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2011.09.19

「戦国ブラッド 薔薇の契約」第1巻 乙女の向かう先は?

 若干17歳にして、尾張の領主として慕われる織田信長には、双子ゆえ忌み子として里子に出された妹・花梨がいた。妹が幸せに暮らせる世のためにも天下布武を目指す信長だが、しかし、今川義元の刺客に命を奪われてしまう。影武者として祭り上げられ、重圧にあえぐ花梨の前に現れた存在とは…

 ファンタジー色が強めの作品を中心とした講談社のコミック誌「ARIA」連載の異色戦国漫画の第1巻であります。

 「○○は実は女だった!?」というアレンジは、最近の女体化というのを見るまでもなく、古今東西、決して少なくないようですが、本作もその系譜に連なる作品。
 信長の双子の妹が、若くして命を落とした兄の影武者として立つ、という趣向なのですが…そこに色々と加わって、何とも言えぬ作品となっております。

 時はおそらく16世紀半ば――うつけ者と呼ばれつつも、その類い希なる才能でもって、戦国乱世に打って出ようとしていた織田信長。
 彼がこよなく愛するのは、己と双子として生まれながらも、双子であったがために差別され、里子に出された妹・花梨――彼女のためにも太平の世を夢見る信長の夢は、彼が、今川義元が放った暗殺者によって、あっけなく終わりを告げます。

 若くして命を落とした信長――近臣たちが、事態収拾のために取った手段は、性別こそ違え、信長とうり二つの花梨を影武者に立てること。
 兄の夢を叶え、天下布武を行うためにも、その役を引き受ける花梨ですが、昨日までただの町娘として暮らしていた彼女にとって、戦国大名としての任が重いことは言うまでもありません。

 思い悩む彼女に、切支丹の神父は、「契約の箱」を授けるのですが――
 ここからの展開が、ちょっとすごい。契約した者の願いを叶えるというその箱に、花梨が己の血を垂らした時、現れたのは、黒スーツをラフに着こなした「悪魔」!

 …悪魔が登場したことよりも、その格好に驚いてしまったのですが、それはさておき。
 彼女に天下布武のための力を与えるのと引き替えに、悪魔が望んだのは、人間の血――それも、大量の血。
 かくて、信長の天下布武の道は、大量の血に彩られることとなり、花梨は己の、兄の願いと悪魔との取引との板挟みになりながらも、信長としての一歩を踏み出す…という内容であります。

 信長が女だった、という作品は既にありますし、信長が悪魔(に類する超越者)と契約して絶大な力を得るというのも、結構な数の作品で見られるものであります。
 しかし、その両者を組み合わせ、女信長が、信長であることを貫くために悪魔の力を借りる…という趣向は、本作のみでありましょう。

 この辺りは、やはり原作担当の広井王子のセンスかと感心しますが――
 しかし、一つの作品として見ると、本作はその方向性がはっきりしない、というのが正直なところであります。

 信長を女性、それも双子の妹としたことから生じる歴史のifを描きたいのか、悪魔と契約した信長という伝奇ものを描きたいのか。重すぎる任を背負った花梨と周囲の人間群像を描きたいのか、はたまた、美少年好きの義元に見られるように、極端なキャラ立てによるキャラクターものを描きたいのか…

 もしかすると、そのいずれも! ということなのかもしれませんが(というか、本来はもっと耽美的な方向を狙っているのだと思いますが)、残念ながら、この第1巻を見た限りでは、そのいずれでもなく、ただ中途半端に見えてしまうのです。

 しかしそれは、裏を返せばいくらでも面白くする手段があるということ。
 この第1巻は助走として、本格疾走を始めた時に何が見えるか――そこを楽しみにするとしましょう。

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