さすがの幻也も驚きと恐れを隠せぬほどで…
 絵の力というものを強く感じさせられる一編です。


「壷鬼」
 とある町の商家で見つかった壷に封印されていた鬼の手。商家の人々を喰らい、町に死と災厄を撒き散らす鬼の手に、幻也が挑みます。

 山中異界や奇怪な信仰の残る村など、辺境が舞台となることが多い本作ですが、今回は、数少ない町を舞台としたエピソード。
 町に災厄をもたらす存在の正体はかなりメジャーなものではありますが、それがそのメジャーさに溺れることなく、一筋縄ではいかない存在としてひねりが加えられているのが本作らしいところでしょう。

 多くの血が流される物語ではありますが、商家で唯一生き残った少年の姿を描くラストページが、暖かくも切ない余韻を残します。


「天老」
 山中に籠もる細工師の老人が出会った幻也。出会った者の姿を写しとり、その人物に化けるという怪物を追ってきたと、幻也は語るのですが…

 山中に籠もる男の前に奇怪なモノが現れて…というのは、古今を問わず山の怪談の定番ではありますが、このエピソードは、そこに一種のドッペルゲンガー奇譚とも言うべき要素を入れ込んできたのが実に面白い。

 しかし真に驚くべきは、その怪異の正体、由来であります。
 ここでそれを述べるわけにはいきませんが、伝奇好きであればお馴染みのあの奇怪な伝説を、ここでこうして持ってくるか! と大いに感心いたしました。

 そして、結末での幻也のある選択もまた、何ともいえぬ味わいがあるのです。


「夢鬼」
 幻也が雨宿りの最中に出会った老人との会話を描いた、タイトル通り夢魔めいたエピソード。
 わずか数ページの掌編ではありますが、脈絡があるようでないような展開が、夢の中の出来事を思わせます。

 アクションものから伝奇もの、そして今回のようなエピソードまで、幅広い内容にわたるのも、本作の面白さでありましょう。


 次回に続きます。

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2011.08.18

「神幻暗夜行」(その一)

 右目に傷を持つ浪人・神子上幻也には、不思議な力があった。かつて一つ目の鬼に傷つけられたその目は、この世にあらざるものを視ることができるのだ。諸国を放浪する幻也は、行く先々で奇怪な事件に巻き込まれることに…

 最近ではすっかり荒々しい画風が板に付いた感のある長谷川哲也ですが、かつては、諸星大二郎に影響を受けたと思しき作品を発表していたことがありました。
 本作「神幻暗夜行」はそんな作品の一つ。鬼により傷つけられた目を持つ青年浪人・神子上幻也が諸国で出会う怪異を描いた連作時代伝奇ホラーの佳品であります。

 現在一番手に入れやすい電子書籍版は、単行本版に収録された全九話に、その後に発表された一話を追加した完全版(ただし、単行本版にあった作者による全話解説が収録されていないのが残念)ですが、今回はこの版を元に全話紹介いたしましょう。


「御霊村」
 あやかしに誘われて、呪われた村に迷い込んだ幻也が出会った怪異を描く第一話。

 この時期の作者の作品は、夜の闇の暗さが非常に印象的なのですが、呪いにより夜が明けなくなった村を舞台とする本作では、その魅力を存分に味わうことができます。

 お話的には、幻也の人物設定を描きつつ、閉鎖空間を舞台とすることで、次々と彼を襲う怪異を存分に描き、かつ彼のヒーロー的活躍もあって、第一話ながら完成度は高い一遍と言えましょう。

 ちなみに本作で村に呪いをかけるために使われたある民俗行事(で使われるアイテム)は、私の地元でもいまだに行われているので、個人的に印象が強い作品でもあります。


「蛇泉郷」
 夜刀神の伝説が残る山村で幻也が出会った、蛇神の子と呼ばれ忌まわれる少年を巡る奇譚。

 村の娘が、山からやって来た蛇神と交わり、その子を生むという伝説は、三輪山などでよく知られていますが、本作はそれを題材としつつも、真相に一ひねりも二ひねりも加えているのが面白い。

 そしてまた、それに説得力を与えているのが、皮膚が鱗状となった少年の顔や、クライマックスに現れるモノを描き出した作者の筆力にあることは間違いありません。

 一見、合理的に解釈されたかに見えた事件が…という結末も、個人的には好みであります。

 それにしても、少年を守るために(相手も本気で殺しにかかっているとはいえ)容赦なく村人を切り捨てる幻也は、冷静に考えると凄いことをやっていますが、少年にかつての自分を投影しているということで。


「抜鬼」
 殺人狂の絵師の怨念が籠もった魔物の絵と幻也との死闘を描く、アクション主体の一編ですが、同時にシリーズ中でもっともスプラッター色の強いエピソードでもあります。

 事件の発端となった絵師の凶行の描写が、分量的にはわずかなのですが、とにかく強烈で、実に気持ち悪い、というより気分が悪い。
 第一話で触れた夜の闇の暗さも、それをより印象的なものとしています。

 その一方で、絵の魔物が登場してからのアクションの連発もまた見事(幻也と魔物の空中戦!)でありますし、そこから結末の一ひねりになだれ込んでいく様もまた良いのです。

 そしてラストで語られる「鬼が鬼を造る」という言葉は、後に重要な意味を持って語られることとなるのですが…


 以下、次回以降に続きます。

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2011.08.17

「快傑ライオン丸」 第42話「殺しの流れ者 キルゴッド」

 獅子丸の命を狙ってやってきた賞金稼ぎキルゴッド。だが獅子丸がゴースンに倒されたと聞かされたキルゴッドは、ドクロ仮面2号に雇われ、錠之介を狙う。しかしキルゴッドは生きていた獅子丸と対面、決闘を申し込む。獅子丸が怪我で変身不能としった錠之介は獅子丸を気絶させ、代わりに決闘に臨む。しかし怪我から回復した獅子丸がそこに駆けつけ、キルゴッドと対決、撃破するのだった。

 ゴースンの正体を巡るエピソードも終わり、気がつけば残すところあと1クール。
 不幸な事故による戸野広浩司の急逝により、今回から福島資剛が虎錠之介を演じることになります。

 今回登場するのはライフルと拳銃を携えた賞金稼ぎ怪人キルゴッド。これまでも銃を使う敵は何人もいましたが、ここまで完全な無国籍スタイルは初めてで、「風雲ライオン丸」的な空気を漂わせた奴であります。
 アバンで錠之介と出くわし、すわ対決かと思いきや「お前と争っても一銭の特にもならない」というプロ意識も良い感じです。

 さて、このキルゴッド、獅子丸の首にかけられた賞金目当てにやって来たのですが前回のラストで大魔王ゴースンに挑み、再び完敗した獅子丸は、何と死亡扱い。
 と、途端にヒマになってしまった彼の前に現れたドクロ仮面2号は、裏切り者タイガージョーの抹殺を依頼します。
 以前タイガージョーがドクロ仮面(初代)の砲撃からライオン丸を庇ったことを根に持ってでもいるのか、自腹を切っての依頼という根性にはちょっと驚かされますが…

 一方、もちろん生きていた獅子丸ですが、左手に怪我して動かせず、ライオン丸に変身できないという状態。ドクロ忍者の追撃にも逃げることしかできません。
 しかし、獅子丸を追うドクロ仮面2号と出くわした錠之介は、自分以外に獅子丸はやらせんとばかりに2号を襲撃。哀れ2号は顔に象牙を刺されるという悲惨な死を遂げるのでした…

 一方キルゴッドの方は、タイガージョーと間違えて追いかけたら獅子丸だった、というややこしい展開。しかしここでゴースン怪人のある意味十八番の正々堂々精神を発揮したキルゴッドは、明日の朝に一対一で立ち会おうと告げて去るのでした。

 ここでキルゴッドの後をつける小助が、発見されて大ピンチになったところをを助けたのは錠之介(気絶した小助を背負って歩く錠之介の口元に笑みが浮かぶのが印象的)。
 そして小助から獅子丸の状態と、キルゴッドとの決闘のことを聞かされた錠之介は、獅子丸に対し、命を粗末にするな、逃げろとツンデレっぽく忠告するのですが…それが聞き入れられないとみるや、いきなり殴りかかり、獅子丸を気絶させて、代わりに自分が決闘に赴くのでありました。

 しかし、そんな錠之介/タイガージョーも、岩から変身したドクロ忍者が周囲を取り囲み翻弄するドクロ忍法岩囲みに苦戦。あわやキルゴッドに狙い撃たれんとしたところに、タイミング良く怪我が治った獅子丸が見参!
 手を振りながら復活をアピールし、笑顔で「そいつは俺の相手だ。交替してもらおうか」と錠之介に呼びかけるのですが、もう二人の仲良しっぷりから目が離せません。

 さて、ザコはタイガージョーに任せ、ヒカリ丸でキルゴッドを追うライオン丸。ライフルを乱射する馬上のキルゴッドを追う、同じく馬上のライオン丸とかなり盛り上がる追撃戦の果て、一対一の決闘に。
 さすがにライフルには苦戦しますが、ライオン丸はマントを使った目くらましでキルゴッドの目を封じ、一刀のもとに倒すのでした。
 一方錠之介の方は、小助に礼を言われたのに対し、どうしても獅子丸と立ち合うと言い張ったお陰で、小助と沙織にヘンな奴・変わった人呼ばわりされる羽目に…いやはや。


 と、獅子丸・錠之介の距離がだんだん近づいていくエピソードではありますが、どちらかと言えば、終盤に向けての小休止的な印象の今回でした。


今回のゴースン怪人
キルゴッド

 黒馬に乗り、ライフル銃と拳銃を武器とする賞金稼ぎ怪人。
 賞金目当てに獅子丸と錠之介を狙うが、ライオン丸が放ったマントの目くらましで視覚を失い、回転撃ちを躱されて倒された。

ドクロ仮面2号
 ドクロ忍者を指揮する幹部格。背中に背負った二本の太刀を武器とする。角付き兜の上につけられた「2」の字が特徴。
 裏切り者タイガージョーの抹殺をキルゴッドに依頼するが、当の錠之介本人と出くわし、象牙を顔に刺されて倒された。


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2011.08.16

「信長の暗号」下巻

 柴智安の汚名を晴らすため、信長が遺した秘宝を求めて剣山に飛んだ蒼海と友海。しかし、南蛮世界をも揺るがす秘宝を求め、伊達政宗の配下が、そして異端モーセイスト派も剣山に向かっていた。仕掛けられた無数の罠、そして秘宝を求める者同士の死闘の果てに待つのは、信長の恐るべき仕掛けだった…

 中見利男の「信長の暗号」の後編であります。
 織田信長が宣教師ヴァリニャーノに与えたという安土城の絵屏風。そこに記されているという、日本と南蛮世界を揺るがす秘宝の在処を示す暗号を巡る争いも、いよいよここに完結を迎えることとなります。

 この秘宝争奪戦のプレイヤーとなるのは、上司とも恩人とも言える柴智安の汚名を晴らすべく、秘宝を手に入れんとする暗号師・蒼海と少年忍者・友海。そして彼らと行動を共にするのは、バチカンの密命を受けて日本に渡ったヴァリニャーノ二世、信長の命を受けてイエスの聖骸をバチカンから盗んだと言う(!)盗賊・堂上進介…
 そして、秘宝の存在を別ルートより聞きつけた伊達政宗に派遣された、連歌師、陰陽師らがそれを追い、さらには、これまで幾度も蒼海・友海と死闘を繰り広げた異端モーセイスト派と暗号神・恵知座が、果心居士と風魔一族を味方につけて、秘宝を奪わんといたします。

 そして剣山中に仕掛けられた無数の罠、そして空海が遺した秘宝の守護者が彼らの行く手を阻み、彼ら秘宝争いのプレイヤーは、一人、また一人姿を消していくこととなるのですが…


 正直なところ、どんでん返しに次ぐどんでん返しと、終始一貫したテンションの高さに驚かされた「秀吉の暗号」「軍師の秘密」に比べると、本作はかなりシンプルなストーリーとなっております。

 信長の秘宝の正体や、そこに至るまでの展開も、「一体この作者は何を考えているのだ!?」という気分になった前二作に比べると、おとなしく見えるのですが…

 もちろん、中見作品がそんなに素直に終わるわけがない。終盤のあまりに意外すぎる展開には、ただただ感動! …とまではいきませんが(さすがに、遡り適用的な側面が大きく過ぎるので…)、大いに驚かせていただいたことは間違いありません。


 しかし、本作の真に伝えんとしたことは、最終章の内容に尽きるでしょう。
 この「信長の暗号」を巡る戦いの真の勝者は誰であったのか、そして何より、それは何のためであったのか?

 そこに描かれたものは、シリーズ第一作から変わることのない、ともすれば歴史の流れの中で忘れ去られかねない、歴史の闇の中に葬り去れかねない、人間性というもの――
 冷徹なロジックを重んじるはずの蒼海が、冷徹に任務を遂行すべき友海が、何よりも重んじてきたものであります。

 このシリーズは、本作でもって、一端の結末を見たように思われます。
 しかしながら、この人間性というものがある限り、そしてそれを虐げんとする者がいる限り――いずかまた、蒼海と友海に出会うことができるでしょう。
 その日を楽しみにしつつ…

「信長の暗号」下巻(中身利男 ハルキ文庫) Amazon
信長の暗号〈下〉 (ハルキ文庫)


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 「秀吉の暗号 太閤の復活祭」第2巻 死闘、利休争奪戦!
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 「信長の暗号」上巻 スケールはさらにアップするも…

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2011.08.15

「もののけ本所深川事件帖 オサキ婚活する」

 周吉の店がある深川の疱瘡地蔵周辺で、行き遅れ娘ばかりが攫われる事件が続発し、お江の方が変じた疱瘡婆の仕業という噂が流れる。そんな中、周吉に店の一人娘・お琴への婿入りの話が出るが、態度を決めかねているうちに、お琴の見合い話が出てしまう。お琴の身を案じる周吉だが、さらなる事件が…

 この数ヶ月、ほとんど月刊状態にある高橋由太のもののけ時代小説ですが、作者の最初のシリーズである「もののけ深川事件帖」の第三弾のタイトルは、驚くなかれ「オサキ婚活する」。
 何だか一時期の「必殺仕事人」のようですが、しかし一読、なるほど…となるタイトルであります(もっとも、婚活するのはオサキではありませんが…)

 お江の方ゆかりの疱瘡地蔵周辺で起きる行き遅れ娘の連続行方不明事件。お江の方の怨霊の仕業だ、妖怪疱瘡婆の仕業よと、大騒ぎになる深川ですが、事件は思わぬ形で、主人公・周吉に関わってくることとなります。しかも二つの形で。

 一つは、突然周吉とオサキの前にお江の方の亡霊が現れ、周吉が勤める鵙屋についてきてしまったこと。
 もう一つは、なかなか娘のお琴と周吉の仲が進展しないことに業を煮やした鵙屋の主人が、お琴に見合い話を持ってきた上に、彼女が大川堤での女比べ(まあミスコンのようなもの)に出ることになってしまったこと――

 果たしてお江の方は何故周吉の前に現れたのか、そして行き遅れ娘を攫っているのはお江なのか、疱瘡婆なのか、はたまた別の何者かなのか?
 そして、女比べでお琴が不良旗本に目をつけられるのを防ぐため、周吉が取った手段とは…


 冷静に考えてみると、深川で起きる怪事件と犯人の疑いをかけられた妖、お店の危機とコンテスト、そしてそれらが絡み合って真相が描かれるという構造は、前作と本作でほとんど同じ。
 …なのですが、読んでみると印象がまるで異なるのはやはり面白い。インパクト満点なタイトルの印象も大きいのかあもしれませんが、まさかのお江の登場、周吉の○○と、キャッチーな要素を用意して読者の目を惹き付ける点は、やはりうまいと言うべきでしょう。

 二転三転する事件の真相も、単に妖のせいにせず、さりとて人間だけのせいにもせず――人間と妖が同じ世界で暮らす本作ならではのものとなっており、その重たさも含めて、評価できます。


 と、そんな評価できる点も多い反面、もったいない点も多いのが、残念なところではあります。
 本作のメインイベントともいえる女比べの描写が――特に前作の鰻大食い大会に比べると――薄く、あっさり終わってしまう点や、周吉の○○というおいしいネタがあまり活かされなかった点、そして何よりも、真犯人の伏線が十分でない点…

 作品を構成する要素のそれぞれがあっさり目で描かれ、繋がって活きてこない点が、実にもったいない。
 個々の要素が魅力的であるだけに――あるいはそれだからなのかもしれませんが――何とも歯がゆいのであります。

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もののけ本所深川事件帖 オサキ婚活する (宝島社文庫)


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2011.08.14

「信長のシェフ」第1巻

 戦国時代で目覚めた青年ケン。記憶を失っていた彼に残っていたのは、卓越した現代の料理のテクニックだった。その評判を聞きつけた信長に半ば強引に召し出され、仕えることになったケンは、その料理の腕前を武器に、戦国の世を生き抜くことに…

 タイトルの時点で「これは!?」と気になっていた「信長のシェフ」第1巻であります。

 料理漫画・グルメ漫画というのは、これはもう漫画の定番の一つ、漫画雑誌にはかなりの確率で掲載されているジャンルであります。
 そして時代漫画で料理漫画というのも、数はさほどではないものの、確かに存在しているのですが…しかし、本作のような作品は珍しいでしょう。
 何しろ主人公は(おそらく)現代の料理人。それが、戦国時代にタイムスリップし、織田信長をはじめとする当代の有名人たちと関わっていくことになるのですから…

 間者と間違われ、仲間(つまり、少なくとも一人は、彼と同時代人がタイムスリップしてきたということになります)を失いながら一人生き延びた青年・ケン。
 ほとんどの記憶を失っていたケンは、刀鍛冶の夏に拾われ、彼女の元に居候するうち、名前の他にほぼ唯一残っていた料理の知識と腕前で、周囲の評判となるのですが、その噂を聞きつけた信長に召し出され、命がけの料理対決の末に、信長の料理番に任命されます。

 以後、ケンは宣教師フロイスの接待など、信長の難題を、自らの料理の腕と機転で切り抜けていく…というのが、本作の基本設定であります。

 主人公が、料理の腕で危機を乗り越えたり、人の心を開くというのは、これはこのジャンルの定番中の定番であり、その点は本作もそこから外れるものではありません。
 また、過去の時代にタイムスリップした現代人が、その知識を活かして活躍というのも、それこそ大ヒットしたばかりの「JIN 仁」のように定番パターンでしょう。
(さらに言えば、戦国時代にタイムスリップした現代人が身を寄せるのは、かなりの確率で信長なのですが、それはさておき

 しかし、定番の素材、定番の味付けであっても、その組み合わせによって新たな料理が生まれるように、本作は、料理もの+戦国もの+タイムスリップものという組み合わせによって、独自の存在感を出していると言えるでしょう。

 その良い例が、信長の御前での宣教師フロイスの接待ですが…展開的には料理ものの定番でありつつも、そこにこの時代の、この場面ならではの意味を与えているあたり、なかなかに面白いのです。

 物語はまだ始まったばかりということで、描かれる歴史上の事件もまだ少なく、また、ケンが料理の腕を振るう場面もさほど多くはないのですが、これからの題材には事欠かないはず。
 文字通り、料理の仕方によっては相当にユニークな作品になるのでは…と期待しているところです。


 ただ一つ気になるのは、ケンが記憶喪失という設定のため、能力の限界がまだ見えない(万能に見えてしまう)ことと、ライバル不在なことですが…
 この辺りも含めて、楽しみに待つことにしましょう。

「信長のシェフ」第1巻(梶川卓郎&西村ミツル 芳文社コミックス) Amazon
信長のシェフ 1 (芳文社コミックス)

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2011.08.13

「鬼の作左」第2巻 鬼の豪傑譚、これにて打ち止め…

 西条真二が本多作左衛門重次と三河武士の暴れっぷりを描いた「鬼の作左」、第2巻にしてまことに残念なことに最終巻であります。
 徳川家康の麾下にその人ありと知られる隻眼の豪傑・本多作左衛門重次――その恐ろしげな風貌と果断な性格から、人呼んで「鬼の作左」。
 家康がまだ人質だった時分から彼に仕え、主のためならば、自分の命も鴻毛より軽し、「ハハハハハ」と笑い声を上げながら死地に飛び込んでいく豪傑であります。

 しかし単なる武力バカではなく、行政官としても有能で…というのが第1巻の終盤からの展開で、続く第2巻では、奉行としても豪腕を振るう作左の前に、少年・大久保彦左衛門が登場するエピソードから始まります。

 大久保彦左衛門といえば、頑固爺の印象が強い…という方がほとんどだと思いますが、本作では、頑固は頑固ですが、爺どころか子供というのが実に面白い。
(更に、武断派というイメージの強い彦左衛門が、ここでは才気走ったキャラクターなのもまた工夫と言うべきでしょうか)
 そして、その彦左の初陣の描写に重ねて、作左が自分たちの戦う理由、戦わなければならない理由を語るシーンは、作左という人物のみならず、本作の世界観を良く示すものとして印象に残ります。

 そしてこの物語も、この辺りから、作左だけではなく、家康に仕える他の武将たちにもスポットが当たるようになります。
 そして、そんな彼らが挑む相手が、第1巻にも登場した織田信長、そして新たに登場する武田信玄なのですが…予想通りと言うべきか何と言うか、この信玄がまた凄まじい。

 立ち上がれば頭が天井に擦れるほどの巨人にして、人の体が壊れる様を見、聴くのが大好きという、一種の殺人狂・戦争マニア。
 その狂いっぷりに、部下たちも恐れおののき、敵となる家康たちに同情するほどなのですから、尋常ではありません。
 そして、この武田信玄と、家康が正面から激突し、そして家康が惨敗した、三方原の戦が、本作のクライマックスとなります。

 と、この前に信長が浅井長政の裏切りに遭い、命からがら生き延びた金ヶ崎の戦でも、徳川軍はむしろ水を得た魚のような暴れっぷりを見せるのが実に楽しいのですが、結構さらりと描かれてしまったのが惜しい。

 閑話休題、歴史ものでは、黙っていれば素通りする武田軍に対し、圧倒的に劣勢だった徳川軍が浜松城から打って出たのを、様々に理由付けしておりますが、本作では、実に「らしい」ものとして描かれているのが面白い。

 もちろん、そうは言っても大苦戦は大苦戦、徳川の猛将たちも傷つき、斃れていくのですが(その中で、生涯無傷のあの人だけは活き活きと暴れているのはちょっと愉快)…
 そこで作左が三河武士としての意地を見せ、文字通り信玄に一矢報いたところで、本作は終了となります。

 これはこれで盛り上がる結末ではありますが(その一撃が信玄に与えた影響も含めて)、もちろん作左の人生はこの後も続きます。
 有名な「お仙泣かすな馬肥やせ」の手紙のエピソードがありますし(というよりむしろ、本作で作左の妻がどのように描かれるはずだったのか気になるのですが)、本作でも冒頭で触れられたババァ焼殺未遂事件など、題材には事欠かない人物であるだけに、ここでの完結は、残念でなりません。

 想像以上に、遙かに作者の作風が戦国ものに似合う(何よりも「ハハハハハ」という哄笑のインパクトたるや)ことがわかったのは収穫ではありますが――
 この収穫がこの先、更なる実を結ぶことを期待しましょう。西条流豪傑譚の再来を…

「鬼の作左」第2巻(西条真二 メディアファクトリーMFコミックスフラッパーシリーズ) Amazon


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2011.08.12

「花かんざし捕物帖」第3巻・第4巻 再会の姫君お竜

 自分のアンテナの低さには、何度も恥ずかしくも情けない思いをしてきたのですが、いやはや、今回ばかりは本当に情けない思いをいたしました。
 単行本は2巻までで未完に終わったと思いこんでいた島崎譲の「花かんざし捕物帖」が、電子書籍で全6巻完結していたのですから…

 これまで第2巻までこのブログでも紹介してきたため、ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、本作は山田風太郎の「おんな牢秘抄」を漫画化したものであります。
 冒頭に述べたとおり、書籍としては第2巻まで刊行されたものの、それ以降の刊行はなく、連載されていたwebコミックサイト「Mychao」が終了してしまったこともあり、全く申し訳ないことに、勝手に未完に終わってしまったものと思いこんでいたのですが――

 いやはや、きっちりと完結した上、電子書籍サイト「eBookJapan」で電子書籍化されて販売されていたのですから、自分の無知を恥じるしかありません。

 というわけで、早速電子書籍版を購入して、手持ちのandroidタブレットで読んでみたのですが、思っていた以上に読みやすい。
 画面の大きなタブレット端末ということもあるかもしれませんが、画像の質やページめくりのスピード等、まず書籍で読むのと遜色ないように感じます。
(一冊750円というのはちと高いように感じましたが、オールカラーなのでこれは仕方ありますまい)


 さて、電子書籍の話はこれくらいにして、作品の内容の方に触れましょう。

 将軍の命を狙ったという触れ込みの謎の娘・姫君お竜、その実、大岡越前守の娘・霞が、おんな牢に潜入し、殺人の罪で死罪を待つばかりの不幸な女性たちを救う本作。
 あらすじだけ見れば、何とも荒唐無稽に見えるかもしれませんが、しかし原作はいわずとしてた山田風太郎、そして描くは時代漫画の名手・島田譲…というわけで、華やかな中にも、一本筋の通った快作であります。

 これまで、曲芸師のお玉の嫌疑を晴らし、御家人の妻・お路が陥った罠の真相を追ってきたお竜/霞ですが、この第3巻・第4巻で描かれるのは、お路の事件の解決編と、第3の女・塗師屋の娘・お関と、第4の女・元妾のお半の事件であります。

 丑の刻参りがきっかけで、玄々教なる宗門に魅入られ、奇怪な予言の果てに全てを失った末に玄々教の教祖を殺したお関。
 二十年ぶりに出会ったかつての恋人が、自分と娘を狙っていることを知り、百足あるきなる奇怪な毒で殺したというお半。

 如何に奇怪な事件といえども、彼女たちの罪は疑いない…と見えた事件の中に隠された真実を見出し、彼女たちを罪に陥れた真の下手人の姿を浮かび上がらせる――
 そう、本作の骨格は確固たるミステリであり、そしてそれと同時に、それを絢爛にデコレートして、痛快華麗なヒロインの活劇として肉付けした作品であります。

 そしてその骨格の部分と、肉付けの部分が、見事に噛み合っているのが、この漫画版
「おんな牢秘抄」、「花かんざし捕物帖」であるという印象は、この中盤のエピソードを読んでも変わることはありません。

 もちろん、それぞれの事件の骨格は原作に忠実でありますが、しかし細部の演出は原作と異なるのも本作の魅力。
 ことに、ヒロイン・霞の時に天真爛漫、時に大胆不敵な言動を、より強調する描写が多いのが何とも楽しく――その一方で、本物の姫君お竜との心の交流もきっちり描かれているのが、なかなかに良いのです。
(ただ、原作でお半の登場時に描かれた結構意外なエピソードがオミットされているのはちと惜しい)


 さて、謎は解け、嫌疑は解けても、しかしどこか釈然としないものが残る個々の事件。果たしてその陰に何があるのか――
 残り2巻も早々に楽しませていただくつもりであります。

「花かんざし捕物帖」第3巻・第4巻(島崎譲 eBookJapan) 第3巻 /第4巻


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2011.08.11

「信長の暗号」上巻 スケールはさらにアップするも…

 信長より安土城を描いた屏風絵を託されたヴァリニャーノ。そこには日本と南蛮を同時に揺るがす秘密が隠されているという。時は流れ、未だ解けぬ謎の解明を命じられたヴァリニャーノ二世は、日本に向かうが将軍秀忠に捕らえられてしまう。牢に繋がれた彼がそこで出会ったのは、暗号師・蒼海だった…

 「秀吉の暗号 太閤の復活祭」「軍師の秘密」に続く、中見利男の蒼海・友海シリーズの第三弾の上巻であります。

 かつて織田信長が宣教師ヴァリニャーノに託し、時の教皇グレゴリウス13世に献上されたとされるも、今なおその消息は知れない安土城屏風。
 そこには、信長からバチカンに対して叩き付けられた、日本と南蛮を同時に揺るがす大秘密が隠されていた! という設定のベースに展開される、中見節横溢の時代伝奇活劇であります。

 代々の教皇の間で申し送り事項とされているこの謎を解き明かすため、伊達政宗の元に遣わされたヴァリニャーノ二世。
 しかし部下の造反にあって遭難した末に、こともあろうに今まさに切支丹弾圧を進めている二代将軍秀忠に捕らえられた彼は、そこで暗号師・蒼海と出会います。

 これまで二度にわたって巨大な謎を解き明かし、徳川家を救った蒼海も、父・家康の影響力を除かんとする秀忠の手により濡れ衣を着せられ、その命は風前の灯。
 何とか力を合わせて暗号を解き明かして牢から脱出しようとする蒼海とヴァリニャーノですが、その暗号とは何と…

 というわけで、タイトル通り、本作で描かれるのは織田信長が遺したという暗号。
 それが解き明かされた暁には、日本はおろか、南蛮までも震撼する、いわば信長によるバチカンへの挑戦状とも言うべきものであり、物語のスケール的には、前二作以上であります。

 その秘密に挑むのは、蒼海や友海、ヴァリニャーノ組に加え、蒼海の解いた内容を元に秘密の内容を抑えんとする秀忠一派、ヴァリニャーノの造反した部下によりその秘密を知った伊達政宗一派、そして蒼海の宿敵である暗号神・恵知座と異端モーセイスト派…
 複数の勢力が入り乱れて一つの秘密を追うというのは、これは「秀吉の暗号」と同じパターン(同作から久しぶりに顔を見せるキャラクターも何人かおります)ですが、しかしこれは時代伝奇小説の王道。複数のルートから秘密に迫る者たちが、やがて一つところに集まり、激突するというのは、やはり盛り上がります。


 …と言いつつも、前作、前々作に比べると、少なくともこの上巻の時点では、残念な部分もあります。
 その最たるものは、あまりにも暗号の解き方が良く言えば豪快、悪く言えば杜撰なことで――これが許されたら、どんな読み方でもできる、という手法で暗号を読み解くのは、ご都合主義の誹りは免れますまい。
(そもそも、占いや呪いで謎を解くのは、死人を復活させる以上に禁じ手のような)

 また、今回の物語の中心となる――と思われる――秘密自体が、実は過去の作品で触れられたものであり、二番煎じ的に感じられてしまうのも困りものではあります。
(もっとも、こちらは「この程度の扱いでいいの?」と思っていたものなので、再登場はむしろ歓迎なのですが…)


 このように、現時点では困った部分も色々とあるのですが、しかし最後の最後まで油断ができないのが中見作品。
 上巻の時点で明かされている秘密が、これで全てとは思えぬ以上、ここで結論を下すのは早計に過ぎましょう。いよいよ争奪戦が本格化する下巻を早く読まねばなりますまい。

「信長の暗号」上巻(中身利男 ハルキ文庫) Amazon
信長の暗号〈上〉 (ハルキ文庫)


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2011.08.10

「快傑ライオン丸」 第41話「大魔王ゴースン あの胸を狙え!」

 ついにゴースンこと豪山と対峙した桃雲斎。豪山は兄を日本征服にと誘うが、桃雲斎はこれを拒み、二人は決裂。城主と桃雲斎は城を逃れる。桃雲斎の後を追う獅子丸は、行く手を塞ぐガライタチを撃破する。そして再び対決するゴースンと桃雲斎。桃雲斎は巨大化した蝙蝠でゴースンを狙うが、ゴースンサンダーで敗れ去る。獅子丸は死の間際の桃雲斎からゴースンの胸を狙えと告げられ、錠之介は象牙がゴースンの弱点と知るのだった。

 ゴースンの正体を巡る骨肉の因縁を描くエピソードもいよいよ後編。
 兄・桃雲斎を抹殺するため、巨大化して自ら鷹取城を襲撃するゴースン。一方獅子丸は、怪人の毒にやられて意識不明…は、あっさり復活したものの、第二の怪人・ガライタチの毒ガスに石垣から転落、沙織と小助も捕らえられてしまうのでした。

 さて、ゴースンの方は、桃雲斎の停戦の呼びかけに応え、人間体=豪山の姿になって、ついに兄弟は二人対峙することとなります。
 さて、豪山は北条も上杉も織田もない、日本を征服するのはこの豪山と豪語(第一話での時点では今川家は存在していたようですが、桶狭間でもあったのでしょうか)し、兄をその片腕にと誘います。

 驚いたことに、ここに至るまで豪山の人間性を期待していたらしい桃雲斎ですが、これはさすがに無茶というもの。
 ことここに至っては、二人の間も決裂。というか、自分で目を潰しておいて、仲直りしようという豪山も凄い根性ですが…

 さて、ガライタチに捕らえられた沙織と小助は、ガライタチのボウガンの的にされてしまうのですが…そこに割って入ったのはタイガージョー!(ここで意味ありげにドクロ忍者が何度も映されるので、てっきり獅子丸が紛れ込んでるものと完全に騙されました…)
 ここで単純に裏切ったわけではなく、何を遊んでいる、城主を追え、こいつらの始末は俺がつけるとガライタチに言い放つ辺りが、タイガージョーらしくて良いのです。

 さて、ついに炎に包まれた鷹取城を脱出し、山寺に逃れた城主と桃雲斎。それを追う獅子丸の前に、再びガライタチが現れます。
 変身するも、再び毒ガスに苦しめられるライオン丸。しかし体をくるくると回転させて、ガスを吹き戻し、逆にガライタチが苦しむ羽目に…目の前で回ってるんだからどうにかしなさいよガライタチ。
 結局、苦し紛れにジャンプして空中で斬られるという毎度の負けパターンで敗れ去るのでした。

 そして、蝙蝠が飛んでいく先を追って桃雲斎の元にたどり着いた獅子丸と錠之介(そして蝙蝠に追っ払われる錠之介)。
 二人の見守る前で、再び対峙したゴースンと桃雲斎、最後の戦いが始まります。

 巨大化したゴースンに対し、自分の蝙蝠を巨大化させて立ち向かう桃雲斎。蝙蝠の胸には、なにやら白い槍のようなものが…
 しかし蝙蝠は蝙蝠、なかなか手を出しあぐねているところにゴースンサンダーを受けて、桃雲斎は倒されるのでした。

 そして、ここで運命のいたずらというべきでしょうか、ゴースンの弱点は、二つに分かれて獅子丸と錠之介に伝わることになります。
 すなわち、地に落ちた蝙蝠の亡骸から、象牙の穂先を見つけた錠之介は、ゴースンの身を破るのは象牙のみであると知り――
 そして桃雲斎を看取った獅子丸は、その最期の言葉から、ゴースンの弱点は巨大化した時の胸の紋様であると聞かされるのでした。

 そのどちらか一方では足りないことは、直後、ゴースンに挑んだライオン丸が、あっさりゴースンサンダーに敗れたことからもわかります。
 さすがに激闘に疲れたか、止めを刺さずに去っていくゴースンを、ただ見やるしかない獅子丸なのでした。


 と、色々な意味で実に豪華、盛りだくさんのこの前後編でしたが、終わってみれば、桃雲斎が勿体ぶったおかげで被害が増えただけな印象になってしまったのちと残念(鷹取城は再起不能では…)。
 しかし、遂に明かされたゴースンの弱点が、ライバルである二人に半分ずつ伝わるという仕掛けは、実にうまいと、感心するほかありませんね


今回のゴースン怪人
ガライタチ

 背中に背負った紅白のガス袋から毒ガスを噴き出す怪人。その他、刀やボウガンを操る。
 ゴースンに従い鷹取城を襲撃、一度は毒ガスで獅子丸を撃退するが、再戦時には、体を回転させたライオン丸にガスを吹き戻され、あっさりと斬られた。


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2011.08.09

「古道具屋 皆塵堂」 ちょっと不思議、いやかなり怖い古道具奇譚

 実家の道具屋を継ぐため、おんぼろ道具屋・皆塵堂で修行することとなった太一郎。しかし幽霊を見ることができる太一郎にとっては、曰く付きの品ばかり集まる皆塵堂での日々は恐ろしいことばかり。次々と起こる憑き物絡みの事件に翻弄されるうち、太一郎は意外な真実を知ることに…

 「まじめな」時代小説が中高年齢層向けに山のように刊行される一方で、若い読者層向けに妖怪・あやかしを題材とした時代小説も決して少なくない点数が刊行されていることは、このブログをご覧の方はご存じでしょう。
 本作も言ってみればその流れに乗った作品。漫画家のトミイマサコが表紙絵を担当したソフトカバー単行本という体裁も、若い年齢層を意識していることが窺えます。

 さて、そんな本作ですが、内容の方はかなりしっかりとした怪談もの、と言っていいでしょう。

 本作の作者である輪渡颯介には、怪談の背後に隠された謎を解き明かす「浪人左門あやかし指南」シリーズがあります。
 あちらは、怪談を一種の情報源として使った――言ってみれば「手段」として使った作品であるのに対して、本作は真っ向から種も仕掛けもない怪異を描き出した、怪を談ずることを目的とした作品集という印象があります。

 古道具屋や骨董品屋を舞台に、曰く付きの品と登場人物が触れあい、ちょっと不思議でイイ話が紡ぎ出されるという作品は、小説のみならず、漫画などでも見かけるスタイルであります。
 本作も形の上はその系譜にある作品なのですが――
 ちょっと不思議どころではなく、かなり怖い。扱われる事件もかなり血腥いですが、描かれる怪異の内容とその描写も、なかなかに怖いのであります。

 元々、「浪人左門…」の方で描かれる怪談自体(作中の挿話という扱いとはいえ)かなり完成度が高いという印象があります。
 直接的な描写は少なく、時に曖昧模糊とした謎の陰に隠れながらも、それがかえってじわじわと胸に迫るような怖さを生み出す――
 そんな輪渡怪談の魅力は、本作でも健在、というより、正真正銘の怪談となった本作において、いよいよ全開となった、という印象なのです。


 もっとも、主人公の物語も描かなければいけないためか、その辺りの怖さは物語が進むにつれて徐々に薄れては来るのですが…
(それでも一番イイ話である最終話も十分怖いのが、なんというか作者らしい)

 作中での主人公の幽霊が見えるという設定の扱いがどこか中途半端で、それが終盤のカタルシスにうまく繋がってこない点も含めて、その辺りはいささか残念な部分ではあります。

 とはいえ、一見ありがちなスタイルの作品に見せつつも、その実、しっかり作者の持ち味――怖さだけでなく、どこか抜けた登場人物たちのやりとりの楽しさなど――を見せてくれた本作は、輪渡ファン、怪談ファンにとっては、やはり嬉しい作品なのであります。

「古道具屋 皆塵堂」(輪渡颯介 講談社) Amazon
古道具屋 皆塵堂


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2011.08.08

「青竜の神話」 時代を超えた時代伝奇SF

 天涯孤独の一匹狼・草壁豹馬は、額に竜の紋章を持つ赤子を連れた少女・タエと、周囲から鬼子と忌み嫌われる少年・由羅と出会う。タエの村こそは、1999年、異星人の襲来により滅んだ人類の生き残りが、遙か過去に時間跳躍して残した子孫たちだった。そして今、異星人と手を組んだ岩倉具視が陰謀を…

 唐突ですが懐かしの名作時代伝奇SF漫画を。
 最近では時代ものメインの島崎譲の代表作といえば、普通の方は「THE STAR」か「覇王伝説 驍」辺りになるのかと思いますが、私にとってはやはりこの「青竜の神話」と他なりません。

 舞台は幕末も近い19世紀後半、一匹狼の風来坊・草壁豹馬を中心に、超能力を持つことから周囲に忌み嫌われてきた少年・由羅や、ある使命を秘めて生き続ける忍者の一族、果ては倒幕の野望に燃える岩倉具視や、実は生きていた高野長英などが登場する伝奇活劇なのですが――

 しかし本作の語り起こしは、実は1999年。
 異星人の襲来により人類は壊滅、ただ一人残った超能力者が、時間跳躍で遙か過去に飛び、異星人に対抗する能力を持つ青竜の戦士を生み出さんとする…という「青竜伝説」なる秘伝が、本作の背景として存在するのであります。

 …どこかで見たような設定ではありますが、しかしあちらは江戸時代前期、こちらは幕末。動乱の時代にしてより現代に近い時代に舞台を設定したことは、本作独自の魅力と言うべきでしょう。
(開幕5ページ目で、いきなり「俺はタイム・トリッパーだ!!」と叫ぶ超能力者には、何度読んでもひっくり返るのですが…)

 そしてまた、本作で活躍するキャラクター一人一人がまた個性的かつ実に生命力に満ちあふれた連中でよろしい。
 そしてそのキャラクターたちが、単純に善悪に分かれることなく――実に人間らしい感情をむき出しにして――出会い、戦い、愛し合い、物語を紡ぎ上げていく様もまた魅力的なのです。

 特に、この人間関係の絡み合いが頂点に達し、決戦の果てに新たなる戦いの運命に雪崩れ込んでいく終盤は、今読み直しても圧巻と言うべきでありますが――
 惜しむらくは、その盛り上がった場面で本作は終わり(打ち切りなのですが、しかし本当に盛り上がったところで終わるんだこれが!)、続編も数話で終了の幻の作品と化していることなのですが。


 私の手元にある単行本は、1998年(運命の年の前年!)に刊行された上下巻本ですが、そこで作者もいつか続編を描きたい、と表明されてはいるのですが、それから早十年以上…
 さすがにもう望み薄だろう、と思いつつも、こうして偶に手に取って読み直す――そしてまたテンションが上がる――ことになる、私にとっては時代を超えた作品なのであります。


「青竜の神話」(島崎譲 講談社KCデラックス全2巻ほか) 第1巻 Amazon/第2巻 Amazon

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2011.08.07

「サムライ・ラガッツィ 戦国少年西方見聞録」第3巻 二つの主従、二人の男!

 天正遣欧少年使節に同行したもう一人の日本人少年・晴信と、彼に仕える忍び・桃十郎の冒険行「サムライ・ラガッツィ 戦国少年西方見聞録」の第3巻であります。
 澳門に滞在する一行を襲った突然の伝染病。それを唯一癒す力を持つという仙人を求め、晴信たちは大陸の奥地に向かうことになるのですが…

 辛うじて伝染病に罹患しないで済んだのは晴信と桃十郎、中浦ジュリアンと現地の少女・江、そしてマテオ・リッチとエステベス――
 彼ら六人は、藁をも掴む思いで、伝説の仙人を求めて澳門を発つのですが、もちろん(?)その旅路が平穏無事なわけがない。

 出発早々、彼らの前に立ち塞がったのは、かの張飛翼徳の子孫を自称する豪傑・剛侠の張翔とその配下たち。
 晴信たちを倭寇と誤解した張翔とその配下を向こうに回して、早速の大活劇と相成るわけですが…

 この場面の描写・演出が実に面白い。
 敵の大群に対して二手に分かれた晴信・桃十郎と、リッチ・エステベスの、二つの主従――それぞれの主従がそれぞれ張翔に迫る様が、ページを上下に割った形で、同時進行で描かれるのですから!

 文章で書くと普通に見えますが、同じタイミングで、別々のアクションでもって突き進む二組を描くというのは、これはもしかすると、漫画でなければできないような手法。
 よほど画面構成やアクション設計を考えておかないと、違和感ばかりが目立つ結果になりかねませんが、これが見事に成功しております。

 しかも、そこにそれぞれの主従の個性が出るというのもまたうまい。
 先頭に立って真っ先に敵陣に突っ込んでいく晴信と、それを背後からフォローする桃十郎。主を守りつつ、敵を確実に倒していくエステベスと、後方から的確に指示を下すリッチ…
 派手なアクションの中でも、それぞれのキャラクター、二組の主従の思想の違いを見せてくれるのには、感心させられます。

 尤も、この場面の後、アクシデントで一行は二手に分かれてしまうため、それぞれの主従の直接対比を見ることができるのがここだけなのは少々残念ですが…


 しかし、個人的に気に入っているのは、むしろここからの展開であります。
 なりゆきから張翔を仲間に加え、明国奥地に向かうこととなった晴信と桃十郎ですが、目の前で苦しんでいる者を見捨てられない晴信が助けたのが、東林党の人間であったことから、事態はややこしい方向に向かいます。

 当時の明国の改革勢力とも言える東林党と、その中心人物である顧憲成がここで登場するという意外な取り合わせにも驚かされますが、顧憲成を狙う刺客の罠に対して、晴信と桃十郎が立ち向かう様がたまらない。

 顧憲成のみならず、晴信たちもろとも吹き飛ばさんとする爆弾使いの刺客・阿閻。
 憲成の身に仕掛けられた時限爆弾を解体せんとする晴信は、桃十郎に背中を預けて、それを妨害せんとする阿閻の相手を任せるのですが――
 男が男に背中を預ける。その意味するところを、ここでくどくどと述べるのも野暮というものでしょう。
 しかし、人生に不器用という点では似たもの同士の二人が、主従ではなく、むしろ対等な相棒として支え合う姿に、熱くなるなという方が無理というものであります。

 この後も、爆弾解除に挑む晴信と、阿閻を迎え撃つ桃十郎の、静と動、二つの戦いを平行して描く様がまた見事で…

 正直なところ、今回のエピソードはちょっと長すぎるのではないか、という印象もありますが、しかしここまでのものを見せてもらったら、もう黙るしかありません。
 歴史もの時代ものとして、アクション活劇として、そして何よりも燃えるバディものとして――
 加速度をつけて面白くなる本作から目が離せないのであります。

「サムライ・ラガッツィ 戦国少年西方見聞録」第3巻(金田達也 講談社ライバルKC) Amazon
サムライ・ラガッツィ 戦国少年西方見聞録(3) (ライバルコミックス)


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2011.08.06

「楊令伝 一 玄旗の章」とある水滸伝マニアの想い

 この6月から北方謙三の「水滸伝」の続編「楊令伝」文庫版が刊行開始となりました。
 実は私はこの「楊令伝」は、雑誌で飛び飛びに追いつつも、通してきちんと読むのは文庫化されてから、と決めていたのですが、いよいよこれでこの大作の詳細に触れることができることとなります。

 と、「楊令伝」の第1巻「玄旗の章」について触れる前に、一水滸伝マニアとして、この「楊令伝」、いや北方水滸伝をどのように私が見てきたか、語らせていただきたいと思います。

 今では日本で書かれた「水滸伝」の代表格のような扱いにすら感じられる北方水滸伝ですが、原典ファンの間には、強いアレルギーを持つ方も少なくないのはご存じでしょうか。

 私はそこまで極端ではなく、むしろ、原典の持つある側面、ある可能性を極限まで広げて描いてみせたものとして、大いに評価しております。
 しかし、あれが「水滸伝」と思われてもちょっと困る、何よりも、好漢がある意味真面目すぎるのはちょっと…というのも、正直な気持ちではあります。
(一番困るのは、ネットで水滸伝語ってる方が、原典と北方版、どっちのことなのか一目でわからないことなのですが…とこれは余談)

 さて、その北方水滸伝の続編たる「楊令伝」に対しては、さらに複雑な気持ちがありました。

 もちろん、あの結末から、どのような形で物語が続いていくのか、生き延びた好漢たちは、どのようにその後の生を戦っていくのか――これは大いに楽しみなところであります。
 しかし、前作には原典という一応の箍があったのに対し、それがほぼなくなった本作が果たして「水滸伝」と言えるのか、そして何よりも作者の「オレ好漢」の代表格である楊令が主人公というのが…

 作品そのものが完結して、さらに文庫化されるまで、手をつけるのを待ってきたというのには、こういう気持ちがあります。


 さて、自分語りはここまでにして、「楊令伝」の開幕であります。
 「水滸伝」のラストで宋江は死に、梁山泊は壊滅――完敗とも言える結末を迎えてから三年。宋国はいよいよ腐敗が進み、そして北の国境では遼と金の戦いが本格化する中、梁山泊の残党たちがそれぞれの戦いを続ける姿から、物語は始まります。

 呼延灼が、史進が、張清が軍を率い、公孫勝が致死軍を動かす。燕青は塩の道を継ぎ、李俊は南に新天地を求め、武松は放浪を続ける。
 呉用が、宣賛が、戴宗が、張横が、顧大嫂が孫二娘が扈三娘が…苛烈な残党狩りを逃れながらも、それぞれに生き、それぞれに戦いを続けるのですが――

 しかし、個々の力は戻りつつあっても、それだけでは足りない。「替天行道」の志を具現化し、新たな国を創り出すために必要な存在、全ての力をまとめる頭領が。

 この第1巻では、梁山泊の残党たちの再起に向けた活動とともに、唯一、宋江亡き後の頭領となる可能性のある者である楊令を追う彼らの姿が描かれることとなります。


 北方「水滸伝」は、一言で表すならば、「志」の物語であったと感じます。
 古い国を打倒し、新しい国を創り出す――社会化された人間が持ち得る最大の志を持った者たちが、生き、死んでいく…そんな物語であったと、今更ながらに感じるのです。

 しかし、志を持った者が死んだとき、その志はどうなるのか。あるいは、志を果たせなかった者は、その後どうなるのか…
 その問いかけは、もしかすると、如何に志を果たすべきか、ということよりも、遙かに魅力的であり、かつ意味のあるものなのではないかと、私はこの第1巻を読んで、今更ながらに感じました。

 そしてそれは、「水滸伝」よりもある意味、この「楊令伝」の方が魅力的なのではないか――そう想いを抱いたのと同じ意味でもあります。
 その想いが果たして正しいものであるか否か、この物語をこれから読み進めることで確認するといたしましょう。

「楊令伝 一 玄旗の章」(北方謙三 集英社文庫) Amazon
楊令伝 1 玄旗の章 (集英社文庫)

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2011.08.05

「後巷説百物語」第1巻 江戸・明治・現代を貫く眼差し

 京極夏彦の「巷説百物語」「続巷説百物語」を完全漫画化した日高建男の漫画版「巷説百物語」、その続編である漫画版「後巷説百物語」の第1巻の登場であります。

 この漫画版の原作たる「後巷説百物語」は、京極夏彦の直木賞受賞作にして、「巷説百物語」シリーズ第3弾。
 しかし、シリーズものといいつつ、本作は正編・続編に対して、構造上の大きな違いがあることは、原作読者の方であれば良くご存じでしょう。

 本作の語り起こしは明治10年――既に徳川幕府が滅び、新しい生活に人々が馴染んできた時期に、四人の若者が、東京の外れに庵を結ぶ隠居老人を訪ねる場面からとなります。

 四人の若者は、奇怪な事件や伝説の真偽を巡り、若き日に百物語開版のために諸国で怪談奇談を収集したというその老人・一白翁の意見を求めて訪れるのですが――言うまでもなく、一白翁とは、前二作で目撃者的立ち位置にあった山岡百介のその後の姿。
 若者たちの求めに応じ、一白翁=百介が、若き日に出会った事件、御行の又市たちとともに関わった事件を語るというのが、この「後巷説百物語」の基本スタイルとなります。

 さて、この漫画版第1巻に収録されているのは、原作でも第1話の「赤えいの魚」を漫画化した「赤えいの背中」。
 恵比寿像の顔が赤くなる時、恐ろしい災厄が襲うという伝説の通り滅んだ島の真偽を巡って訪れた四人組に対して、一白翁がかつて訪れた、恵比寿像が赤くなったために滅んだ島の物語が語られることとなります。

 凶悪な盗賊の逃避行に巻き込まれ、海に放り込まれた若き日の百介。運良く岩礁に引っかかり、一命を取り留めた百介が辿り着いたのは、周囲からは魔所と恐れられる戎島――月に一度だけ、対岸からその姿を見ることが可能であり、そこには謎めいた御殿があるという、謎の島でありました。

 そこで御殿の主・島親の戎甲兵衛に歓待される百介ですが、彼は島の狂気の掟をすぐに知ることとなります。
 この島に存在する、あるいは漂着した者/物は全て甲兵衛の所有物であり、それをどう扱おうが甲兵衛の思いのまま(島に「歩いて」辿り着いた百介は、この掟の外の客人扱い)。
 そして島の住人たちも、その掟に全く疑いを持たず、奪われても殺されても、ただ無気力に甲兵衛に従うのみ――

 果たして何故このような島が生まれたのか、そしてこの島を変えることができるのか…というところで、又市一味の出番ということとなります。


 この「赤えいの背中」の原作「赤えいの魚」には、実はさらに原作もしくは原案が存在します。
 それが約10年前にWOWOWで放映されたドラマ「怪」の一エピソード「赤面ゑびす」なのですが、こちらは物語の大筋は変わらぬものの、明治時代の百介が語るという構造は取られていません。

 これはもちろん、「後巷説百物語」の構想がまとまる以前の作品ということはあるでしょうが、しかし、「赤えい」という妖怪の存在に目を向けると、そこに込められたある寓意が浮かび上がります。
 ここでいう赤えいとは、「絵本百物語」に登場する、海面に浮かび上がったその背中があまりに巨大なため、島と見間違えられたという巨大魚のこと。

 作中で一白翁は、自分たちの住む世界の掟に全く疑問を持つことなく、ただそれに従い生きてきた戎島の人々を、赤えいの背中に堆積した砂のようなものと語ります。
 しかしそこには同時に、徳川幕府が滅びるなど夢想だにしなかった、そして今は明治の御代を謳歌する、自分たち自身も同じ存在なのではないか――さらに言えば、その物語を読む我々もまた――という問いかけもまた、含まれるのです。


 そしてこれこそが――少なくともこのエピソードにおいて――明治の東京を語り起こしとした理由と言えるでしょう。
 優れた時代ものとは、その舞台となる時代を描くと同時に、その作り手・受け手の住む時代に通じるものを描き出すものですが、本作においては、そんな、江戸・明治、そして現代を貫く眼差しが存在しているのであります。

 このような物語が、今この時に漫画化され、新たな命を吹き込まれたことに、何らかの意味…というより因縁を感じてしまうのは、これは考えすぎかもしれませんが、それくらいの思いこみは勘弁していただきましょう。

 特に冒頭部分など、相変わらず原作の情報量の多さを真っ正直に再現しようとして漫画として読み辛い部分は存在しますが、しかし、本作が原作をきっちりと漫画化したものであることは、間違いないのですから…

「後巷説百物語」第1巻(日高建男&京極夏彦 リイド社SPコミックス) Amazon


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2011.08.04

「はなたちばな亭恋空事」 落語的世界という理想郷

 神田蝋燭町の蝋燭問屋・橘屋の離れで手習い小屋・たちばな堂を営むお久は、器量はすこぶる良いが自覚なしの変わり者。そんな彼女の所に幼なじみで橘屋の手代・金一が連れてきたのは、奇妙な柄の犬(?)クマだった。それ以来、橘屋の周囲では、おかしな出来事が次々と起こるようになって…

 このブログ的には「奥羽草紙」の作者である澤見彰が、角川書店の携帯小説サイト「小説屋sari-sari」で「はたちばな亭らぷそでぃ」の題で連載、単行本化された作品が、このたび「はなたちばな亭恋空事」と改題されて文庫化されました。

 携帯小説というと、身構える向きもあるかと思いますが、本作においては心配ご無用。かなりのスピードで読み進めることのできるテンポの良さは、なるほどという気もしますが、しかし内容の方もしっかりとした、もののけ時代コメディの快作であります。

 江戸の手習い小屋・たちばな堂を舞台に繰り広げられるコミカルな騒動を描いた本作の主人公は、たちばな堂で師匠を務めるお久と、そのお久の幼なじみで、たちばな堂の家主である橘屋の手代・金一。
 器量好しだがそれに無頓着で、生真面目で寺子屋一筋のお久と、そんなお久にぞっこんだけど素直になれない純情江戸っ子・金一と――そんな微笑ましい二人のあれやこれやが楽しくも暖かく描かれる…

 だけであったら、このブログが取り上げるわけはございません。
 この二人の間に挟まる犬(?)のクマが、本作のキモ、といいますか、本作をひっかき回すのであります。

 もこもこした毛の色は白いが、目の周りは黒、その黒が隈取りしたみたいだからクマ…と安直に名前をつけたのは金一。
 雪の日に凍えていたのを拾ったのはいいものの、店では飼えなくて彼がお久のところに持ち込んだことから、たちばな堂のマスコット的存在になるのですが、もちろん(?)これがただ者なわけはありません。

 クマがたちばな堂に来てからというもの、たちばな堂をはじめ、町のあちこちに白い狸の置物が出没するなど、小さな、しかしおかしな出来事が頻発。
 実はクマの正体は白犬ではなく白狸、しかも人語を解するどころか、人語を喋る化けタヌキなのでありました。

 そんなわけで、ただでさえ賑やかなたちばな堂と橘屋、お久と金一の周囲は、人とあやかし入り乱れて、ますます大騒ぎ、ということに相成ります。


 もちろん、こうした趣向の時代ものは、最近では珍しくありません。そんな中で本作が独自性を見せるのは、その文体…と全体のテンポであります。

 本作の地の文、そして登場人物の会話のノリは、落語のそれ。
(言われてみれば、「たちばな堂」が題名では「たちばな亭」となっている時点でそれとなく示されているのですね)

 作者がかなりの落語ファンということはもちろんあるのでしょう。
 しかしそれ以上に、ユーモラスで暖かく、そして時にナンセンスな本作の世界観は、そうしたものを本来的に全て含有し、許容する落語のそれにぴったりはまります。

 本作と落語のそんな親和性は、ラストに収められたエピソード「十五夜政談」に最もよく現れていると言えるでしょう。
 人間もタヌキも関係なく皆揃って――もちろんそれは両者が単純に等しいという意味ではないのですが――笑顔で月を見上げる、その姿は、落語的世界観ならではこその、一種の理想郷のようにすら感じられるのです。


 文庫版の解説によれば、本作はシリーズ化が決定したとのこと。まだまだ見たいもの、描かれるべきものは様々にある作品だけに、これは嬉しい知らせです。
 末永く、お久と金一とクマの賑やかな騒動を見ていきたいものであります。

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はなたちばな亭恋空事 (角川文庫)

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2011.08.03

「快傑ライオン丸」 第40話「大魔王ゴースン 再び怒る!」

 ついに兄・桃雲斎抹殺を決心したゴースンは、配下を差し向けると同時に自らも巨大神変化で出陣する。その頃鷹取城に到着した獅子丸は桃雲斎と対面、ゴースンの秘密を聞くが、桃雲斎はゴースンは兄である自分が討つと取り合わない。獅子丸は、一の砦を制圧したハリザンザに挑み、これを倒すが、毒に倒れてしまう。錠之介と桃雲斎により一命を取り留めた獅子丸だが、意識は戻らない。そんな中、ゴースンの巨体が鷹取城に迫る…!

 ついに判明したゴースンの正体を受けての今回と次回は、ストーリーの盛り上がりに相応しい豪華編であります。

 ついに兄・桃雲斎抹殺を決心したゴースンは、いきなり素顔を晒して登場(この辺、何の説明もないのでちょっと混乱しますが、しかしその顔は…!)。
 怪人ハリザンザとガライタチを派遣し、まずはハリザンザが鷹取城一の砦を落とします。
 それに大慌てした鷹取城主は、盲目の軍師であった桃雲斎に城奪還を厳命、同時に城の防護を固めさせます(この辺りの緊迫感が実によろしい)。
 そんな中、のこのことやって来てしまった獅子丸ですが、果心居士の名を出したのがよかったか、桃雲斎とついに対面。

 ゴースンは何者か、巨大神変化を破るにはどうすればよいか、尋ねますが、桃雲斎は、ゴースンは弟だとこれを拒否します。
 すわ、桃雲斎もゴースンに味方するのか、と思いきやこれは逆。血肉を分けた真の兄弟であるからこそ、弟は兄である自分が始末する、他人には指一本触れさせんと…それが桃雲斎の真意なのでした。

 その頃、一の砦には城の決死隊が突撃を仕掛け、大乱戦になりますが、しかしハリザンザの前には敵わず、潰走する羽目に。そこに駆けつけた獅子丸はライオン丸に変身、機敏な動きで次々と銃弾(針)を躱し、ハリザンザに肉薄します。
 空中からの乱射も、足に一発喰らっただけで凌いだライオン丸の前に、ハリザンザはAパートで爆殺! 自ら名乗った大幹部の地位が泣きます。

 しかし、実はハリザンザの針には猛毒が。相変わらずマイペースに戦場を往く錠之介/タイガージョー(何故か声がいつもと違う(涙))は、毒が回って倒れ伏した獅子丸を発見します。
 錠之介から、解毒方法を知っているのはゴースンの兄のみと聞いた獅子丸は、意識を失う寸前、桃雲斎のもとに連れて行ってくれるよう、錠之介に頼むのですが…

 このシーン、ダウンした獅子丸と、お前を死なせるわけにいかんと受け止めたタイガージョーと、二人のの顔が近すぎてちょっとドキドキ。
 前回といい、今放送されていたら「TIGER & LION」などと言われそうですよ…(何が)
 それはともかく、ちゃんと獅子丸を桃雲斎の元に連れて行った錠之介。桃雲斎が毒の治療をするのを見て、彼の頭の中で、桃雲斎=ゴースンの兄とようやく繋がります。
 そこで、桃雲斎からゴースン巨大神変化の秘密を聞き出そうとする錠之介。それは彼の力を、強さを求める心の発露ではありますが、しかしその危険性を誰よりも知るのは桃雲斎であります。

 二人が一触即発となった時、城に迫るゴースンの巨体! ゴースンサンダーで分厚い城壁も吹き飛ばし、ついに鷹取城と対峙します。
 それにしてもここでゴースンと同じサイズに作られた鷹取城が大迫力。今回は、ゴースンも気を遣ったのか(?)、天主に拳を叩き込んだラストシーン以外、城を直接攻撃しなかったのは残念ですが…

 と、それはさておき、いよいよ対峙した宿命の兄弟。しかし当の獅子丸は意識不明のまま…というところで次回に続きます。


 それにしても、大門の頼もしさはどこへやらの気が弱そうな鷹取城主を山口暁が、今回のキーパーソンたる桃雲斎を、経歴を見ただけで驚きのベテラン・佐々木孝丸が演じるだけでも凄いのですが、ゴースン人間体を演じるのは天津敏…本当に豪華すぎる!


今回のゴースン怪人
ハリザンザ

 体中が針に覆われたゴースン大幹部(本人談)。針を撃ち出すライフル銃と、銃身に取り付けられた細身の剣を武器とする。針で撃たれた者は、水を求めて狂い死ぬ。
 ゴースンの命で鷹取城一の砦を奪取、城の決死隊も蹴散らすが、ライオン丸には敵わずあっさり倒される。が、一発だけ当てた針で毒で獅子丸を昏睡状態に陥れた。


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2011.08.02

「鞍馬天狗」第1巻 復讐の天狗あらわる!

 「コミック乱ツインズ」誌で「幕末狂想曲RYOMA」を連載していた外薗昌也の次回作が、「鞍馬天狗」と聞いた時には、幕末ものつながりか、という程度の印象しかありませんでした。しかしそれが蓋を開けてみれば…と大いに驚かされた、外薗版「鞍馬天狗」第1巻であります。
(作品の重大なネタバレを含みますので、未読の方はご注意下さい)

 この「鞍馬天狗」のベースとなっているのは、原作でもまずは代表作、映像化や漫画化の際にも必ずといってよいほど取り上げられる「角兵衛獅子」であります。

 非道な親方の下で角兵衛獅子の芸人として働いていた杉作少年が、倉田典膳=鞍馬天狗と出会い、倒幕の志士の連判状を巡る、天狗と新選組の争奪戦に巻き込まれていく…
 「少年倶楽部」に連載された少年小説ではありますが、しかし今読んでみても十分面白い快作です。

 が…それを今回描くに、作者が用意したのは、あまりにも意外な天狗像=天狗の正体。 「天狗」を名乗る倉田典膳の真の名前――それは、死んだはずの芹沢鴨!! なのであります。

 なるほど、確かに芹沢鴨は水戸天狗党の出身。そして、「新選組」と戦うに、これ以上の理由がある人間はいないとも言えますが…それにしても、天狗史上に残る凄まじいアイディアと言ってよいでしょう。
 ちなみに本作で描かれる芹沢像は、巷間伝える酒乱粗暴な人物などではさらさらなく、折り目正しい美男子であり、お梅さんとも相思相愛の仲。
 それを土方の陰謀に陥れられ、お梅ともども惨殺された――はずが、彼は死の淵から甦り、人を捨てた天狗、鞍馬天狗と化したのであります。

 このような設定の鞍馬天狗ですから、当然新選組には恨み骨髄、かつての仲間に対する容赦なども全くなく、斬殺、いや惨殺を繰り返していくのですが…
 暗黒と化した彼の心に唯一届いた光、それが杉作少年というのがなかなか面白い。

 少年らしい真っ直ぐな正義感、たとえ己の命を賭しても理非を正そうとする心は、生というものに希望を無くした天狗にとって、眩しすぎるものでありつつも、しかし求めて止まぬもの。
 復讐のために戦っていた天狗の心にも、少しずつ変化が生じるやに見えるのですが…

 さて、本当に天狗の心に光は戻るのか。彼の復讐行は止むことがないのか。
 この第1巻の時点では、天狗のキャラクターを除けば比較的に原作に沿った展開を見せる本作ですが、掲載誌の方では驚くべき展開に突入し、全く先が読めない展開となっております。

 復讐鬼…いや復讐の天狗・倉田典膳、伝奇な「鞍馬天狗」…いやはや、とんでもない作品が登場したものです。

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2011.08.01

「ご落胤隠密金五郎 独眼竜の弁天」 時代伝奇・ミステリの快作!!

 今日も気楽な(?)隠密稼業の水野金五郎は、父の家老の依頼で、水野家から極秘文書を持って出奔した娘を追っていた。そんな中、金五郎の落語の兄弟子・珍朝が辰巳芸者を殺した疑いで捕らわれる。二つの事件を解決するため奔走する金五郎だが、それは次々と続く事件の幕開けににすぎなかった…

 側用人・水野忠成のご落胤・金五郎が、素人隠密として活躍する早見俊「ご落胤隠密金五郎」シリーズの第二弾であります。

 主人公の金五郎は、沼津藩主で側用人、果ては老中になろうという水野忠成が、若い頃に外で作った庶子。一度は水野家に引き取られたものの、捨て扶持の飼い殺しを嫌い、今は家を飛び出して気ままに市井に暮らしております。
 その金五郎の方便の道は、父の家老・土方縫殿助に依頼されての隠密稼業。暇にあかせて武術・忍術、ことごとく修め、何よりも冒険を愛する金五郎にとって、隠密は趣味と実益を兼ねた(?)仕事なのであります。

 そんな彼が今回依頼を受けたのは、沼津藩から極秘文書を奪って逃げたという娘からその文書を奪い返すこと――だったのですが、そこに彼の落語の兄弟子が、芸者殺しの濡れ衣を着せられるという事件が発生します。
 …実は習い事マニアの金五郎の目下の興味は落語。同じ長屋に住む落語家の下に強引に弟子入りして、下手の横好きの落語修行を続けているのであります。

 かくて二つの事件を同時に抱え込むこととなった金五郎ですが、しかし両者には意外な繋がりが。実は殺された辰巳芸者の元には…

 と、ここから事件は一気に転がっていくのですが、それがまた面白い。
 実は一連の事件の背後にあるのは、○○○○○の遺したという×××××で、しかもそれを狙うのは、□□家で――と、伝奇ファンであれば、大喜びの展開が待ち受けているのであります。

 月一冊以上という驚異的なペースで作品を量産している早見俊は、実は隠れ伝奇者…と評してもよいような作品をしばしば発表していることは、知っている人は知っているお話。
 ガチガチの伝奇ものではなくとも、物語の中心にある人物やアイテム、事件の設定に、伝奇テイストが漂っている――いわば伝奇風味を物語に振りかけるのが、実に巧みな作家なのであります。

 なるほど、それで今度はこういう展開を持ってきたか、とこちらは大喜びしてしまったのですが、しかし本作の真骨頂は、実はここからなのです。


 実に本作は、中盤以降、新事実が次々と明らかになり、どんでん返しが連続するめまぐるしい展開が用意されています。
 その内容については、ぜひ実際に読んで驚いて欲しいので詳しくは書けませんが、終盤に用意された、こちらの単純な脳味噌をあざ笑うかのような展開には、ただ「やられた!」と(笑顔で)叫ぶほかありません。

 そしてまた、探偵役である金五郎の存在が、ある意味事件の引き金であり、事件の重要な構成要素であるという構造も、心憎いの一言。
 ミステリとして見ても、本作は実に良くできた作品と言えます。

 そしてもちろん、本作はキャラクターものとして読んでも楽しい作品です。
 金五郎の無鉄砲とも野放図とも言える、しかしカラッと明るい人物造形をはじめとして、彼の周囲の人々――彼の師匠である落語一家の賑やかさに、一癖も二癖もある土方家老、金五郎と探索を共にする若きサムライカップル――のキャラクターもまた良いのであります。
 特に今回は、金五郎の忍術の師匠が初登場、これがまた実に(良い意味で)胡散臭い、良い味を出した人物で…


 伝奇ものとして、ミステリとして、キャラクターものとして…そのそれぞれで一定の水準をキープしながら、それらが驚くような形で絡み合い、さらに高いレベルの一つの物語として成立している本作。

 生意気を承知で言えば、これまでの早見作品は、多くの場合、これに近いスタイルを持ちつつも、個々の要素の融合に難があったように感じていたのですが、本作ではそれを見事にクリアしてみせたと言えます。

 これだけ多くの作品を生み出しながら、なおレベルアップを見せる作者に驚くと同時に、次なる金五郎の活躍が、否応なしに楽しみになってしまう――本作はそんな快作なのであります。

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ご落胤隠密金五郎 独眼竜の弁天 (徳間文庫)

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