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2011.11.17

「月の蛇 水滸伝異聞」第6巻 急展開、決戦前夜!?

 梁山泊に挑む者の孤独な戦いを描いてきた異聞水滸伝「月の蛇」も、はや第6巻。
 扈三娘・花栄・李逵という強敵を向こうに回した戦いは意外な結末を迎え、さらに物語は大きく動くこととなります。

 翠華の婚約者・扈成の登場により、袂を分かつこととなった飛虎と翠華。しかし扈成の前に彼の妹であり、今は梁山泊の一員である扈三娘が現れ、翠華は囚われの身に。
 さらに李逵と花栄という梁山泊でも屈指の豪傑が迫る…

 という前巻の展開を受けてのこの巻では、囚われの翠華がついに処刑される――というところで、扈三娘が寝返り、花栄と激突。花栄と扈三娘というのは、あるようでなかった組み合わせのように感じられます。
 花栄の弓の前には、さしもの扈三娘も不利のようにも思えますが、彼女も一流の剣士、懐に飛び込んでしまえば勝機は十分以上にあるように思えますが…そこに思わぬ助っ人が現れます。
(その頃李逵は青慈と対戦、追いかけっこの末に古井戸に落とされるというのは、まあ妥当な結末でしょう。古井戸とは因縁がないわけでもありませんし)

 そんな戦いが繰り広げられる中、ようやく飛虎が駆けつけ、ようやくこの戦いも幕か、と思いきや、ここからが意外な展開の連続、物語は激しく動き始めます。

 飛虎の前に現れた新たなる敵。それはかつて彼を全く相手にせず膝を屈させた相手、そして飛虎の師である王進をも上回る使い手、そして何より、飛虎の黒い蛇矛・月の蛇と対になる白い蛇矛の持ち主――林冲であります。
 飛虎にとっては宿命の相手、すなわち宿敵である林冲。しかし本作では最強クラスの達人である林冲を前に、飛虎は…

 一方、飛虎と翠華のもとに急ぐ青慈が出会ったのは、あまりにも意外な存在。
 飛虎たちと同じく梁山泊を敵とする彼らこそは――十節度使!
 宋の辺境を守ってきた10人の節度使が、宿大尉の下、梁山泊に決戦を挑むべく動き出したのであります(もっとも、この時点では3人+1の登場ですが)。

 原典では梁山泊百八星終結後に梁山泊を攻めた(そしてボロ負けした)十節度使。彼らが動くということは、宋軍が動くということなのでしょう。
 本作でこれまで描かれてきたのは、個人の武のぶつかり合いでした。しかし梁山泊には集団のぶつかり合いを――すなわち戦を専門とする軍人たちがいます
 これまでほとんど登場しなかった(花栄も本来軍人ではあるのですが)彼らにいよいよスポットライトが当たるのか? …と、期待は高まります。

 もっとも、個人的に心配なのは、彼らと行動を共にすることにより、いよいよ飛虎と翠華の戦いが、大義名分を持った、ごく普通のものとなりはしないか? という点です。
 これまで「私闘」という側面が強調されてきた二人の戦いが、ここで公の戦いになるのでは…そしてその中で埋没していくのでは、という印象があります。
 もっとも、これまで「私闘」の描き方がうまくいっていたとはあまり思えないのですが(扈成のエピソードも、結局曖昧なままだったという印象です)…というのは厳しすぎる評価でしょうか。

 期待と不安とが入り交じりますが、しかし、これで物語の先行きが全くわからなくなったのは事実。これは大いに歓迎したいところです。


 ちなみに、今回の新登場組は項充と李袞。
 扈三娘に苦戦する花栄の盾として登場する二人は、原典では李逵の盾だった二人ですが、花栄がその李逵と今回行動を共にしているのですから、まず納得の出番ではないでしょうか。
(そして残る樊瑞の存在が気になるわけですが…そもそも、この作品で妖術・仙術はどのような扱いなのか、そこも気になるところです)

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コメント

展開的に敗北→師匠との出会い→新必殺技修得という少年ジャンプ展開(笑)になりそうな飛虎、当然?次巻では先代「月の蛇」所有者のあの御方が出る訳で・・・。

梁山泊が悪党ですが、宋国朝廷の面々が正義と言う訳ではなさそうですね。私の知り合いは
水滸伝で一番嫌いな悪党は徽宗帝だと言っていました(実際悪政してますし)。まあ田中先生の『紅塵』で書かれた哀れな徽宗帝の最後を知れば、少しは同情できますかね?

投稿: ジャラル | 2011.11.20 13:51

ジャラル様:
何だかんだ言って勢いのキャラでしたからね、主人公は…もっとも、同じ相手に負け過ぎなのも気になりますが。

それにしても誰が正義かわからない構造は悪くないと思いますが、梁山泊を悪く書きすぎると主人公側が単純に善玉に見えてしまうのがちょっと惜しい…(というのは毎回書いているような気がしますが)

にしても、徽宗皇帝が一番、というのは確かに納得できますね…歴代でも相当可哀想な最期を遂げた皇帝だとは思いますが

投稿: 三田主水 | 2011.11.27 23:02

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