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2011.11.24

「アタラクシア 戦国転生記」 異形の腕が導く戦国奇譚

 戦国の戦乱とは無縁に山中の隠れ里で平和に暮らす孫一、清助、咲の三人の若者。しかし、ある日突然里を襲撃した野盗・黒十字衆により咲はさらわれ、清助は孫一をかばって斬られてしまう。孫一も左腕を失い、追い詰められた時、異形の腕が彼の肩から現れる。恐るべき力を持つその腕の正体は…?

 以前、山田風太郎の「いだ天百里」を「NADESI」のタイトルで漫画化した岩田やすてるの新作は、戦国を舞台に異形の腕を持ってしまった少年の姿を描く「アタラクシア 戦国転生記」であります。

 突如謎の一団に村を襲われ、親友をはじめとする周囲の人々を殺された少年・孫一が、連れ去られた幼なじみの少女を追う…という内容自体はさほど新味はありません。
 しかし本作の最大の特徴は、彼の奪われた片腕の代わりのように己の身に宿った、鬼の腕とも見える異形の腕の存在でしょう。

 筋肉ではちきれんばかりの腕は、その姿に違わず恐るべき力を発揮し、立ちふさがる敵を薙ぎ倒すのであります。
(この辺り、上で述べた「NADESI」が足技アクション主体だったのに対し、手技主体というのはちょっと面白い対比)

 しかし恐るべきは、その力が、孫一では制御しきれないものであること。文字通り腕に振り回される彼が、敵のみならず、わずかに生き残った里の人々の命を奪い、さらには自らを守って倒れた清助の亡骸をも両断してしまう姿を描く第1話は、実に衝撃的であります。

 大きすぎる力が、時として持ち主の心身を傷つける忌まわしきものとなる、というのはまま見かけられるものではありますが、本作はその力の負の側面――というより、裏も表もないのかもしれませんが――を執拗に描くことで、強い印象を残します。

 もっとも、非常にすっきりしないのは、孫一が気弱な少年という設定もあり、少なくともこの第1巻の時点では、腕の力に怯え、戦いを拒否する場面ばかりであることなのですが…
 ある意味自然な反応ではあるのですが、あまり主人公が涙ながらに後悔ばかりいるのも、気が滅入るものです。

 果たして孫一がその力を前向きに受け止める日が来るのか、そして何よりも腕の正体は何なのか――
 攫われた咲が、敵から「舎脂」と呼ばれることからなんとなく察せられるところですが、この第1巻のラストに登場した「毘」の旗を掲げた一軍との関係も含め、その謎解きに期待いたしましょう。


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