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2011.11.11

「青い森の国」下巻 人間の歴史の一ページを

 猿人たちの襲撃により、村長が死んだサヤの村。新たに村長に立候補したの父・ナジの危険性を知るナムは、重傷の身を押して自分も立候補する。一方、村を襲った巨獣マグを追うヒカリの前に、マグを操る男・タチが現れる。恐るべき術を操るタチに苦しめられるヒカリ。果たして村の運命は…

 今から5,500年前、縄文時代前期の青森は三内丸山遺跡を舞台に描かれる超古代アクションの下巻であります。

 海の向こうから漂着した記憶喪失の青年・ヒカリが巻き込まれた戦い――それは、村に住む人々と、森に住む猿人(ミッシングリンク)との生存競争でありました。
 猿人の中にも人間との融和を望む者がいることを知ったヒカリは、彼らと手を結ぼうとしますが、その動きも虚しく、主戦派の猿人はヒカリの留守中に村を襲撃。

 恐るべき巨獣の前に、ヒロイン・サヤに想いを寄せる戦士ナムは瀕死の重傷を負わされてしまうのですが…

 という展開を受けた下巻では、引き続き人間と猿人の戦いが描かれる…部分もありますが、しかしそれ以上に物語の中心となるのは、人間と人間、それも同じ村の中の、親子の戦いであります。

 猿人との戦いで亡くなった村長の座を巡り、激しく争うこととなるナムとナジの親子――外敵が迫るにもかかわらず、村の中で、骨肉相食む争いが繰り広げられるというのは、あまりにも悲しく、情けないことのように感じられますが、しかしそれもまた、人間の一つの姿。
 そしてその過激な世代間闘争は、ヒカリという外側に立つ者の存在を通して描かれることにより、単なる世代ではなく、人間という存在の二つの在り方の対立としてすら、感じられるのです。

 そう、ヒカリは、確かに物語の中心で戦い、活躍することになるのですが、しかし、彼の立場は――菊地ヒーローの多くがそうであるように――部外者であり、一種の傍観者ですらあります。
 本作の真の主人公は、ただの人間として生き、死んでいくナムたち村の人々であり、ヒカリはその手助けをするに過ぎないのです。

 本作の終盤の展開は、残酷なものであり、一つの悲劇であります。納得がいなかい向きもあるでしょう。
 しかし、この展開こそが、人間の歴史の一つの姿なのであり、そしてその積み重ねが今に至る歴史を作り上げてきたと言うのは、間違いではありますまい。本作は、その一ページを、ヒーローの目を通じて切り取ったものなのであります。


 上巻の感想で述べたとおり、やはり地味な作品ではあります。あくまでも物語は一つの村を巡る攻防戦――それも、物理的なものというより精神的なもの――であり、菊地作品おなじみの超人・妖人も、一人登場する程度です。

 それでもなお、上下巻の長丁場を他の作品同様――いや、はっきり言ってしまえば作者の他の最近の作品よりも――退屈せずに読み終えることができたのは、人間を描こうという、そのシンプルな意図が物語に貫かれていたからでは…そう感じた次第です。

「青い森の国」下巻(菊地秀行 竹書房) Amazon
青い森の国(下)


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