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2011.08.15

「もののけ本所深川事件帖 オサキ婚活する」

 周吉の店がある深川の疱瘡地蔵周辺で、行き遅れ娘ばかりが攫われる事件が続発し、お江の方が変じた疱瘡婆の仕業という噂が流れる。そんな中、周吉に店の一人娘・お琴への婿入りの話が出るが、態度を決めかねているうちに、お琴の見合い話が出てしまう。お琴の身を案じる周吉だが、さらなる事件が…

 この数ヶ月、ほとんど月刊状態にある高橋由太のもののけ時代小説ですが、作者の最初のシリーズである「もののけ深川事件帖」の第三弾のタイトルは、驚くなかれ「オサキ婚活する」。
 何だか一時期の「必殺仕事人」のようですが、しかし一読、なるほど…となるタイトルであります(もっとも、婚活するのはオサキではありませんが…)

 お江の方ゆかりの疱瘡地蔵周辺で起きる行き遅れ娘の連続行方不明事件。お江の方の怨霊の仕業だ、妖怪疱瘡婆の仕業よと、大騒ぎになる深川ですが、事件は思わぬ形で、主人公・周吉に関わってくることとなります。しかも二つの形で。

 一つは、突然周吉とオサキの前にお江の方の亡霊が現れ、周吉が勤める鵙屋についてきてしまったこと。
 もう一つは、なかなか娘のお琴と周吉の仲が進展しないことに業を煮やした鵙屋の主人が、お琴に見合い話を持ってきた上に、彼女が大川堤での女比べ(まあミスコンのようなもの)に出ることになってしまったこと――

 果たしてお江の方は何故周吉の前に現れたのか、そして行き遅れ娘を攫っているのはお江なのか、疱瘡婆なのか、はたまた別の何者かなのか?
 そして、女比べでお琴が不良旗本に目をつけられるのを防ぐため、周吉が取った手段とは…


 冷静に考えてみると、深川で起きる怪事件と犯人の疑いをかけられた妖、お店の危機とコンテスト、そしてそれらが絡み合って真相が描かれるという構造は、前作と本作でほとんど同じ。
 …なのですが、読んでみると印象がまるで異なるのはやはり面白い。インパクト満点なタイトルの印象も大きいのかあもしれませんが、まさかのお江の登場、周吉の○○と、キャッチーな要素を用意して読者の目を惹き付ける点は、やはりうまいと言うべきでしょう。

 二転三転する事件の真相も、単に妖のせいにせず、さりとて人間だけのせいにもせず――人間と妖が同じ世界で暮らす本作ならではのものとなっており、その重たさも含めて、評価できます。


 と、そんな評価できる点も多い反面、もったいない点も多いのが、残念なところではあります。
 本作のメインイベントともいえる女比べの描写が――特に前作の鰻大食い大会に比べると――薄く、あっさり終わってしまう点や、周吉の○○というおいしいネタがあまり活かされなかった点、そして何よりも、真犯人の伏線が十分でない点…

 作品を構成する要素のそれぞれがあっさり目で描かれ、繋がって活きてこない点が、実にもったいない。
 個々の要素が魅力的であるだけに――あるいはそれだからなのかもしれませんが――何とも歯がゆいのであります。

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