「烈風!! 獣機隊二〇三」 一歩踏み出した鋼鉄の存在感
日本軍でその異才を知られた田村陸軍少佐が、日露戦争に投入した最新兵器。それは、石炭を動力とする巨大兵器だった。はみ出し者ばかりが集まった特殊科学兵器部隊――通称獣機隊は、大陸でロシア軍を相手に破天荒な戦いを繰り広げる!
今は亡き石川賢の作品リストを眺めてみると、特に90年代の半ば頃、矢継ぎ早に時代もの――というか、過去の時代を舞台とした破天荒なアクション活劇を発表していた印象があります。
「爆末伝」「回天」…それらの作品群は、作品の分量(頁数)的にはさほどではないものの、それがかえって作品・作者の方向性、志向とマッチして、独特の印象を残すものばかりでした。
本作も、そのような作品の一つ、作者の作品としては珍しく、明治時代、それも日露戦争(タイトルの二〇三は、二百三高地のことでしょう。実は作中には直接は登場しないのですが…)を舞台としたロボットアクションバイオレンス漫画です。
ストーリー的には、本作は大きく二部に分かれます。
前半部分は、遼東半島の南山に築かれたロシア永久陣地攻防戦を、後半部分は、中国奥地の唐龍陵に眠るという秘宝の日露争奪戦を、それぞれ描いているのですが、特に前半は、とにかくひたすら戦闘、戦闘、戦闘の連続。
日本軍が初めて要塞攻略戦を行ったというこの戦いにおいて、獣機隊の巨大メカが要塞めがけてひたすら突っ込む! という、極めてシンプルなストーリーなのですが、しかしそれでも、いやそれだからこそ、本作は強烈な印象を残してくれるのです。
戦う相手は、爬虫人類でもなければ神の軍団でもない、ただの人間。繰り出される兵器も(わずかな例外を除けば)、当時のテクノロジーで作られた通常兵器。
獣機隊側も、インテリ狂人の田村少佐や、超肉体派の竜王曹長など、わずかな「らしい」キャラ以外は一般人であり、そして獣機隊も、オーバーテクノロジー的な存在とはいえ、石炭を燃料とする蒸気機関(!)搭載のローテクメカであり、これだけみれば、地味な戦いとなりそうなのですが…
しかし――
作者一流の超リアリズムと言うべき筆致で描かれた戦場を突き進む、キャラクター性ほとんど無しの(そもそも主役メカの名前が最後まで登場しないのも面白い。「五千光年の虎」同様、単に忘れてただけのような気もしますが…)無骨な鉄の怪物。
その姿は、下手な思想性抜きで描かれているからこそ、より強烈に「戦い」「力」というものを、プリミティブに感じさせてくれるのであります。
あくまでも史実、それも生と死という現実が充ち満ちた世界だからこそ強烈に感じられる、獣機隊の存在感…
この作品を語る上で欠かせない、要塞まであと一歩のところまで迫りながらも石炭切れとなってしまった獣機隊のメカ。と、燃料が切れたはずのメカが再起動、その燃料とは…!
というあのシーンも、この、現実からちょっとだけ踏み出した作品世界なればこそ、という気がするのです。
…などと言いつつ、やはりもう少し描きようはあったのではないかな、という印象も否めないのですが、やはりどうしても気になるこの作品。
完全に狙ってきたあのラストの台詞も含めて、妙に心に残ってしまう作品であることは、間違いないのであります。
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