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2011.12.19

「UN-GO」 第10話「海勝麟六の葬送」

 海勝が国会に参考人招致された。倉満の追求に答えていく海勝だが、新十郎は爆発事故当日に梨江が自宅で海勝を目撃したことを暴露。さらにその場に現れた因果の質問により、泉は海勝のスキャンダルを口走ってしまう。混乱の中に終わった国会中継の後、退院する海勝。しかし海勝を乗せた自動車は衆人の前で爆発、海勝の通夜が営まれる中、新十郎は別天王の行方に思いを馳せていた。そんな新十郎のもとに届けられた封書の差出人は…

 …困った。
 と、前回と同じ書き出しになってしまいましたが、ある意味前回以上に混沌とした状況となってしまった今回。
 それに触れる前に、前回の感想で書きそびれた、原案である「明示開化 安吾捕物帖」の第10話「冷笑鬼」及び第15話「赤罠」との人物配置の比較を記しておきましょう。(UN-GO/原案の順)

不破重次郎(企業家)/不破重二郎(木場の大商・不破喜兵衛の下の大番頭「赤罠」)
水野左近(公共保安隊隊長)/水野左近(冷酷無比な元旗本「冷笑鬼」)
三原保太郎(同上)/三原保太郎(不破喜兵衛の息子の嫁の兄「赤罠」)
倉満美音/倉三(水野家の奉公人「冷笑鬼」)+ミネ(水野左近の妻「同」)

 プロデューサーの元山南だけは不明です(BONESとフジのプロデューサーの名前を組み合わせたのでは…)が、それ以外は原案でも重要な役どころの人物ばかりであります。
 それがまた意味深に見えて、こちらを混乱させるのですが…(しかし特に「赤罠」は読んでおくと面白いと思います)

 意味深と言えば、冒頭に述べたとおり、今回は全てのシーンが意味深に感じられます。
 国会での海勝の証言、海勝の梨江に対する言葉、倉満の持っていた情報、因果の泉への問いとそれへの答え、因果と新十郎の決別。
 病院での海勝の鼻歌の意味、看護婦たちの会話の内容、事故現場から姿を消した男。
 倉満に渡したハンカチの行方、倉満と水野の関係。そして自称・小説家による別天王への実験結果…

 全てがある真実に向けての情報なのでしょう。しかしそのあまりの密度の前に、見ているこちらは、ただただ圧倒されるばかりなのです。
(しかし、それだけの密度のものを、一つのドラマの流れに乗せて不自然さなく見せるのには、今更ながらに感心いたします)

 その情報の意味を一つ一つ吟味していけば、真相に遠くないところまでは辿りつけるように思うのですが…それを如何に立証すべきか?


 ――そして、謎解きに勝るとも劣らず私が心惹かれたのは、国会に参考人招致された海勝の発言の内容であります。
 以前に新十郎に問いかけたように、海勝は真実はただ一つではないと語ります。「真実など無数にある。一つの真実で満足するのは、そこで考えるのを止めるにすぎない」と…
 あたかも静かな怒りの発露のように見えるその言葉は、その海勝自身が、これまで人々を満足させる「美しい真実」を生み出してきた存在であるだけに、不思議な説得力をもって迫ります。

 そしてその言葉を玩味してみると、本作における真実という概念は、正義という概念に置き換えることができるようにも感じられます(ここで語られた2001年の事件を契機に「正義」の多面性が人々に意識されるようになったのを考えればなおさら)
 …いや、「正しい」という語を関するが故に誤解を招きやすい「正義」という語よりも、より広いものを「真実」で語ろうとしている、というべきでしょうか?

 いずれにせよ、ただ一つの真実を解き明かすべき推理もので――現実に対する鋭いカウンターを入れつつ――「真実」は一つじゃない、と逆説的に提示してみせる点にこそ、本作の面白さと価値(の一端)があると、今更ながらに気づいた次第です。


 しかし、たとえ真実が無数にあるとしても、それでもなお、明かされるべき真実というものは存在するはずです。
 それを解き明かすべく、最後の対決の場に向かう新十郎。そこで事件を解決した上で、新十郎は探偵としての自分と向き合う――それは同時に、かつて見失った自分の中の真実と向き合うことと同義に感じられるのですが――ことができるのか。

 次回、いよいよ最終回であります。

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コメント

いよいよ最終回のこの作品。今回で退場?の海勝麟六の立つ位置は某球団オーナーとしても有名な孫正義さんでは(新エネルギー・・・)!という声もありましたが、『映画秘宝』での会川さんのインタビューによると偶然だそうです。

投稿: ジャラル | 2011.12.23 20:01

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