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2011.08.11

「信長の暗号」上巻 スケールはさらにアップするも…

 信長より安土城を描いた屏風絵を託されたヴァリニャーノ。そこには日本と南蛮を同時に揺るがす秘密が隠されているという。時は流れ、未だ解けぬ謎の解明を命じられたヴァリニャーノ二世は、日本に向かうが将軍秀忠に捕らえられてしまう。牢に繋がれた彼がそこで出会ったのは、暗号師・蒼海だった…

 「秀吉の暗号 太閤の復活祭」「軍師の秘密」に続く、中見利男の蒼海・友海シリーズの第三弾の上巻であります。

 かつて織田信長が宣教師ヴァリニャーノに託し、時の教皇グレゴリウス13世に献上されたとされるも、今なおその消息は知れない安土城屏風。
 そこには、信長からバチカンに対して叩き付けられた、日本と南蛮を同時に揺るがす大秘密が隠されていた! という設定のベースに展開される、中見節横溢の時代伝奇活劇であります。

 代々の教皇の間で申し送り事項とされているこの謎を解き明かすため、伊達政宗の元に遣わされたヴァリニャーノ二世。
 しかし部下の造反にあって遭難した末に、こともあろうに今まさに切支丹弾圧を進めている二代将軍秀忠に捕らえられた彼は、そこで暗号師・蒼海と出会います。

 これまで二度にわたって巨大な謎を解き明かし、徳川家を救った蒼海も、父・家康の影響力を除かんとする秀忠の手により濡れ衣を着せられ、その命は風前の灯。
 何とか力を合わせて暗号を解き明かして牢から脱出しようとする蒼海とヴァリニャーノですが、その暗号とは何と…

 というわけで、タイトル通り、本作で描かれるのは織田信長が遺したという暗号。
 それが解き明かされた暁には、日本はおろか、南蛮までも震撼する、いわば信長によるバチカンへの挑戦状とも言うべきものであり、物語のスケール的には、前二作以上であります。

 その秘密に挑むのは、蒼海や友海、ヴァリニャーノ組に加え、蒼海の解いた内容を元に秘密の内容を抑えんとする秀忠一派、ヴァリニャーノの造反した部下によりその秘密を知った伊達政宗一派、そして蒼海の宿敵である暗号神・恵知座と異端モーセイスト派…
 複数の勢力が入り乱れて一つの秘密を追うというのは、これは「秀吉の暗号」と同じパターン(同作から久しぶりに顔を見せるキャラクターも何人かおります)ですが、しかしこれは時代伝奇小説の王道。複数のルートから秘密に迫る者たちが、やがて一つところに集まり、激突するというのは、やはり盛り上がります。


 …と言いつつも、前作、前々作に比べると、少なくともこの上巻の時点では、残念な部分もあります。
 その最たるものは、あまりにも暗号の解き方が良く言えば豪快、悪く言えば杜撰なことで――これが許されたら、どんな読み方でもできる、という手法で暗号を読み解くのは、ご都合主義の誹りは免れますまい。
(そもそも、占いや呪いで謎を解くのは、死人を復活させる以上に禁じ手のような)

 また、今回の物語の中心となる――と思われる――秘密自体が、実は過去の作品で触れられたものであり、二番煎じ的に感じられてしまうのも困りものではあります。
(もっとも、こちらは「この程度の扱いでいいの?」と思っていたものなので、再登場はむしろ歓迎なのですが…)


 このように、現時点では困った部分も色々とあるのですが、しかし最後の最後まで油断ができないのが中見作品。
 上巻の時点で明かされている秘密が、これで全てとは思えぬ以上、ここで結論を下すのは早計に過ぎましょう。いよいよ争奪戦が本格化する下巻を早く読まねばなりますまい。

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