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2011.09.22

「常住戦陣!! ムシブギョー」第3巻 一気に広がる世界観

 人喰いの巨大蟲から江戸を護る新中町奉行所、通称・蟲奉行所の新米同心・月島仁兵衛の活躍を描く「常住戦陣!! ムシブギョー」、快調の第3巻であります。
 仁兵衛と蟲奉行所の前にとんでもない新キャラクターが登場、さらに世界観につながる秘密までが…

 週刊連載の前に、パイロット版的に増刊のに月刊連載されていた「ムシブギョー」。
 第2巻までは、この増刊版の内容をほとんどなぞってきましたが、この巻からはほぼ初めての内容に突入します。

 ある晩蟲奉行所に忍び込んできた、能面をかぶったおかしな少年・長福丸。腕力の方はからっきしながら、人並み外れた知識を持つ長福丸を仁兵衛は無心に尊敬し、長福丸もそんな仁兵衛を憎からず思い…

 と、この長福丸の正体こそ、時の将軍・吉宗の長男、後の九代将軍・徳川家重!

 歴史好きの方には今更言うまでもないことですが、この家重は、あまり評判のよろしくない将軍であります。
 言語不明瞭で側近の者しかその意志を知ることができなかった、弟たちの方が出来が良かったため危うく将軍になれないところだった…等々。

 父親の方が名君として知られるため、一層ネガティブな印象を受ける家重を、本作では大胆にアレンジ。
 さすがに言語不明瞭ではありませんが、周囲との軋轢から書に耽溺し、能面の下に素顔(美形)を隠した孤独な少年として、本作では描かれます。

 孤独のあまりひねくれた貴人が、それと知らずに出会ったピュアな主人公の熱情に触れ、友情を結ぶというのは定番のパターンではあります。
 しかし本作では、長福丸も仁兵衛もある意味非常に極端なキャラクターとして描かれているため、そして個人的には何よりも「あの家重が!?」と、強く印象に残りました。

 尤も、巨大蟲に襲われた仁兵衛が、あっさりと出会ったばかり長福丸を信じて、その知識に頼る場面には(彼自身の責任を投げ出しているようで)首を傾げる部分もなくはないのですが…

 しかし、本当に驚かされたのはこの後の部分。
 蟲に関する情報を求めて奉行所の書庫に潜り込んだ長福丸が見つけた巻物、そこに記されていた内容とは…!

 これはぜひ実際に目にして驚いていただきたいために、詳細には触れませんが、たった一つの絵を見ただけで「えっ、この作品の世界観では、もしかしてこうなってるの!?」と、作品の背後に存在する世界の秘密まで想像させられてしまうのには、ただただ唸らされました。

 この後の展開も、パイロット版とはほとんど全く異なるものばかり。
 特にこの巻のラストに描かれる超々巨大蟲と、蟲奉行所のエース、蟲狩――この集団も背後に色々とありそうな存在で――の無涯との対決は、ほとんど、いや完全に怪獣もので、あまりの無茶苦茶ぶりに辟易としつつも、しかしやはり胸がときめいてしまうのです。

 まだまだ荒削りな部分は多くあります。キャラクター造形もまだまだ一面的であります(特にヒロインの造形の薄っぺらさには驚かされます)。
 しかし、パイロット版から踏み出して、全く新しい世界を描こうとする本作の試みには――特にこの巻での、あの素晴らしいハッタリを見せられた後では――大いに期待させられてしまうのです。

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