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2011.10.10

「陣借り平助」第1巻 戦国バイオレンス人情活劇見参

 今月にはシリーズ第3弾「陣星、翔ける」が刊行されるなど、すっかり宮本昌孝の代表作となった感のある「陣借り平助」。
 その「陣借り平助」を、「ナポレオン 獅子の時代」の長谷川哲也が漫画化した、その第1巻が発売されました。

 時は戦国時代、足利義輝にその武勇を賞されたほどの豪傑・魔羅賀平助。特定の主君に仕えず、戦場では必ず寡兵・劣勢の陣に加わる彼を、人は「陣借り平助」と呼んだ――

 原作「陣借り平助」は、このような基本設定で、各地を流浪する平助が様々な戦国武将に出会い、様々な合戦で活躍する様を描いた作品ですが、この漫画版も、基本的にこの原作の忠実な漫画化であります。

 この第1巻に収録されているのは、以下の全3話です。
 桶狭間の戦で織田軍に加わった平助が思わぬキューピッド役を演じる「陣借り平助」。
 子・長政に比べてパッとしない浅井久政を支えて野良田の戦で活躍する「隠居の虎」。 風魔小太郎の罠で無一物になってしまった平助が、思わぬ縁で北条綱成の娘と恋に落ち、長尾景虎と激突する「勝鬨姫の鎗」
 この3編は掲載順は原作通り、内容もほぼ原作のままであります。

 しかし実際に読んでみると、「宮本昌孝の作品(の漫画化)」というよりは、「長谷川哲也の漫画」にしか見えないのを、何と評すべきか。

 とにかく、登場人物が、絵柄が、「濃い」の一言。
 長谷川哲也なのですから濃いのは当たり前、とファンに取ってみれば不思議なことではないかもしれません。
 しかし、爽やかな印象の作品が多い――もちろん、本作の原作もその例外ではありませんが――宮本昌孝の原作が、内容はそのまま、ここまで男臭さを煮詰めたような印象の、戦国バイオレンス人情活劇ともいうべき作品となるとは、むしろ痛快ですらあります。

 その一端は、歴史上の人物の特徴を踏まえつつ、カリカチュア寸前までビジュアライズしてみせたキャラクターデザインに見て取れます。
 例えば上杉謙信の濃い髭、浅井長政の肥満体…肖像画や記録に残る武将たちの特徴を、これでもか! とばかりに盛り込んでキャラ立てするというのは、おそらくは「ナポレオン」で学んだ手法ではないかと思います。
 そしてそれは本作でも遺憾なく発揮され、一度見たら忘れない――それでいて、決して無茶苦茶ではない――登場人物たちの姿が、見事に活写されているのです。


 正直なところ、「一夢庵風流記」リスペクトの色彩の強い「陣借り平助」を、その「一夢庵風流記」を漫画化した原哲夫の影響を強く受けた長谷川哲也が描く聞いた時には、色々と考えさせられたものです。

 しかしこうして実際の作品を見れば、それが杞憂であり、下種の勘繰りに過ぎなかったことがよくわかります。

 内容は同じでもテイストは異なり…しかし、そこに通底するものはやはり変わらない。
 原作ファンにも、長谷川哲也ファンにとっても、一読の価値ある作品です。

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