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2011.09.30

「書生葛木信二郎の日常」第1巻 人間と妖怪の間に立って

 時は大正、帝都に上京してきた小説家志望の青年・葛木信二郎が下宿することになった「黒髭荘」は、彼以外の下宿人全てが妖怪だった。自身も普通の人間には見えないものを見ることができる信二郎は、黒髭荘で不思議な日常を送ることに…

 恥ずかしながら雑誌連載の方は全くチェックしていなかったのですが、大正で書生で妖怪と聞いては見逃すわけにはいきません。
 そんなわけで、「サンデーGX」誌で連載中の「書生葛木信二郎の日常 黒髭荘奇譚」であります。

 舞台は大正時代の帝都東京。小説家を夢見て上京してきた青年・葛木信二郎は、祖母の紹介で、黒髭荘なる下宿に住むことになります。
 が、彼以外の黒髭荘の住人は、全て人間以外の妖怪。下宿の管理人である美少女・尋(ひろ)も、実は…というわけで、信二郎は前途多難な生活を送ることに…と、いうわけでは、意外とないのがちょっと面白い。

 実は信二郎は祖母譲りで、人間ならざる存在を感じ、見ることができる能力の持ち主。それどころか、幼い頃から、常に「ちま」という名の紅焔鬼なる妖怪を連れているのであります。

 本作は、そんな、人間と妖怪の間に立つ信二郎が出会う事件の数々を描く、一種のジェントル・ゴーストストーリーとも言える連作となっています。

 その第1巻である本書では、信二郎の恩師と狐の女房の純愛、天邪鬼を連れた悩める少女、天狗の強盗に、横浜に跳梁する異国の妖魔…と、なかなかにバラエティに富んだ内容です。
 妖怪の存在を感じ、見る程度の能力しか持っていないこともあり、お話はさまで派手な展開を見せるわけではありませんが、しかしむしろそれこそが本作の魅力。
 お人好しとも言えるほどの信二郎の優しさが、人と妖怪の間で起きる事件を包み込み、柔らかな味わいを感じさせてくれます。

 そして何よりも、本作の最大の魅力はその絵柄――特に女性陣のビジュアルであると感じます。
 毎回登場する女性陣の可愛らしさもさることながら、黒髭荘の管理人にしてメインヒロインの尋が実に可愛らしく――ちなみに普段私は漫画のこういう部分にほとんど全くときめかないのですが――これは素直に信二郎が羨ましいと感じてしまうほどであります。
(正体が…というのも実によろしい、というのは妖怪馬鹿の感想かもしれませんが)


 しかしながら、本作でどうにも物足りないのは、舞台を大正時代にする必然性が、少なくともこの時点ではほとんど感じられない点であります。

 確かに、主人公の設定などは「大正的」であるかもしれません。しかし、何故大正なのか、大正であることが、主人公に、物語にどのような影響を与えるのか…それが見えないのです。

 本作のキモであるところの妖怪の存在にしても、彼らがこの時代に存在することが、果たしてどのような意味を持つのか、現時点ではわかりません。
 それが描かれるとき、信二郎が、黒髭荘に暮らすことの意味が、価値が――すなわち本作のそれが見えてくるのではないかと、そう感じるのです。

 絵は良し――その先をどう描いてくれるのか、それを含めて、今後の展開に期待しましょう。

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