« 「楊令伝 五 猩紅の章」 一つの闘いの終りに | トップページ | 「妖術武芸帳」 第01話「怪異妖法師」 »

2011.11.15

「UN-GO」 第05話「幻の像」

 戦時中、衆議院議員・島田白朗と聴衆を守るため、爆弾を積んで集会に突入してきたトラックを遠ざけて爆死した三人の学生がいた。その三人を讃えるブロンズ像の除幕式に招かれた新十郎は、島田の息子の爾朗と像の作者・平戸葉子と出会う。島田の不正蓄財を糾弾せんとする山本定信らが式典に突入してきた混乱の中、新十郎は、像の台座の中から山本の部下二人の死体を発見する。新十郎は、隠匿された金塊を奪いに来た二人を島田が殺害したと推理するが、島田にはアリバイが…

 「UN-GO」第5話は、「明治開化 安吾捕物帖」第13話「幻の塔」を原案とした内容。
 突然、日本(のアニメ)で一番有名な戦争の英雄の声を当てた方によって英霊が顕彰されるのに驚かされますが、しかし本編はそれよりもさらに刺激的で、そして示唆に富んだ内容であります。

 と、ここで毎度恐縮ですが、「UN-GO」と原案の登場人物の対比を(UN-GO/原案

島田白朗(衆議院議員。作家)/島田幾之進(武芸者。馬賊とも噂される)
島田爾朗(白朗の息子。俳優)/島田三次郎(幾之進の息子。侏儒)
平戸葉子(慈郎の友人。彫刻家)/平戸葉子(商人・平戸久作の娘。三次郎と結婚)
山本定信(島田の元ボディーガード)/山本定信(清の利権を握る人物)
三久休次郎(山本の部下。死体で発見)/三休(七宝寺の住職。死体で発見)
五味乱忘(同上)/五忘(三休の息子。死体で発見)

 今回も登場人物の配置的には、かなり原案に沿った印象があります。事件の方も、原案では島田家の新築の別荘の床下から、二人の死体が発見されるという内容で、大きく異なるという印象はありません。
 しかし、本作で二人の死体が発見されるのは、ブロンズ像――それも、戦時中に島田たちを守って死んだ三勇士を顕彰するための像である点が、決定的に異なります。

 戦争においては、ある意味付きものと言える「美談」。しかし先の戦争において少なからぬ傷を負ったらしい新十郎にとっては、その美談には素直に頷くことはできないものであり、その印象もあって、彼は犯人を島田だと指摘するのですが――

 確かに、厳然として存在する現実に「美談」という物語を見出す時、そこには、誰かの意図が――美談の主の想いとは異なる、何かを隠し、何かに誘導するものが――入り交じる危険性が存在します。
 人間が物語を必要とする存在であることは疑いはありませんが、それを現実の中に求めることへの危険性から、一種の疑いを抱くというのは、一人新十郎のみではないでしょう。

 そんな目で見ると、新十郎の考えも大いに頷けたのですが――しかし、因果が島田爾朗から引き出した答は、島田のアリバイを裏付けるもの(ちなみにこの展開、因果がいれば推理の必要がない、という本作への批判に対するこの上もない皮肉な回答でしょう)。
 本当の敗戦探偵となってしまった新十郎は大いに落ち込むのですが…

 しかし、ここで新十郎を再起させるきっかけが、人が他人のために命を投げ出すという、彼が疑念を抱いていた行為を、彼自身も――それも、物語の根幹に関わる形で――行っていたことだった、というのが面白い。
 確かに、美談はフィクション、誰かが作り上げたものなのかもしれない。しかし、たとえ本人にはそこまでの覚悟はなくとも、他の選択肢はなくとも、その行動が他人の救いになるという行為は、確かに存在する。
 そしてその行為に対して感動する人の心があるのであれば、その美談は(当然ある種の危険性は内包したままなのですが)確かに「現実」のものであり、語られる価値と必要性がある――

 この辺りは、安吾のエッセイ「特攻隊に捧ぐ」を踏まえた部分も大きいかと思いますが、物語と現実の関係に冷徹な目を向けつつ、そこからさらに一歩踏み込んだ物語と現実の姿を見出すという、今回の内容には、大いに唸らされた次第です。

 原案は、海外雄飛を肯定的に捉えた内容(本作の島田「白朗」という名前は、実在の馬賊であり、原案の島田のモデルとも思われる小日向白朗から取ったものでしょう)でしたが、本作は、原案の枠組みは守りつつも、全く異なる物語を――しかし安吾の思想を踏まえつつ――構築してみせたと言えるでしょう。
(ミステリ的には、真犯人が暴かれる証拠がある意味杜撰ではあるのですが、しかし視聴者も新十郎と同じ視点に立ってしまった場合、それに気付かないというのが秀逸)

 「UN-GO」という作品の面白さ、(大袈裟に言えば)存在意義というものが凝縮しているようにすら感じられる、見事な回でした。


関連記事
 「明治開化 安吾捕物帖」と「UN-GO」を繋ぐもの
 作り物の街にて「UN-GO」第1話特別先行試写会を見る
 「UN-GO」 第01話「舞踏会の殺人」
 「UN-GO」 第02話「無情のうた」
 「UN-GO」 第03話「覆面屋敷」

|

« 「楊令伝 五 猩紅の章」 一つの闘いの終りに | トップページ | 「妖術武芸帳」 第01話「怪異妖法師」 »

コメント

このシリーズ、スタッフによると推理物によくある「キャスティングで犯人が分かる」風にはしていないそうで、ここまでの作品でもアニメでは有名な声優さんを出して「このキャラが犯人!」と思わせないようにするのは面白い案だと思います。
今回から前回の某キャラがレギュラー入りしますが、独身男性に2人の(外見は)未成年の(少しエロイ)少女が同居しているというのは(笑)。

投稿: ジャラル | 2011.11.15 12:18

ジャラル様:
確かに声優は(あまり詳しくない僕が見ても)豪華ですよね。その辺りのひねり方もこの作品らしい。

しかし新十郎は何だかんだ言ってもてますよね…人外に

投稿: 三田主水 | 2011.11.27 23:00

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/53247319

この記事へのトラックバック一覧です: 「UN-GO」 第05話「幻の像」:

« 「楊令伝 五 猩紅の章」 一つの闘いの終りに | トップページ | 「妖術武芸帳」 第01話「怪異妖法師」 »