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2011.08.18

「神幻暗夜行」(その一)

 右目に傷を持つ浪人・神子上幻也には、不思議な力があった。かつて一つ目の鬼に傷つけられたその目は、この世にあらざるものを視ることができるのだ。諸国を放浪する幻也は、行く先々で奇怪な事件に巻き込まれることに…

 最近ではすっかり荒々しい画風が板に付いた感のある長谷川哲也ですが、かつては、諸星大二郎に影響を受けたと思しき作品を発表していたことがありました。
 本作「神幻暗夜行」はそんな作品の一つ。鬼により傷つけられた目を持つ青年浪人・神子上幻也が諸国で出会う怪異を描いた連作時代伝奇ホラーの佳品であります。

 現在一番手に入れやすい電子書籍版は、単行本版に収録された全九話に、その後に発表された一話を追加した完全版(ただし、単行本版にあった作者による全話解説が収録されていないのが残念)ですが、今回はこの版を元に全話紹介いたしましょう。


「御霊村」
 あやかしに誘われて、呪われた村に迷い込んだ幻也が出会った怪異を描く第一話。

 この時期の作者の作品は、夜の闇の暗さが非常に印象的なのですが、呪いにより夜が明けなくなった村を舞台とする本作では、その魅力を存分に味わうことができます。

 お話的には、幻也の人物設定を描きつつ、閉鎖空間を舞台とすることで、次々と彼を襲う怪異を存分に描き、かつ彼のヒーロー的活躍もあって、第一話ながら完成度は高い一遍と言えましょう。

 ちなみに本作で村に呪いをかけるために使われたある民俗行事(で使われるアイテム)は、私の地元でもいまだに行われているので、個人的に印象が強い作品でもあります。


「蛇泉郷」
 夜刀神の伝説が残る山村で幻也が出会った、蛇神の子と呼ばれ忌まわれる少年を巡る奇譚。

 村の娘が、山からやって来た蛇神と交わり、その子を生むという伝説は、三輪山などでよく知られていますが、本作はそれを題材としつつも、真相に一ひねりも二ひねりも加えているのが面白い。

 そしてまた、それに説得力を与えているのが、皮膚が鱗状となった少年の顔や、クライマックスに現れるモノを描き出した作者の筆力にあることは間違いありません。

 一見、合理的に解釈されたかに見えた事件が…という結末も、個人的には好みであります。

 それにしても、少年を守るために(相手も本気で殺しにかかっているとはいえ)容赦なく村人を切り捨てる幻也は、冷静に考えると凄いことをやっていますが、少年にかつての自分を投影しているということで。


「抜鬼」
 殺人狂の絵師の怨念が籠もった魔物の絵と幻也との死闘を描く、アクション主体の一編ですが、同時にシリーズ中でもっともスプラッター色の強いエピソードでもあります。

 事件の発端となった絵師の凶行の描写が、分量的にはわずかなのですが、とにかく強烈で、実に気持ち悪い、というより気分が悪い。
 第一話で触れた夜の闇の暗さも、それをより印象的なものとしています。

 その一方で、絵の魔物が登場してからのアクションの連発もまた見事(幻也と魔物の空中戦!)でありますし、そこから結末の一ひねりになだれ込んでいく様もまた良いのです。

 そしてラストで語られる「鬼が鬼を造る」という言葉は、後に重要な意味を持って語られることとなるのですが…


 以下、次回以降に続きます。

「神幻暗夜行」(長谷川哲也 eBookJapan

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