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2011.08.09

「古道具屋 皆塵堂」 ちょっと不思議、いやかなり怖い古道具奇譚

 実家の道具屋を継ぐため、おんぼろ道具屋・皆塵堂で修行することとなった太一郎。しかし幽霊を見ることができる太一郎にとっては、曰く付きの品ばかり集まる皆塵堂での日々は恐ろしいことばかり。次々と起こる憑き物絡みの事件に翻弄されるうち、太一郎は意外な真実を知ることに…

 「まじめな」時代小説が中高年齢層向けに山のように刊行される一方で、若い読者層向けに妖怪・あやかしを題材とした時代小説も決して少なくない点数が刊行されていることは、このブログをご覧の方はご存じでしょう。
 本作も言ってみればその流れに乗った作品。漫画家のトミイマサコが表紙絵を担当したソフトカバー単行本という体裁も、若い年齢層を意識していることが窺えます。

 さて、そんな本作ですが、内容の方はかなりしっかりとした怪談もの、と言っていいでしょう。

 本作の作者である輪渡颯介には、怪談の背後に隠された謎を解き明かす「浪人左門あやかし指南」シリーズがあります。
 あちらは、怪談を一種の情報源として使った――言ってみれば「手段」として使った作品であるのに対して、本作は真っ向から種も仕掛けもない怪異を描き出した、怪を談ずることを目的とした作品集という印象があります。

 古道具屋や骨董品屋を舞台に、曰く付きの品と登場人物が触れあい、ちょっと不思議でイイ話が紡ぎ出されるという作品は、小説のみならず、漫画などでも見かけるスタイルであります。
 本作も形の上はその系譜にある作品なのですが――
 ちょっと不思議どころではなく、かなり怖い。扱われる事件もかなり血腥いですが、描かれる怪異の内容とその描写も、なかなかに怖いのであります。

 元々、「浪人左門…」の方で描かれる怪談自体(作中の挿話という扱いとはいえ)かなり完成度が高いという印象があります。
 直接的な描写は少なく、時に曖昧模糊とした謎の陰に隠れながらも、それがかえってじわじわと胸に迫るような怖さを生み出す――
 そんな輪渡怪談の魅力は、本作でも健在、というより、正真正銘の怪談となった本作において、いよいよ全開となった、という印象なのです。


 もっとも、主人公の物語も描かなければいけないためか、その辺りの怖さは物語が進むにつれて徐々に薄れては来るのですが…
(それでも一番イイ話である最終話も十分怖いのが、なんというか作者らしい)

 作中での主人公の幽霊が見えるという設定の扱いがどこか中途半端で、それが終盤のカタルシスにうまく繋がってこない点も含めて、その辺りはいささか残念な部分ではあります。

 とはいえ、一見ありがちなスタイルの作品に見せつつも、その実、しっかり作者の持ち味――怖さだけでなく、どこか抜けた登場人物たちのやりとりの楽しさなど――を見せてくれた本作は、輪渡ファン、怪談ファンにとっては、やはり嬉しい作品なのであります。

「古道具屋 皆塵堂」(輪渡颯介 講談社) Amazon
古道具屋 皆塵堂


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