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2011.09.25

「九官鳥侍」 鍵を握るは一羽の鳥と…

 百万両の黄金の秘密を知るという九官鳥…その九官鳥の世話を二十年に渡り続けてきた、人呼んで九官鳥侍は、自分の生き別れの娘・お類にその秘密を刻み、その生涯を閉じた。かくて九官鳥と黄金を巡り、髑髏侍・左近之介、吉村寅太郎、妖女・オホホのお柳ら、様々な面々がしのぎを削ることになるが…

 陣出達朗作品で「九官鳥侍」と聞くと、九官鳥を肩に乗せた侍が活躍するお話かしらん、と思ってしまいますが、さにあらず。
 百万両の黄金の秘密を握る一匹の鳥を巡り、金に目の眩んだ人々の欲望が交錯するという、なかなかにユニークな作品であります。

 黒い九官鳥の駕籠を輿に乗せて街道を行く無言行列…その様を笑った巡礼の娘と、それを止めようとした父は行列の侍に斬殺され、残された少年・彦太郎は九官鳥へ復讐を誓います。
 一方、その九官鳥を付け狙うのは黄金銭を眼帯代わりにした怪浪人――白い髑髏の小紋を無数に染めた着物をまとった髑髏侍・志摩左近之介。
 その左近之介が、九官鳥を巡る乱闘の中で助けたのは、父を訪ねる旅の途中の美しい娘・お類なのですが――彼女の父こそが、九官鳥侍その人なのでありました。

 九官鳥侍とは何者か?
 それは、南蛮の海賊船から押収された百万両の黄金の在処を覚え込まされた件の九官鳥・山彦の世話を命じられ、二十年ものあいだ松山城の天守閣に籠もり、山彦の世話を行ってきた飼育役。
 かつては颯爽たる武士だった彼も、長きに渡る幽閉に等しい暮らしのうちに駝背となり、その氏素性を知る者もごくわずかとなった今…彼は百万両の秘密をお類に伝えんとしていたのであります。

 時あたかも文久3年、日本中が佐幕派と倒幕派に分かれて争っていた頃。そんな時期に百万両の黄金が見つかれば、一体どのようなこととなるか…
 かくて、百万両で最新鋭の軍艦を買い付けようとする老中・板倉勝静、その黄金を横領せんとする悪家老一味、回天に燃える若き志士の一団、怪しげな腹話術使いの女に海賊たち、そして左近之介・彦太郎・お類と――
 様々な登場人物が入り乱れ、百万両の在処を記した秘文を半分ずつ託されたお類と山彦と、その両者の争奪戦が繰り広げられることとなります。

 というわけで、物語の方はある意味定番の秘宝争奪戦となるわけですが、金の亡者も、高邁な理想を持った者も――皆、血眼になって追うのは珍しいとはいえたかが一羽の鳥というのに、強烈な皮肉を感じざるを得ません。
 あるいはその狂奔ぶりに、その一羽の鳥に人生を狂わされた九官鳥侍の怨念を見て取ることも可能かもしれませんが…
(結末では、無欲に生きた者こそが、本当の幸せを手に入れることができることを暗示しているようにも見えるのも印象深い)

 しかし――百万両の秘密を知るもう一方である、お類に秘密が託された方法というのが、またもや乳房へのおしろい彫り!
 彫り込まれた秘密を見るためには、その、温めたり刺激を与えたり興奮させて熱を持たせる必要があるおかげで、ヒロインの胸は色々と大変な目に遭わされれるのですが、ああ、やはり陣出先生だなあ…


 などと混乱をしていると、ラストでさらっとある史実との関連が示され、「やられたっ!」という気持ちにさせられる本作。
 いやはや本当に色々な意味で、陣出作品は楽しませてくれます。

「九官鳥侍」(陣出達朗 春陽文庫) Amazon


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