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2012.01.19

「戦国妖狐」第8巻 戦国を舞台とする理由

 前の巻から第二部に突入、主人公が交代し、新しい物語が展開されることとなった「戦国妖狐」の最新巻、第8巻であります。
 ついに歴史上の、実在の人物が登場しましたが、その名は…

 成り行きから、親のような兄のような存在の浪人・真介と旅に出ることとなった少年・千夜。
 彼の正体は、断怪衆により作り出された霊力改造人間、その身に千の闇(かたわら)を宿した恐るべき存在なのですが――しかし今の彼は、その力を厭い、人として生きる道を探して、さすらうこととなります。

 前の巻では、第一部のラストから第二部までに何があったのか、意図的にぼかされておりましたが、この巻の冒頭では、第一部のヒロインとも言うべき妖狐のたまが登場。
 第一部のその後の物語――たまは何をしていたのか、一度は封印された千夜は何故目覚めたのか、真介は何故彼とともに居るのかが語られることとなります。

 しかし、極端なことを言ってしまえばそれは過去の物語。
 今このときに生きる千夜にとっては、自分の力を如何に捨て去るか、が最重要命題であります。
 そして、彼の前に、そのヒントになるかもしれないものを提示する、提示できる人間が現れます。それも実在の、有名人が――

 その名は足利義輝、第十三代室町幕府将軍。
 義輝といえば剣豪将軍、塚原卜伝や上泉伊勢守といった剣聖に剣を学び、奥義を修めたと言われる人物ですが、本作の義輝像は、それを踏まえつつも、さらに豪快ともすっ飛んでいるとも言うべき怪人…いや快人であります。

 そして、闇も人も分け隔てなく接する義輝の言葉は、千夜、そして真介に、彼らとはまた異なる人間観・闇観とも言えるものを提示します。
 自分を人から遠ざける戦いをもたらす闇の力を厭う千夜に、戦うのは人も変わらないと、そして千夜は闇の力を持った人に過ぎないと、…


 なるほど、義輝の言葉は当たり前のものではあります。
 しかしそこに、常人が言う以上の説得力があるのは、彼が、戦国の世を生き抜いてきた将軍であり、そして自らも剣をとっては無類の力を持つ存在である故でしょう。

 本作の舞台は、言うまでもなく戦国時代――人の生と死が、戦いの中で消費される時代であります。
 そんな、一種の極限状況であるからこそ、人として生きるとは何か、ということが描けるのではないか。そしてそれこそが、本作が戦国時代を舞台とする理由であり必然性ではないか…

 個人的にそう考えてきたところですが、それが、本作に登場した初の実在の人物によって、ある意味裏付けられたように感じた次第です。


 さて、この巻は色々な意味で義輝のインパクトに食われた感もありますが、しかし物語は、時の流れは止まることなく動いていきます。
 史実によれば、義輝は松永久秀に討たれることとなりますが、その時は目前に迫っており――そして動きの中に、千夜や真介も巻き込まれていくのですから。

 千夜の記憶の行方、神を狂わせていく謎の存在、まだまだ謎も問題も山ほどありますが――第二部に突入して、早くも最初のクライマックスに突入した印象、いよいよ盛り上がってきました。

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