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2011.12.20

「忍者侍☆らいぞう 魚売りのはつ恋に肩入れする」 忍者として、侍として

 奥州白河から江戸出て、植木屋に見習いとして転がり込んだ青年・竜巻雷蔵。彼は、やる気のなさと女癖から放逐された、(元)忍者だった。植木屋の副業であるよろず駆け込み処の手伝いをすることとなった雷蔵は、魚屋の青年の依頼で、恩人夫婦を捜すこととなったのだが…

 まことに失礼ながら、新刊案内を見た時に我が目を疑った翔田寛の新作「忍者侍☆らいぞう 魚売りのはつ恋に肩入れする」が発売されました。
 ある意味キャッチーなタイトルに、表紙イラストはワカマツカオリ、ライトノベルかケータイ小説と見紛う装丁ですが…しかし、内容の方は、きっちりと真面目な、ミステリ色の強い時代小説でありました。

 時は文政、老中・水野忠成が権勢を誇った頃…
 忍者として人並み以上の腕を誇りながらも、こんな時代に忍者なんて流行らねえ、というダルダルな態度と、同じ里のくノ一たち全てにベタ惚れされてしまったことが元で、主家のある奥州白河から放逐されてしまった忍者侍・竜巻雷蔵が本作の主人公であります。

 そんな彼が、とりあえず江戸で転がり込んだ先は、頑固な老職人・徳兵衛が一人で営む植木屋。この徳兵衛さん、若い頃は同心の手下として鳴らしたこともあったためか、そちらは引退した今でも、人の世話を焼くのが大好き。
 そんなわけで、徳兵衛のもとには困った人間が駆け込んでくるのですが、雷蔵は徳兵衛にこき使われて、その手伝いをする羽目になります。
 今回の依頼人は、十年前の大火事で行方不明となった恩人夫婦を探しているという若き魚屋。彼は、つい先日、浅草寺の人だかりの中で、その旦那の方を見かけたというのですが…

 十年前の火事のことから探索を始めた雷蔵(と、彼に勝手にライバル意識を燃やす徳兵衛の孫娘)は、探索を進めるうちに、この一件の陰に幾つもの謎が秘められていることを知ります。
 火事場で目撃された包丁を持った女、現場から見つかった女性の遺体、夫婦が養っていたというたくさんの子供たち、そしてその中でも目を引くほど美しかった娘――

 探す相手にも、いや、依頼者にも様々な裏があるこの事件を、雷蔵は鮮やかな手並みで解決していくこととなります。


 正直なところ、事件の真相自体は、カンの良い方であれば、後半のある描写で気付くのではないかと思います。
 しかし、そこにさらにある人物の思惑を絡めることにより、事件の展開に一ひねりも二ひねりも見せるのは、これは作者ならではの技というところでしょう。
 そしてそれを受けての雷蔵の行動で、彼のキャラクターをきっちりと見せるのは、シリーズ第1巻のお手本のような展開であります。

 と、大事なことを忘れるところでした。作者のファンであれば、雷蔵の「竜巻」という名字を見て、はて? と思われたかもしれません。
 実は彼の祖父は、同じ小学館文庫で展開された「やわら侍・竜巻誠十郎」シリーズの主人公、竜巻誠十郎。

 浪人だった誠十郎の孫が、何故忍者侍になったのか、その辺りは本作をご覧いただくとして、正義感に溢れた熱血漢であった誠十郎の孫が、いかにも「現代っ子」なのは…という印象もあります。

 しかし、雷蔵にも、形こそ違えその正義感が受け継がれているのは言うまでもありません。
 忍者として悪を討ち、侍として人を救う…彼のキャラクターからするとちょっと格好良すぎるかもしれませんが、これから話が大きくなる伏線もあり、ニューヒーローの活躍を楽しませていただくとしましょう。

「忍者侍☆らいぞう 魚売りのはつ恋に肩入れする」(翔田寛 小学館文庫) Amazon
忍者侍☆らいぞう 魚売りのはつ恋に肩入れする (小学館文庫)


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