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2011.12.11

「UN-GO」 第04話「素顔の家」

 佐々家で起きた、当主・風守の焼死事件。しかし、死んだはずの佐々風守の正体は、7年前に禁止された人工知能・R.A.Iだった。R.A.Iが、開発者・佐々駒守の養子・風守として振る舞っていたのだ。しかし、それでは炎に包まれて死んだ人間は誰なのか? その謎に一つの答えを見出す新十郎。再び佐々家を訪れた新十郎たちの前に、意外な人物が姿を現す…

 色々あって感想を書き損ねてしまい、時間も経ったのでもういいかな…と思っていたのですが、恥ずかしながら今頃になってやはり書くことにします、「UN-GO」第4話について。

 前後編の後編に当たる今回は佐々家で起きた当主風守焼死事件の解決編…なのですが、前編・第3話のラストで、死んだはずの風守が、実は人工知能・R.A.Iだった、という事実が明かされます。
 良かった、焼け死んだ風守は本当はいなかったんだ…で終わるわけもなく、それでは焼け死んだのは誰だったのか、そして誰が、何のために手を下したのか? という新しい謎がここに現れたことになります。

 そして語られるのは、そもそもR.A.Iとはどのような存在であり、そして何故禁忌の技術として抹消されたのかという事実であります。
 佐々駒守によって開発されたR.A.Iは、データ領域をネットワーク上にクラウド化することで、メインプログラムは非常にコンパクトにすることを可能とした人工知能。
 それを人型のボディに搭載することで、人間とほとんど同様の行動を取らせることまで可能となったのですが――

 ちなみにR.A.Iの名称は、原案の一つ「万引一家」に登場する癩病から取ったのでありましょう。
 登場人物などは「覆面屋敷」から取られており、原案としてはあるトリックを引用されているのみに見える「万引き家」ですが、予告で因果が突っ込んでいるように、この両作品はかなり似通った、ある意味鏡写しのような作品のため、是非どちらもご覧いただきたいものです。

 閑話休題、人間とほとんど同様で、しかし人間でない存在が現れれば、それに色々とよからぬことをさせようと考える者が出てくるのは、ある意味当然のなりゆき。それゆえR.A.Iは公序良俗に反する存在として取り締まられ、駒守も警察の強制捜査時に謎の爆死を遂げたため、完全に失われた技術となったのであります。表向きは。

 しかし、世界中のネットワークにアクセス可能な人工知能、しかもほとんど人間と変わらぬボディまで持てる存在となると、それはもう何でもアリな存在で、ミステリにならないのでは…
 などと初見の際には思ってしまったのですが、もちろんそんな安直な展開になるわけもなく、それどころか――ある種SFミステリ的な興趣を持たせつつ――そこから今回のテーマとも言うべき展開に雪崩れ込んでいくのはただ見事、と言うべきでしょうか。

 漫画やアニメに関心のある方であれば、今回語られた、かつて起きたというR.A.Iにまつわる騒動に、つい先日の都条例を――あの、非実在青少年のことを連想するのは容易いでしょう。
 果たしてフィクションを、その登場人物への扱いを元に取り締まることが正しいことなのか…今回のエピソードのラストにおいて、ある人物が語る言葉は、作り手(と同時に消費者)からのそれに対する異議申し立てに他なりません。

 しかし本作では、作り手に対する被造物への――すなわちフィクションへの――無制限の、そして無責任の自由を認めるわけではありません。被造物を自由にできる立場であるからこそ、ある程度の節度が必要になる…というのは正論にすぎるかもしれませんが、ここで新十郎は語ります。
「人間は美しいもの楽しいこと、ゼイタクを愛するようにもう一つ…正しいことを愛する。なんなら正義と言ってもいい。(中略)
あらゆる悪いことを欲すると並列に、人は正しいことを愛する生き物だ」

 作り手への、そして消費者への歯止めとして、人間の内面に訴えかけるかのようなこの言葉は、一見理想主義的な、ナイーブなものに見えるかもしれません。
 しかし、この言葉が、安吾の「デカダン文学論」を――人間が、「悪徳」と同時に、正しいもの、正義を愛する心を持つ点に、倫理の根本を求めた文章から取られていることを思えば、そこに私は強い説得力を感じるのです。
(そして、それが風守の「無実」の証明に繋がる展開に感服)


 安吾の生きた時代もまた、様々な形で表現に関する問題、表現に関する規制が存在していました。
 安吾の時代と我々の時代、そしてUN-GOの時代――SFミステリ的なフレームワークを用意しつつ、その点に三つの時代の接点を見出し、描いて見せた点で、ある意味実に本作らしいエピソードであったと、今更ながらに感じた次第です。

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