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2011.08.19

「神幻暗夜行」(その二)

 長谷川哲也の連作時代伝奇漫画「神幻暗夜行」の全話紹介の続きであります。

「大師の里」
 弘法大師を崇める村を訪れた幻也が、その村を年に一度訪れるという大師様の生贄にされて…という本作は、最も民俗ネタが濃厚な作品(ということは、最も諸星的作品でもあるのですが…)

 弘法大師が各地を訪れ、そこで自分をもてなした者に福を与えて去る、という伝説は各地にありますが、このエピソードはそこに山の神信仰を絡めることで、如何にも本作らしい奇怪な物語を生み出すことに成功しています。

 何よりも、村に残るという「大師の足跡」を伏線としつつ、クライマックスに一ページぶちぬきで描かれるモノの姿たるや、さすがの幻也も驚きと恐れを隠せぬほどで…
 絵の力というものを強く感じさせられる一編です。


「壷鬼」
 とある町の商家で見つかった壷に封印されていた鬼の手。商家の人々を喰らい、町に死と災厄を撒き散らす鬼の手に、幻也が挑みます。

 山中異界や奇怪な信仰の残る村など、辺境が舞台となることが多い本作ですが、今回は、数少ない町を舞台としたエピソード。
 町に災厄をもたらす存在の正体はかなりメジャーなものではありますが、それがそのメジャーさに溺れることなく、一筋縄ではいかない存在としてひねりが加えられているのが本作らしいところでしょう。

 多くの血が流される物語ではありますが、商家で唯一生き残った少年の姿を描くラストページが、暖かくも切ない余韻を残します。


「天老」
 山中に籠もる細工師の老人が出会った幻也。出会った者の姿を写しとり、その人物に化けるという怪物を追ってきたと、幻也は語るのですが…

 山中に籠もる男の前に奇怪なモノが現れて…というのは、古今を問わず山の怪談の定番ではありますが、このエピソードは、そこに一種のドッペルゲンガー奇譚とも言うべき要素を入れ込んできたのが実に面白い。

 しかし真に驚くべきは、その怪異の正体、由来であります。
 ここでそれを述べるわけにはいきませんが、伝奇好きであればお馴染みのあの奇怪な伝説を、ここでこうして持ってくるか! と大いに感心いたしました。

 そして、結末での幻也のある選択もまた、何ともいえぬ味わいがあるのです。


「夢鬼」
 幻也が雨宿りの最中に出会った老人との会話を描いた、タイトル通り夢魔めいたエピソード。
 わずか数ページの掌編ではありますが、脈絡があるようでないような展開が、夢の中の出来事を思わせます。

 アクションものから伝奇もの、そして今回のようなエピソードまで、幅広い内容にわたるのも、本作の面白さでありましょう。


 次回に続きます。

「神幻暗夜行」(長谷川哲也 eBookJapan

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