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2011.12.05

「ちょんまげ、ちょうだい ぽんぽこ もののけ江戸語り」 剣豪+妖怪時代劇開幕!?

 柳生宗冬が何者かに襲われ、家伝の柳生の大太刀が奪われた。以来、侍たちが次々とちょんまげを奪われる事件が続発、宗冬はかつて"ちょんまげ、ちょうだい"と異名を取った相馬家の者の仕業を疑う。が、その相馬家の子孫・小次郎は、半妖狸のぽんぽこと、空きっ腹を抱えて妙な仕事を請け負う毎日で…?

 本年の後半はほとんど完全に月刊ペースで作品を発表してきた高橋由太の11月の新刊は、新シリーズ「ぽんぽこ もののけ江戸語り」の第1弾「ちょんまげ、ちょうだい」であります。
 作者お得意の、妖怪が登場するちょっとコミカルな時代小説ではありますが、今回は妖怪の存在はあくまでも脇で、むしろ剣豪小説的な面白さがあります。

 本作の主人公となるのは、相馬蜉蝣流なる秘剣を操る青年剣士・相馬小次郎。
 彼の祖父・二郎三郎元信は家康の影武者を務め、戦場に出れば相手の髷を苦もなく奪ってくることから、ついた異名が"ちょんまげ、ちょうだい"という人物であります。

 その孫である小次郎は、家伝の技を継ぎ、しかも美形といういたれりつくせり(?)の人物なのですが…惜しいかな、彼の技は太平の世ではもはや時代遅れ。
 始終空きっ腹を抱えて、口入れ屋の世話になる小次郎なのでありました。

 そんなある日、"ちょんまげ、ちょうだい"のニセモノが現れ、江戸を騒がせて…というのが今回のお話。
 牛若丸と弁慶よろしく大男とともに現れ、柳生にゆかりの者ばかりを狙う"ちょんまげ、ちょうだい"の正体は誰なのか。小次郎が出会った男装の美剣士・丸橋弥生がその正体なのか?
 そして下手人と疑われた小次郎と柳生新陰流の対決の行方は――


 というわけで、なかなかシリアスな展開なのですが、それをひっかきまわしてくれるのが、小次郎のお供・ぽんぽこであります。
 見かけは可愛らしい町娘ですが、ぽんぽこの正体は、二郎三郎元信の代から相馬家と共に暮らす半妖狸。当然、様々な妖力を持っているのですが、しかし彼女(?)がまたとんでもないド天然キャラ。

 狸なのに稲荷神社が好きだったり、卵焼きが大好物だったり、とにかく緊張感の欠けらもないマイペースぶりで――それでいて「人でなし」なことをさらっと言ったり――一人で場をさらっていくのが本当に楽しいのであります。

 とはいえ、冒頭に述べたように彼女はあくまでも脇を固める位置で、直接的に物語に絡むというわけではありません。しかしそれがかえって、その強烈なキャラクターと物語のバランスがよく取れていて、単なる剣豪ものに終わらない、しかしそれでいてお話の展開を崩したりしない、物語のいいアクセントになっていると感じます。


 このぽんぽこのキャラクターにも見られるように、今回はキャラクター配置やストーリー展開をかなりシェイプアップして、その分掘り下げた物語を展開しているという印象があり、大いに好感が持てます。
 シリーズの方は、一月おきに三作連続刊行されるとのことですが、単なる妖怪ものに止まらない一歩踏み込んだ作品として、今後の展開が楽しみであります。


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ちょんまげ、ちょうだい  ぽんぽこ もののけ江戸語り (角川文庫)

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