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2011.11.08

「孫文の義士団 ボディーガード&アサシンズ」 彼らが彼ら自身であるために

 1906年10月の香港。武装蜂起に向けた密談のため孫文が香港を訪れることを知った清朝は、暗殺団を差し向ける。これに対し孫文を支援する商人・ユータンは、孫文を守るための義士団を結成する。そして運命の日、上陸した孫文に次々と襲いかかる暗殺者。次々と命を投げ出して孫文を守る義士たちだが…

 劇場公開時から大いに気になっていながら、うかうかと見逃してしまっていた「孫文の義士団」をようやく見ることができました。

  孫文が亡命先の日本から帰国、香港に向かうと知った西太后は、孫文暗殺を配下の凄腕・シャオグオと暗殺団に命令。香港警察はこれを清国内の揉め事として無視を決め込むこととなり、孫文らを援助してきた大商人・ユータンは、自分たちの手で孫文を守ることを決意します。

 ユータンの下に集まったのは、少林寺出身の大男・臭豆腐、父を暗殺団に殺された少女・ホン、許されざる愛の傷を引きずり物乞いとして暮らすリウ、ユータンの家の車夫・アスー…そして、ユータンの妻の元夫で博打狂いの不良警官・チョンヤン。

 彼らの任務は、孫文が香港に上陸し、同志たちと武装蜂起に向けた秘密の会合を行う一時間――その一時間を稼ぐこと。
 かくて、香港の市街を戦場として、暗殺団と義士たちの死闘が繰り広げられることとなります。


 アクションものの映画や漫画で、「ここは俺に任せて先に行け!」という場面が登場することがしばしばあります。
 強敵から仲間を守り、己の身を挺して足止めをする――その代償は、得てして残った者の命であることが大半ですが、本作のクライマックスは、まさにその連続と言えます。

 ただ孫文の命を奪うためであれば、どのような手段でも平然と使う暗殺団――その魔手から孫文を救うには、己の命を投げ出し、ぶつけるしかない。
 その一瞬に壮烈輝く義士たちの姿には、ただただ目を奪われるばかりであります。

 が、本作の真に感動的な部分は、彼らが戦う理由、命を賭する理由が、決して孫文を守るため、すなわち革命のためだけではないことであります。
 ある者は復讐のため、ある者は死に場所を求めて、またある者は、恩義ある者に恩を返すため――彼らが戦うのは、革命という大義名分のためではありません。
 彼らが戦う理由は、彼ら自身の胸にあるものを全うするため、彼らが彼ら自身であるためなのです。

 そんな姿が最も鮮烈に描かれているのは、ドニー・イェン演じるチョンヤンでしょう。
 最初ははした金のために暗殺団側のスパイとして働いていた彼が戦う理由。それは、彼に愛想を尽かして娘とともに家を飛び出し、奇しくも義士団を組織したユータンの妻となっているかつての妻に、ユータンを守ることを頼まれたからであります。
 ユータンを守ることは、彼のもとにいる自分の娘の未来を守ること。自分を父とは知らない娘の笑顔に、チョンヤンが命を賭けることを決意するシーンには、ただただ泣かされました。
(にしても「ワンチャイ天地大乱」では孫文を追っていたドニーさんが、こちらでは孫文を守る側に回るとは…というのはさておき、ドニーさんをアクションだけの人と思っていた向きは、認識を改めるべきですな)


 「一将功成りて万骨枯る」という言葉があります。しかし、一人の英雄の背後で命を散らした無名の者であっても、彼らには彼らなりの、彼らにしかわからぬ想いがある――それは暗殺者の側にとっても同様であります。本作が単なる伝奇アクションに終わらないのは、まさにこの点を丹念に描き出した点にあるでしょう。

 ただ英雄の涙のみが、彼らの想いに報いるものであったことを、何と評すべきでしょうか。


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