« 「猫絵十兵衛 御伽草紙」第5巻 猫のドラマと人のドラマ | トップページ | 「平家物語 平清盛 親衛隊長は12歳!」 少年清盛冒険記 »

2012.01.22

「ジェイ・ノベル」2012年2月号 山風と柴錬から荒山へ…?

 あの「徳川家康 トクチョンカガン」の主人公が再び登場、という荒山徹の新作が連載開始ということで手に取った今月の「ジェイ・ノベル」誌。
 しかし巻頭に掲載されていたのは、山田風太郎と柴田錬三郎――思わず目を疑った俺得ぶりであります。

 もちろん、山風と柴練という二大伝奇作家が、いま雑誌の巻頭を飾るのは理由があります。
 これは「実業之日本社文芸出版100年企画「心に響く百年の名作」」の一環。その第8弾として、この両大家が取り上げられたのです。
 そして作品のチョイスと解説は細谷正充氏。これ以上はない納得の人選ではありませんか。

 さて、掲載されているのは、山風の方が「開化の忍者」と「紋次郎の職業」であります。
 「開化の忍者」は、明治初頭の横浜を舞台に、英国人商人の門番の職を得た元・伊賀者三人が、自分たちが慕ってきた娘をその商人の暴戻から救うため奮闘するという作品。
 最後の忍法帖として知られる作品で、作者お得意のシチュエーションとオチのため、目新しさはありませんが、忍法帖と明治ものの架け橋として興味深い作品です。
 もう一作品の「紋次郎の職業」は、現代を舞台とした艶笑もの、今で言うホストの男の皮肉な運命を描く作品ですが、解説にもあるように、冒頭の作者による日本人観がなかなか面白い作品であります。

 かたや、柴練は連作「おらんだ左近」の第1話「海賊土産」が掲載されています。
 オランダ医術と無敵の剣を武器にした自称・おらんだ左近、実は尾張大納言の実子が、市井で様々な冒険に挑む「おらんだ左近」の登場編ですが、これだけで読んでも実によくできた作品。
 作者の代表作の一つであり、あまり意外なチョイスではない…という印象を最初は受けましたが、と認識していましたが、今では絶版ということで納得であります。

 さて、作品自体ももちろん面白いのですが、前述の細谷氏の解説がまた興味深い。
 この両大家と実業之日本社の関わりを述べた部分はもちろんのこと、最後に語られる山風と柴練の意外な共通点がなかなか面白いのです。
 (伝奇)時代小説家としてほぼ同時代に活躍しながら、不思議と並べて評されることの少ない両者が、それぞれ作品にある存在を登場させていた…というのは、いささか牽強付会の気味もありますが、しかしその存在が時代小説離れしたものだけに、不思議な説得力があるのです。


 さて、そもそも私が「ジェイ・ノベル」の今月号を手に取るきっかけとなった荒山徹の新作の方ですが、こちらのタイトルは「禿鷹の要塞」。
 「徳川家康 トクチョンカガン」の主人公たる朝鮮僧・一厳こと元信を再び主人公に据えた作品です。

 この第1話の背景となっているのは、かの文禄の役の終盤に行われた碧蹄館の戦い。漢城を奪還せんとする明国軍と、宇喜多・小早川勢らそれぞれ四万以上の大軍が激突した大合戦です。
 この合戦に加わり、李氏朝鮮の廃仏策を改めさせんとした僧兵の一人が一厳…なのですが、何故か彼は遊軍という名目で置いてけぼりにされ、腐る毎日。
 しかし碧蹄館の戦いが大敗に終わり、ようやくやる気を出した一厳は、総勢わずか四人の軍隊として立ち上がって…という内容であります。

 「徳川家康 トクチョンカガン」では、日本軍に捕らえられた一厳が…という内容なので、本作はそのビフォアストーリーと言うべきなのでしょう。
 まだまだ先の展開はわかりませんが、第1回を見た限りでは、おそらく小西行長を向こうに回して、一厳たちがアリステア・マクリーンばりの活劇を繰り広げるのでは…と想像できるのですが、さて。

 行長の麾下にどこかで聞いたようなおなじみのあの人物がいたり、ちょっとこちらが引くような時事ネタが放り込まれていたりと、相変わらずの荒山節ですが、冷静に考えれば作者久々の朝鮮ものということで、今後に期待であります。


 それにしても、この21世紀に山田風太郎と柴田錬三郎が小説誌の巻頭を飾り、しかもそのすぐ後に荒山徹の最新作が載るとは…
 まったく月並みな表現で恐縮ですが、まさしく「事実は小説より奇なり」と言うべきでしょうか。

「ジェイ・ノベル」2012年2月号(実業之日本社) Amazon
月刊 J-novel (ジェイ・ノベル) 2012年 02月号 [雑誌]


関連記事
 「徳川家康 トクチョンカガン」上巻 影武者は韓人なり!
 「徳川家康 トクチョンカガン」下巻 影武者、最後の戦い

|

« 「猫絵十兵衛 御伽草紙」第5巻 猫のドラマと人のドラマ | トップページ | 「平家物語 平清盛 親衛隊長は12歳!」 少年清盛冒険記 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/53800988

この記事へのトラックバック一覧です: 「ジェイ・ノベル」2012年2月号 山風と柴錬から荒山へ…?:

« 「猫絵十兵衛 御伽草紙」第5巻 猫のドラマと人のドラマ | トップページ | 「平家物語 平清盛 親衛隊長は12歳!」 少年清盛冒険記 »