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2011.09.17

「戦国ARMORS」 一騎当千のリアリティ?

 織田信長の死から十年後、幽閉されていた信長の娘・長姫は、天下人・秀吉への輿入れを強いられていた。そこに現れ、お長を奪い取ったのは、史上最強の兵器・甦土武を操る僧・天海こと明智光秀だった。己に裏切り者の汚名を着せた秀吉からお長を守るため、甦った光秀の天下一の下克上が始まる!

 不思議なことに、と言うべきか、「週刊少年ジャンプ」では、時代漫画の連載というのがどうにも少なく、またごく一部の例外を除き、長続きしないようです。
 時代漫画ファンとしては何とも残念でならないのですが、そんなジャンプに最も掲載された時代漫画が本作「戦国ARMORS」であります。

 本能寺の変から十年後、信長を弑逆したとして秀吉に討たれたはずの光秀が天海と名を変えて再起、秀吉に挑む――
 という本作のシチュエーション自体はさまで珍しくないのですが、注目すべきは、本作の最大の特徴であり、そしてタイトルの由来となっている武将たちの個人武装・甦土武(そどむ)の存在でしょう。

 古の霊獣の屍から精製され、装着した使い手の生命を吹き込むことで神通力を呼び覚ますことができる最強の武具――かつて信長が開発し、その力で天下布武を押し進めたという甦土武を身につけた武将たちの激突が、本作では描かれることとなります。

 甦土武――なかんずく、天下に五体のみ存在するという、重臣用のものとなれば、その力は百人力、千人力…
 文字通り一騎当千の世界を、それなりに――あくまでもそれなりにではありますが、しかし決して悪くない――理屈を付けて描くことを可能にしているのは、なかなか、いやかなり面白いアイディアであったと思います。

 お話の方も、光秀と石川五右衛門との友情、伊達政宗との対決と、さほど新味はないものの手堅く展開してきて――
 と、その次に、実は生きていた武田信玄とお市、と来たときはどうしようかと思いましたが、それなりに筋の通った扱いになっていたのにちょっと安心。
 戦いの最中で説明される、お長が秀吉に狙われる理由にも納得できたのですが…

 そこで光秀と秀吉の対決になって、俺たちの戦いはこれからだ! 的なラストで2巻エンドとなるとは。


 …しかし、こうして単行本で通して読み直してみると、幾つか残念な点があるのは事実。
 それを最も強く感じたのは(特に序盤の)緊張感のなさでしょうか。
 主人公は文字通り歴史に名を残す裏切り者、目指すところは天下一の下克上――すなわち、自分以外は天下全てが敵、という状況にあるという重さ、際どさが伝わってこないため、単なる一対一のバトルものにしか見えてこないのです。

 また、キャラクターも、それなりに面白くアレンジされているのですが、今一つ類型化されたものに留まっていて、浅く見えてしまうのが苦しい(雑魚悪役は論外ですが)。
 光秀など、シリアスな時とギャグをやっている時のギャップはいいのですが、その奥にある戦国人としての顔、陰というものを――単なる理想家肌の被害者というだけでなく――もっと描いて欲しかったという印象が強くあります。
(五右衛門のキャラも、後に明かされる過去を考えればもう少し描き方が違ったのでは)

 先に述べたとおり、戦国武将の無双っぷりにそれなりの理屈理由を付けるアイディア自体は実に面白いと思うのですが、その一方で、彼らの戦いのリアリティを支える部分が弱かった…といったところでしょうか。

 どれだけ設定をぶっ飛ばそうと、しかしそこにいるのは戦国武将をはじめとした人間であり、そしてその生き様は、戦国という時代に規定されるのですから…


 普段はやらないようなあら探しのようになって本当に申し訳ないのですが、戦国ものをやる時の難しさの一端が本作に表れているように感じられたため、あえてここで取りあげた次第です。


「戦国ARMORS」全2巻(榊ショウタ 集英社ジャンプコミックス) 第1巻 / 第2巻
戦国ARMORS 1 (ジャンプコミックス)戦国ARMORS 2 (ジャンプコミックス)

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コメント

ジャンプのアンケートによる打ち切りシステムが史実ベース作品の連載を妨げている感じがしますね。じっくり腰を落ち着けて長期的な作品に取り組めない分始まってもすぐにおかしな事に。
この作品はジャンプシステムと時代伝奇物の相性の悪さのギリギリのスペースを狙った感じで微かな期待はあったのですが……

投稿: 伯爵 | 2011.09.24 17:38

伯爵様:
本文にも書いたのですが、一騎当千に理屈を持たせた点や光秀のギャグやってるキャラなど、なかなか良かったのですけれどもね…
確かに史実ベースの作品には、もしかすると不利なシステムかもしれないですね

投稿: 三田主水 | 2011.09.24 23:43

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