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2011.11.03

「琅邪の虎」 真の虎は何処に

 秦の港町・琅邪に、人を喰うという虎が現れた。虎に喰われた者が変じるという妖怪・チョウ鬼の「虎が人の姿をして、災いを振り撒く」という言葉をなぞるように、次々と怪事件が起き、人々の心には疑心暗鬼が生じる。事件の謎を解き、琅邪の町を救うため、求盗の希仁と徐福の弟子たちが立ち上がった!

 歴史伝奇ミステリとして大いに楽しませていただいた「琅邪の鬼」については先日取り上げましたが、本日はその続編「琅邪の虎」の紹介であります。

 港町・琅邪で、方士・徐福が設けた研究所・徐福塾で治療を受けていた少女が行方不明となったのが、今回の事件の発端。
 捜索に当たった求盗(警官)の希仁、巫医の残虎、元踊り子の桃ら、前作でもお馴染みの面々の前に現れたのは、虎に喰われ、妖怪・チョウ鬼(チョウは人偏に長)となったという顔のない女でありました。

 女は、人の姿をした虎が琅邪に災いを振りまくと警告して姿を消しますが、その言葉を裏付けるように、数々の怪事件が琅邪を騒がせることとなります。
 その怪事件というのが、前回同様、帯の言葉を借りれば――
「神木の下の連続殺人」
「暗躍する謎の集団」
「人間の足が生えた虎」
「始皇帝の観光台崩壊」

 前作に比べると少々地味に見えるかもしれませんが、しかし事件の深刻度は、前作を上回ります。
 喰らった人間に姿を変えるという虎に怯える人々は、己の家族にすら疑いの目を向けるようになり、町では疑心暗鬼からの争いが絶えず――
 そして琅邪山に始皇帝が建造された観光台(展望台)が崩壊したということは、一歩間違えれば、琅邪が皇帝に叛意を持っていると捉えかねません。

 事件が解決できなければ、琅邪の町が滅ぼされるかもしれない…この窮地に頼れるのは、あの人物だけ! というわけで、前作ラストで衝撃の正体が語られた名探偵・無心が登場することとなります。


 と、実はこの作品の基本的な構成は、前作とほぼ同様であります。
 すなわち、発端→怪事件の連続→最後の大事件→無心登場→大立ち回り→真相→徐福の説教 という展開に。
 しかしそれでも全く問題なく楽しめるのは、展開・登場人物等々の描写がより洗練されたこともありますが、もちろん本作ならではの事件像の面白さにあります。
(ちなみに今回のアクション展開のクライマックスは、桃と狂生の夫婦戦士ぶりが際だっていて実に痛快!)

 中国では、単なる猛獣という以上の意味を持つ「虎」という存在――本作の冒頭に登場するチョウ鬼の存在もそうですが、一種の神獣としての側面も持つ虎にまつわる数々の伝承を巧みに取り入れて、本作は展開していくこととなります。
 こうした伝承の数々を迷信と笑うことは簡単でしょう。しかしあくまでも当時の人々にとっては――作中に登場する巫術や風水術、儒学の教えと同様――これらは紛うことなき「現実」であり、そしてそれが、奇怪な事件を生み出すこととなるのです。

 単に過去の世界を舞台とするだけではなく、その過去ならではの「現実」を基にして、物語を、そして謎を構成していく――本作は、まさしく歴史ミステリの名にふさわしい作品でありましょう。
(そしてまた、今回もラストで無心殿にギョッとさせられるのですが…)

 ラストには、ミステリファンであればニヤリとさせられるオチも綺麗にはまり、今回も期待通り、いや期待以上の作品でありました。

「琅邪の虎」(丸山天寿 講談社ノベルス) Amazon
琅邪の虎 (講談社ノベルス)


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