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2012.01.09

「帝都月光伝 Memory of the Clock」 婦人記者、怪異に挑む!?

 弱小出版社の編集記者・御山さくらは、人気作家・祀月令徒の邸宅を訪れた帰りに、奇怪な男に襲われる。そこに現れ彼女を救ったのは、白銀の剣を振るう令徒だった。折しも、横恋慕の末に死んだ男が幽鬼と化し、相手をさらうという噂が流れる中、さくらと令徒は、噂の背後の鬼に挑むことに…

 角川ホラー文庫は、硬軟様々な作品が刊行されるなかなかユニークなレーベルですが、本作「帝都月光伝 Memory of the Clock」も、その中の一冊であります。

 時代はおそらく大正か昭和初期――東京が帝都と呼ばれたころ。弱小出版社・東景社の若手編集記者・御山さくらが、取材の帰り道に、見たことのない通りに迷い込んだことから、物語は始まります。

 通りの骨董屋で見かけ、心惹かれて手にした壊れた懐中時計。
 原稿を取りに行った先で出会った、自動人形(!)にかしずかれた美青年作家・祀月令徒。
 そしてその帰りに、時計をよこせと襲いかかってきた異形の男と、男から彼女を救うべく白銀の剣を手に現れた令徒――

 まるで非在の通りに足を踏み入れたことが引き金となったかのように、彼女の周囲に、奇妙な人物が現れ、奇怪な事件が次々と起きることになります。

 そして全ての糸は、帝都で続発する、未婚女性の神隠し事件――横恋慕していた男が自殺し、その幽鬼が被害者の元に夜な夜な現れるうちに、被害者自らも消えてしまうという、不気味な噂も流れる、その事件へと繋がっていくことになるのであります。


 冒頭で、様々な作品が刊行されるレーベルと述べましたが、本作はガチガチのホラーというよりは、ホラー色のある伝奇アクションものと言うべきでしょうか。

 奇怪な事件に巻き込まれた婦人記者の奮闘を縦糸に、月神に仕える一族の末裔と妖魔との死闘を横糸に展開される物語は、伝奇ものとしてはそれほど珍しいものではないかもしれません。
 しかし、一連の事件の背後に潜む謎解きがなかなか面白く(令徒の一族の得体の知れなさが、ミスリーディングに繋がっていくのがうまい)、そして主人公の活躍のさせ方もうまく、この路線が好きな向きにとっては楽しめる作品となっていると感じます。
(令徒の設定や、さくらとの絡み方を見ていると、ターゲットはビーンズ文庫の読者的層を狙っているようにも感じられますが…)


 ただ、個人的に非常に残念なのは、本作をこの時代で展開する必然性が、やや乏しく見える点であります。
 主人公が洋装の婦人記者として好奇の目に晒され苦労する点や、何より、本作の背後にある、女性が自由に恋愛することが難しかった点などは確かにあるのでしょう。
 しかしその辺りを扱うのであれば、より切り込んだ描き方があったのではないか…そう感じます。

 本作はシリーズものを意識しているようですので、より時代性に絡めた続編を読むことができれば…令徒たちの出自など、伝奇的にも非常に面白く、登場するキャラクターたちも好感が持てるだけに、尚更感じるのです。


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帝都月光伝  Memory of the Clock (角川ホラー文庫)

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