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2011.09.03

「花は桜木 柴錬の「大江戸」時代小説短編集」 統一感に疑問はあるが…

 「梅一枝 新編剣豪小説集」「かく戦い、かく死す 新編武将小説集」「男たちの戦国 新編武将小説集」と刊行されてきた集英社文庫オリジナル編集の柴田錬三郎短編集、今回登場するのは、「柴錬の「大江戸」時代小説短編集」であります。

 収録作品は「花は桜木」「豪傑」「助六一代」「かたくり献上」「怪談累ケ淵」「学問浪人」「河内山宗俊」「座頭国市」「孤独な剣客」「辞世」の全10編。
 剣豪ものあり人物伝あり、エッセイ的作品あり怪談あり、なかなかにバラエティに富んだ作品が収録されています。

 もっとも、いささかひっかかるのは、短編集としてのコンセプトがかなりわかりにくいことであります。
 「大江戸」という言葉から、土地としての江戸を舞台とした作品集かと思いきや、必ずしもそういうわけでもなく、ここは時代としての江戸――というより大きな概念としてそれらを包括する江戸として考えるべきなのかもしれません。

 そんなすっきりしない部分がまずあるのですが、もちろん収録された作品は、さすがは柴錬、と言うべき作品ばかりであります。

 武士道の花とも言うべき仇討ちにまつわる運命の皮肉を忠僕の目から描く「花は桜木」。
 助六のモデルと言われる十八大通の一人・大口屋暁雨の一代記「助六一代」。
 冒頭の断り書き通り、本当に悪人しかでてこない人間地獄絵図「怪談累ケ淵」。
 天保六花撰で知られる悪徳茶坊主・河内山宗俊の悪党としての生き様を描く「河内山宗俊」。

 特にこちらの印象に残ったというだけでも、すぐにこれだけの作品を挙げることができます。

 その中でも、「河内山宗俊」が特に強く印象に残ります。
 宗俊と仲間たちが悪事を繰り返した末に、それぞれの運命に従い散り散りとなり、宗俊が獄に繋がれ死の座に向かうまでを描いた本作は、実は作者初の時代小説であります。

 しかしながら、作中で描かれる宗俊の心意気、悪党であることを――すなわち、自分はどこまでも自分であることを――貫こうとする生き様には、後年の作品に見られる、いわゆる柴錬的なるものが、既にはっきりと見て取れるのが、何とも興味深いのです。
(その他、虚無的な浪人・金子市や陽気な小悪党の丑松の人物造形なども実に柴錬的)


 統一感という点では疑問がないわけではありませんが、しかしどの作品からも様々に得るもののある、そんな作品集であります。

「花は桜木 柴錬の「大江戸」時代小説短編集」(柴田錬三郎 集英社文庫) Amazon
花は桜木 柴錬の「大江戸」時代小説短編集 (集英社文庫)


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