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2012.01.23

「平家物語 平清盛 親衛隊長は12歳!」 少年清盛冒険記

 12歳の平清盛は、父・忠盛に呼ばれて京に上ってすぐに、兵衛隊の隊長に命じられてしまう。近衛隊隊長の藤原頼長と張り合いつつ、親友の西行とともに頭角を現していく清盛。しかし、御所から、草薙剣が奪われるという大事件が発生、清盛は父の名誉を守るため、剣の行方を追うのだが…

 今年のNHK大河ドラマ「平清盛」は、番組自体も楽しみですが、個人的に注目しているのは、これに合わせて出版される、清盛やその時代を題材とした書籍であります。
 今年は題材的にも扱いやすいということか、児童書においても、早くもかなりの点数が刊行されています。
 この「平家物語 平清盛 親衛隊長は12歳!」もその一つにして、おそらくは最もユニークな作品の一つであります。

 物語の始まりは、12歳の清盛が父に呼ばれて京に上った場面から始まります。
 突然、自分の実の父が白河法王であったことを知らされた上、従五位下左兵衛佐、兵衛隊の隊長の任に付くことになります。

 もちろん12歳の清盛に隊長が務まるはずもなく、部下たちからは黙殺される上に、同年代の近衛隊隊長・藤原頼長とは喧嘩ばかり。
 いいところを見せようと、年の近い西行とともに奮闘する清盛は、やがて草薙剣強奪事件の謎を追うこととなるのですが…


 と、歴史に詳しい(というほどでなくとも)色々と首を傾げるところがある本作。用語の使い方や史実との関わりなど、突っ込み出していたらきりがありませんが、ここは、史実をベースとした冒険活劇と受け止めるべきでしょう。

 そのように視点を定めると、本作は歴史の人物像や人物関係を――特にその後の史実をうまく先取りしつつ――なかなか面白くアレンジしていると言えます。

 例えばキャラ設定でいえば、いいところのボンボンですが性格が悪く、和歌は下手くその頼長や、美形で和歌の天才だけれどもお調子者の西行など、メインキャラなどは、ああなるほどと思わされるアレンジ。(ちなみに本作の西行とは、もちろん佐藤義清のことですが、本作では幼い頃に寺に預けられたことがあり、その時の名の西行を気に入って渾名に使っているという設定)。
 脇役ではありますが源義朝も顔を出しますし、終盤に登場する悪役も、ニヤリとできる人物であります。

 田舎から出てきたばかりで、京のことも、大人の世界(政の世界)のこともよく知らない少年清盛の目を通して、当時の社会情勢・政治情勢をわかりやすくまとめているのも、対象読者を考えれば、うまい配慮と言えるでしょう。
(個人的には、藤原氏の没落を見た清盛が「おごれる人も久しからず」という感慨を抱く場面が気に入っております)


 もちろん、そのように見ても、さすがにこれは無理があるのでは…という部分も、(特に終盤に)多くあります。
 これを何も知らない子供が読んで、そのまま信じこんだらちょっとまずいのではないかなあ、という気もいたしますが…
(しかし、12歳の清盛をきちんと12歳として描いているのは好感が持てるのですが)

 とはいえ、清盛という、正直なところちょっと悪役めいたイメージのある人物を使って、肩のこらない少年冒険小説を描くという試みは面白く、歴史に興味を持ってもらう第一歩としては悪くないのでは、と個人的には思います。
 まだまだ清盛の人生は波乱に富んでいるのですから、この先の物語もまだまだいけるのでは…とも感じたところです。

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平家物語 平清盛 親衛隊長は12歳! (角川つばさ文庫)

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