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2011.08.08

「青竜の神話」 時代を超えた時代伝奇SF

 天涯孤独の一匹狼・草壁豹馬は、額に竜の紋章を持つ赤子を連れた少女・タエと、周囲から鬼子と忌み嫌われる少年・由羅と出会う。タエの村こそは、1999年、異星人の襲来により滅んだ人類の生き残りが、遙か過去に時間跳躍して残した子孫たちだった。そして今、異星人と手を組んだ岩倉具視が陰謀を…

 唐突ですが懐かしの名作時代伝奇SF漫画を。
 最近では時代ものメインの島崎譲の代表作といえば、普通の方は「THE STAR」か「覇王伝説 驍」辺りになるのかと思いますが、私にとってはやはりこの「青竜の神話」と他なりません。

 舞台は幕末も近い19世紀後半、一匹狼の風来坊・草壁豹馬を中心に、超能力を持つことから周囲に忌み嫌われてきた少年・由羅や、ある使命を秘めて生き続ける忍者の一族、果ては倒幕の野望に燃える岩倉具視や、実は生きていた高野長英などが登場する伝奇活劇なのですが――

 しかし本作の語り起こしは、実は1999年。
 異星人の襲来により人類は壊滅、ただ一人残った超能力者が、時間跳躍で遙か過去に飛び、異星人に対抗する能力を持つ青竜の戦士を生み出さんとする…という「青竜伝説」なる秘伝が、本作の背景として存在するのであります。

 …どこかで見たような設定ではありますが、しかしあちらは江戸時代前期、こちらは幕末。動乱の時代にしてより現代に近い時代に舞台を設定したことは、本作独自の魅力と言うべきでしょう。
(開幕5ページ目で、いきなり「俺はタイム・トリッパーだ!!」と叫ぶ超能力者には、何度読んでもひっくり返るのですが…)

 そしてまた、本作で活躍するキャラクター一人一人がまた個性的かつ実に生命力に満ちあふれた連中でよろしい。
 そしてそのキャラクターたちが、単純に善悪に分かれることなく――実に人間らしい感情をむき出しにして――出会い、戦い、愛し合い、物語を紡ぎ上げていく様もまた魅力的なのです。

 特に、この人間関係の絡み合いが頂点に達し、決戦の果てに新たなる戦いの運命に雪崩れ込んでいく終盤は、今読み直しても圧巻と言うべきでありますが――
 惜しむらくは、その盛り上がった場面で本作は終わり(打ち切りなのですが、しかし本当に盛り上がったところで終わるんだこれが!)、続編も数話で終了の幻の作品と化していることなのですが。


 私の手元にある単行本は、1998年(運命の年の前年!)に刊行された上下巻本ですが、そこで作者もいつか続編を描きたい、と表明されてはいるのですが、それから早十年以上…
 さすがにもう望み薄だろう、と思いつつも、こうして偶に手に取って読み直す――そしてまたテンションが上がる――ことになる、私にとっては時代を超えた作品なのであります。


「青竜の神話」(島崎譲 講談社KCデラックス全2巻ほか) 第1巻 Amazon/第2巻 Amazon

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コメント

この漫画の重要人物の岩倉具視ですが・・・たぶん予備知識無しにこの漫画の岩倉具視を見た歴史ファンは絶対に岩倉卿と分からんと思います。強くて頭も切れて、しかもビジュアル系バンドのボーカルのような長髪のイケメン! とても「明楽と孫蔵」で変態さん極めていた方と同一人物とは思えません(笑)。

島崎譲先生の『THE STAR』でも実在の人物?を思わせる悪党の芸能人の皆さん(笑)が出ますが、まだ外見が(美化されていますが)同じだけ『青竜』よりはリアルだと思えます。

投稿: ジャラル | 2011.08.10 20:40

ジャラル様:
いや本当に、両作品の岩倉さんを並べて見せたいくらいです(笑)
個人的にはビジュアル的にも役割的にも、この作品の岩倉さんを、幕末のシャピロ・キーツと呼んでおります。

投稿: 三田主水 | 2011.08.13 21:57

「青竜の神話」を検索してきました。
御存知かどうかは分かりかねませんが、「青竜の神話」が再開されているみたいです。

電子書籍による自費出版で。

古い記事に碌に全体のページを確認もせずに不躾ですが、熱い想いを吐露されているようなので参考までに。更新は現在も続いておられるようなので一応。


作者様のページを見たら載っていました。現在六まで出ているようです。
幕末編が終えたと書かれていますが詳細は不明です。

私は手持ちのアプリの関係で、電子書籍まだ読んでいないため、その感想が知りたくて検索して辿り着きました。
四年前の記事のコメントとして不適切な気もしますが参考までに。
追々他の記事も読ませて頂きます。

投稿: 火素矢 | 2015.02.07 14:01

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